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スマートメーター・データの活用がいよいよ本格化?

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「各家庭にスマートメーターが導入されると、そこで得られたデータを基に様々な新しいサービスが創出される」――こんなシナリオがまことしやかに囁かれるようになっています。IT業界としても無視できない話であり、興味をお持ちの方も多いでしょう。しかし現実にはどんな形式でデータが集められ、公開され、活用されるようになるのかといった具体的な話は、まだ今後の議論として残されています。

そんな中、カリフォルニア州ではこんな話が進められているとのこと:

Cali Utilities: Get Ready to Give Your Customers Smart Meter Data! (Earth2Tech)

カリフォルニア州公益事業委員会(California Public Utilities Commission, CPUC)が昨年12月29日に下した決定と、その影響について解説されています。早速ですが、どんな決定がなされたのかというと(全文はこちらから確認できます):

Concerning electricity usage data, we require that SCE, PG&E and SDG&E provide consumers and third parties approved by consumers with usage data that is collected by the utility by the end of 2010. The decision also requires that that SCE, PG&E and SDG&E provide those customers with smart meters and authorized third parties access to usage data on a near real time basis by the end of 2011.

電力使用量データに関しては、我々(※CPUC)はSCE、PG&EおよびSDG&Eの3社に対し、各社が収集する使用量データを消費者および消費者が承認した第三者へ提供する体制を、2010年末までに整えることを要求する。また今回の決定では、SCE、PG&EおよびSDG&Eの3社に対し、リアルタイムに近い使用量データへのアクセスを、スマートメーターが設置された消費者および承認された第三者へ2011年末までに提供することを要請する。

とのこと。つまり電力会社がスマートメーター等で収集した、需要家側での電力使用に関する情報を外部に公開せよ、という命令なわけですね。しかも2011年末までには、「リアルタイムに近い(near real time)」情報を出さなければならないと。

ただし「リアルタイムに近い」というのはあいまいな表現であり、30分間隔でも良いのか、電力会社はどこまで責任を負うのかなど詳細については何も決められていません。また Earth2Tech の記事後半でも指摘されている通り、現状のインフラやシステムは「リアルタイムの情報を収集・公開する」などという理想像にはほど遠い状況です。しかしカリフォルニア州の動きの重要性について、こんな指摘がされています:

Sounds like California utilities have a whole lotta work ahead of them over the next months. But, first off, remember the CPUC actually has yet to define the specifics of what it is demanding from California’s big investor-owned utilities. The commission proceeding at issue is ongoing, and the next step will be a workshop in San Francisco on March 10. Opening comments for those workshops are due March 5, and should yield some interesting reading — particularly on the potential definitions of “near real time” data.

However, for Google — one of the IT giants that’s jumped into home energy management with its PowerMeter platform — this CPUC process is “a hugely important proceeding that will determine how the ecosystem in this space evolves,” said Michael Terrell, Google’s policy counsel. “Just because smart meters are being deployed does not mean that people will have good access to the information generated by those meters.”

カリフォルニア州の公益企業にはこれから数ヶ月の間、膨大な作業が待ち受けているだろう。しかしまず始めに、CPUCはカリフォルニア州の大規模民間公益事業者に対し、要求の詳細についてまだ定めていないという点に注意しなければならない。委員会の作業は続行中であり、次のステップは3月10日にサンフランシスコで行われるワークショップになる。ワークショップのオープニング・コメントは3月5日を予定しており、恐らく「リアルタイムに近い」データの定義など、いくつか興味深い資料が提出されるはずだ。

しかし巨大IT企業の1つである Google (同社は"PowerMeter"によって、家庭用エネルギーマネジメント市場に参入している)にとって、CPUCの動きは「この分野におけるエコシステムがどのように発展するかを決めるものであり、極めて重要だ」と同社の政策顧問である Michael Terrell は述べている。「スマートメーターが設置されたからといって、それが生成する情報への十分なアクセスを人々が持つとは限らないのだ。」

ということで、まさにこれからCPUCが出そうとしている方向性が、少なくとも米国における「スマートメーター・データのあり方」に影響を与えようとしているわけですね。北米市場の重要性を考えれば、CPUCの決定が全世界の方向性にも影響を与える可能性があるでしょう。Google だけでなく、様々な企業にとって無視できない決定になるはずです。

同じカリフォルニア州ということで連想されるのが、同州が全米に先駆けて導入した自動車の排ガス規制と、それに対応することで環境技術を発展させ、市場での成功を収めた日本車のケースです。たとえ現状では「リアルタイムの情報収集・公開」にほど遠くても、高い理想を掲げた規制が導入されることで、現実がそれに引っ張られる形で発展する可能性もあるのではないでしょうか。もちろん電力会社に余計な負担をかけるだけで、想定されているような新サービス創出もままならないという結果に終わる可能性もありますが、今後数年のカリフォルニア州の「実験」は大いに注目に値すると思います。

余談ですが、前掲の引用文中に登場している Michael Terrell 氏のインタビューが日経オンラインに掲載されていますので、興味のある方はご確認を:

エネルギーはもっと「賢く」なれる - グーグルがスマートグリッドに参入する理由 (日経オンライン)

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