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【書評】『Twitter社会論』

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この秋のTwitter本紹介も、これで5冊目になりました(僕の訳書も含めれば6冊目)。今回はかねてから話題を集めていた、津田大介さん(@tsuda)による『Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流』です。

かつて yomoyomo さんが

津田大介『Twitter社会論』が日本におけるTwitter本刊行ラッシュにとどめを刺すか (YAMDAS現更新履歴)

と仰っていましたが、この言葉はあながち冗談とも思えません。少なくとも本書の後に類似書を出そうとする人は、かなり高いハードルをセットされたなと感じることでしょう。それほど本書は、新書でありながら中身の濃い一冊となっています。

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『Twitterの衝撃』の書評でも同じ表現を使いましたが、本書は「Twitter入門書」的な存在ではなく、あくまでも Twitter を通じて「いま社会にどんな変化が起きようとしているか」を語った本です。その意味で、「Twitter なんて始めるつもりはない」と考えている方でも、いやそう考えている方こそ、本書をチェックしておくべきでしょう。

米国のベンチャー企業が運営しているウェブサービスにすぎない Twitter が、なぜこれほどまでに騒がれ、流行しているのか。穿った見方をすれば「大手企業が流行らせようとしているのさ、セカンドライフの時みたいに」となるのでしょうが、仮にそのような動きがあったとしても、企業に踊らされ続けるほど消費者はバカではありません(それこそセカンドライフの顛末を見れば明らかです)。「140文字のミニブログサービス」という、一見何の革新性もあるように見えない皮の下に、どんな本質が隠されているのか。そしてそれは、私たちの生活をどのように変える可能性があるのか。『Twitter社会論』はこの問いに真正面から取り組み、一つの答えを提示してくれています。

もちろん Twitter が引き起こそうとしている社会変革は現在進行形のものであり、いまそれを把握して解説しようというのは時期尚早だという意見もあるかもしれません。また津田さん自身、「社会なんてなかなか簡単に変わるものじゃない」「そもそもインターネットがどれだけ世の中を変えたのか」と指摘しています。しかしその渦中に身を任せるだけでなく、少し高い位置から先を見て身構えることは、どんな時にでも必要でしょう。日本でも「第2次流行」と称されるほど Twitter がユーザーを増やし、キャズムを超えるか否かというタイミングで本書が刊行されたことは、個人的にはまさにジャスト・イン・タイムだと感じています。

ということで、実は『Twitter社会論』は「とどめを刺す」というよりも、逆に今後の議論の起点となる一冊ではないでしょうか。何かに終止符が打たれてしまうのではなく、カウンターとなるような本や雑誌/ブログ記事が数多く登場してくれることを願っています。そしてもちろん、Twitter に参加して議論に加わろうという人が増えることも。

【その他の「Twitter本」書評】

【書評】『仕事で使える!「Twitter」超入門』
【書評】『ツイッター 140文字が世界を変える』
【書評】『Twitterマーケティング』
【書評】『Twitterの衝撃』

そしてまたまた宣伝ですが、こちらもよろしくお願いします!

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