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「みんなのニュースサイト」は幻想か?

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以前、みずほ情報総研の吉川さんが「ソーシャルブックマークの衆愚化論争」についてエントリされていましたが、アメリカでも似た問題が起きています:

Digg村にトラブル発生(TechCrunch Japanese)

Digg については説明不要だと思いますが、上記のエントリでも解説されている通り、ユーザーの投票によって選ばれたニュース(もしくはブログのエントリ)へのURLをまとめた一種のポータルサイトです。ちょうどはてなブックマークで被ブックマーク数により記事の人気度を計れるように、Digg ではユーザーの投票数(この投票を"digg"と呼ぶ)でどの記事が注目を集めているかを把握できるようになっています。

ユーザーの投票で掲載されるニュースが決まるという点で、Digg は「民主的な」ニュースサイトだと捉えられています。しかし以前から「一部の人々によって掲載される記事がコントロールされている」という指摘がありました:

ソーシャルブックマーク社会学(Polar Bear Blog)

Digg で人気を集めた記事(へのリンク)を調べると、ごくわずかなユーザーの投稿によって占められているとのこと。今回の騒動では、さらに分析が進んで「一部のユーザーが手を組み、自分たちが投稿した記事に相互に投票するだけでなく、気に入らない記事に反対票を入れる(これを"bury" = 「埋める」と呼ぶ)という行動を取っているのではないか」と言われています。これに抗議した Top Digger (Digg に記事を投稿し、掲載される数の多いユーザー)たちが自分のユーザーアイコンを削除する(デフォルトに戻せば多少は目立たなくなるから?)という行動に出ており、図らずも彼らの連帯が証明される、という皮肉な事態になっています(参照:calacanis.com "digg top users protest (or, "one user, one vote--that's the rule)")。

日本では衆愚化、アメリカでは一種のスパム行為(SEO、と呼ぶべきか?)という違いはありますが、「注目すべきニュースをユーザー自身が決める」というシステムに疑問が提示されているわけです。これを防ぐ手段の1つとしては、上記の記事で吉川さんが主張されているように「不良な情報の流れ込みを防ぐこと」が考えられますが、「これではWeb2.0の参加型という原則には反してしまう」ことになります。また Digg はシステム面からの解決(ユーザーの投票に重み付けを行い、不正?行為を排除する)を考えているそうですが、Google vs. SEO の例を挙げるまでもなく、システムの裏をかこうという行動を止めることはできません。果たして、「みんなのニュースサイト」は幻想に過ぎないのでしょうか?

逆説的かもしれませんが、僕は逆に参加ユーザーが増えていくことによって、こうした問題への解決策が見えてくるのではないかと思います。仮説ですが、現在 SBM や Digg 型のニュースサイトのユーザー(閲覧しているだけの人ではなく、ブックマーク登録や投票・投稿も積極的に行う人)が相対的に小さいために、一部のユーザーが結託してサービスをコントロールしたり、一部のセグメントにウケるコンテンツがクローズアップされてしまうという側面があるのではないでしょうか。楽観的、と言われるのを承知の上で、とりあえずここでは「さらなる参加が道を拓く」と述べてみたいと思います。

いずれにしても、現時点ではコレといった解決策はないというのが実情でしょう。しかし未来永劫に不可能だという話ではなく、Google が検索エンジンの分野で「100%ではないが日常的に使える仕組み」を生み出すことに成功したように、いつかこの分野でも成功するサービスが現れると思います。それが「第2の Google」的な存在として、生活に欠かせないインフラのようなサービスになる可能性もあると思うのですが、どうでしょうか。

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