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「ブログ離れ」が示すソーシャル化への流れ

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ネット上で簡単に情報発信することを可能にするツールとして、一世を風靡したブログ。それこそ「革命」と呼ばれるようなインパクトを社会に与えたわけですが、最近はTwitterやFacebookといったより簡単なツールや、あるいはYouTubeやPixivといった文字以外のコンテンツを主軸に発信できるツールの普及により、唯一の選択肢という存在ではなくなりつつあります。「最近はブログを書かずにTwitterばかり」という人が増えるのも当然であり、より目的にあった情報発信が可能になっているという意味で、望ましい状態であるとも言えるでしょう。

米国では特に、若者を中心にブログから他のツールへと移行する動きが顕著になっているとのこと。その最大の理由は、「ソーシャル化」にあるようです:

Blogs Wane as the Young Drift to Sites Like Twitter (New York Times)

記事の中で、こんなデータが紹介されています:

The Internet and American Life Project at the Pew Research Center found that from 2006 to 2009, blogging among children ages 12 to 17 fell by half; now 14 percent of children those ages who use the Internet have blogs. Among 18-to-33-year-olds, the project said in a report last year, blogging dropped two percentage points in 2010 from two years earlier.

Pew Research Centerで行われている"The Internet and American Life Project"の調査によれば、2006年から2009年にかけて、12歳から17歳の子供によるブログ利用は半数へと低下し、現在は同世代のネット利用者のうち14パーセントしかブログを書いていない。一方18歳から33歳までの世代を見ると、同プロジェクトが昨年発表した報告書によれば、2010年のブログ利用者は2年前と比べて2パーセント減少したのみだった。

ということで、「若者のブログ離れ」が深刻化しているようですね。ではその理由がどこにあるのかを示すものとして、冒頭でこんなコメントが紹介されています:

Like any aspiring filmmaker, Michael McDonald, a high school senior, used a blog to show off his videos. But discouraged by how few people bothered to visit, he instead started posting his clips on Facebook, where his friends were sure to see and comment on his editing skills.

“I don’t use my blog anymore,” said Mr. McDonald, who lives in San Francisco. “All the people I’m trying to reach are on Facebook.”

意欲的な映画制作者なら誰もがそうだが、高校生3年生のMichael McDonaldも、ブログを使って自分が製作した映像を宣伝していた。しかし訪問者が少ないことに嫌気が差し、彼は映像をFacebookに投稿するようになっている。そこなら友人達が必ず観てくれて、彼の編集スキルについてコメントしてくれるのだ。

「もうブログは使いません」とサンフランシスコに住むMcDonald君は言う。「交流を持ちたい人は全員、Facebook上にいるのですから。」

人々がネットで情報発信したいという動機は何でしょうか?それを因数分解してみれば、当然ながら自分自身のコンテンツ(意見やアート作品などなど)を表明したいという要素に加え、表明したコンテンツを多くの人々に届けたいという要素が見出せるでしょう(さらに言えば、「今すぐ届けたい」というリアルタイム性への要望も指摘することができます)。ブログは前者のニーズについては満たしていたものの、実は後者のニーズについてはそれほど満たしてくれていませんでした。それを補ってくれたのが様々なソーシャルメディアだったというわけですね。もちろん「Twitterの方が手軽に使えるから」という理由も大切ですが、若者の間でブログ利用が半数も減っているという状況には、この「ソーシャル化」という要素が無視できないのではないでしょうか。

もう1つ、記事ではこんな興味深いコメントが紹介されています:

But some blogging services like Tumblr and WordPress seem to have avoided any decline. Toni Schneider, chief executive of Automattic, the company that commercializes the WordPress blogging software, explains that WordPress is mostly for serious bloggers, not the younger novices who are defecting to social networking.

In any case, he said bloggers often use Facebook and Twitter to promote their blog posts to a wider audience. Rather than being competitors, he said, they are complementary.

“There is a lot of fragmentation,” Mr. Schneider said. “But at this point, anyone who is taking blogging seriously — they’re using several mediums to get a large amount of their traffic.”

(様々なブログサービスが利用者を減らしている)一方で、TumblrやWordPressといったブログサービスは、そのような凋落傾向を回避しているようだ。WordPressの商品化を行っているAutomattic社の役員であるToni Schneider氏は、WordPressがブログに本格的に取り組んでいる人々向けの製品であり、ソーシャルネットワークサービスへと離れて行きつつある若い初心者向けのものではないと説明する。

いずれの場合も、ブロガーたちはしばしばFacebookやTwitterを使い、より多くの読者をブログに集めようとすると彼は述べる。彼によれば、ブログとソーシャルネットワークは対立する存在ではなく、補完関係にあるのだ。

「大きな細分化が進んでいます」とSchneider氏は言う。「しかし現時点では、ブログに真剣に取り組んでいる人々は様々なメディアを使い、自分のブログへのトラフィックを増やそうとしているのです。」

いまブログを続けている人も、当然ながら「TwitterもFacebookも使わずにブログ一直線」というわけではなく、ブログに欠けているソーシャル性、リアルタイム性を補うものとしてソーシャルメディアを活用していると。個人的な経験から考えても、Schneider氏の指摘には賛同できます。

将来的には(というより現時点でもそうなりつつあるわけですが)、ブログはソーシャルメディアの構成要素、あるいはその付属品として捉えた方が正しい存在になるのかもしれません。ソーシャルメディア自体が情報発信の機能を備えるものの、それでは満足できない(字数制限やデザインが不自由などの理由で)場合に、機能拡張するためのツールとしてのブログ――と書くと何か矮小化されてしまうようなイメージを与えるかもしれませんが、むしろ機能分化という意味で「進化」だと捉えられるのではないでしょうか。恐らく「ブログは死んだ」的な議論が今後も度々出てくると思いますが、個人的には個々のサービス単体で見るのではなく、インターネット、あるいは個人が自由に参加できるメディア全体の方に目を向けて、そこに実現されているより優れたシステムを評価するべきだと考えています。

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