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「Facebook は知性を高め、Twitter は低下させる」と心理学者が主張

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Twitter を通じて、他人の知識をリアルタイムで共有できるようになった。それが「知識」という概念を変化させるかもしれない――昨日のエントリでそんな大げさなことを書いたのですが、どうも Twitter は知性を低下させると主張している学者もいるようです:

Facebook 'enhances intelligence' but Twitter 'diminishes it', claims psychologist (Telegraph)

Spending time on the Facebook networking site could enhance a key element of intelligence that is vital to success in life, a psychologist has claimed, but using Twitter may have the opposite effect.

Facebook を使うことにより、人生において成功するために欠かせない知性の主要な要素が促進される、と心理学者が主張している。しかし Twitter はまったく逆の効果をもたらすそうだ。

と、両方使っている僕には見逃せない書き出しで始まる記事について(両方使ってるなら相殺されて気にする必要はないのかもしれないけど)。以前も同じような Twitter 批判があったように思うのですが、ここで紹介されている「心理学者」とは、スコットランドにある University of Stirling の Alloway 博士。その主張を簡単にまとめてみると:

  • ポイントとなるのは「作業記憶」(一時的に記憶を保管しておく領域)。この能力が高いことが、人生における成功や幸せの獲得のために重要。
  • ビデオゲーム(特にMMORPGのような集団でプレイする戦闘ゲームを想定している様子)は計画性や戦略性が要求されるため、作業記憶のトレーニングになる。Facebook を更新することは、ちょうどビデオゲームをプレイすることや、数独で遊ぶのと同じ「作業記憶トレーニング効果」が得られる。
  • しかし Twitter 上のメッセージは短くて、理解するのに作業記憶を働かせる必要がないため、使っていると作業記憶の働きを弱めてしまう。さらに集中力が続く時間まで短くなる。

もともと Alloway 博士は作業記憶の研究を行っており、それを重視する姿勢を取っているようですね。なのでお手軽コミュニケーションツールである Twitter が許せない、という態度になっているのだと思いますが、仮に作業記憶の低下が事実だとしても、それがすぐに不幸につながるとは限らないのではないでしょうか。

Twitter に限らず、新しいテクノロジーが社会に浸透していく際に、それがもたらす社会の変化に人々が不安を抱くというのは目新しい話ではありません。最近では Google (検索サービス)にも「Google 脳」などという批判がありますし、テレビや映画にも「人間をバカにしてしまう」という主張がなされてきました。恐らく新しいテクノロジーによって、私たちの頭の構造が変化するというのはある程度事実なのでしょう(生物は周囲の環境に応じて変化するのですから)。しかしそれが「文明の低下」などというものにつながるかどうかは、新しく出現した環境と新しい脳の構造を活かし、逆に以前よりも素晴らしい状態をつくりだせるシステムが登場するか否かにかかっているのではないでしょうか。

難しいことを言ってしまいましたが、要は Twitter のある世界では、Twitter を有効活用できるようなシステムを考えれば良いだけのこと。一人の人間に百科辞典的な知識を詰め込むという「集中型」もいいけれど、一人一人の知識を全体で活用する「分散型」にも利点はあるはずだ、という話になるのではないかと思います。もちろん分散型はまだまだ非主流派であり、その意味で Twitter 型のコミュニケーションに慣れてしまうと、それが使えないような会社に行ったときに不幸になるという可能性はあると思いますが……。

【○年前の今日の記事】

「寄せ集め集団」のチカラ (2008年9月8日)
スクラッパー! (2007年9月8日)
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