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おしかけヘルプデスク、という Twitter 活用方法

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「企業活動に Twitter を活用できるのか?」が盛んに議論されるようになってきています。すぐに思い浮かぶ活用法は、朝日新聞のアカウントに代表されるような「ウェブに掲載する記事のヘッドラインを(自動的に)流す」というものでしょう。一方で、ちょっと工夫した使われ方も生まれてきているようです。

まずは今月の雑誌『広報会議』(2009年9月号)。特集は「最新ウェブツールの活かし方」ということで、当然ながら Twitter も取り上げられていたのですが、その中で小林弘人さん(@kobahen)が以下のようなケースを取り上げていました:

最近、英語圏で見かけた事例は製品サポートに関する広報活動だったが、なかなかユニークなツイッター利用だった。

ツイッターでは、そのつぶやきを購読するにはフォローというボタンをクリックするわけだが、そのフォロー数が多くなると、ユーザーから寄せられる質問や意見すべてに対応することは困難になってくる。よって、その製品サポートでは、個別案件はサポートセンターに振り、ツイッターでは、誰かが製品についてのトラブルに関するつぶやきを行うと、それに対し「それは大変。こちらに連絡を」と、サポート窓口の連絡先をつぶやいていた。

これと同じような事例が、ちょうど昨日もご紹介した本"Twitter Power"の中で紹介されています:

When ClearTrip (twitter.com/cleartrip), an online travel firm in India, noticed a tweet that mentioned the site wasn't working in Safari, for example, its staff was fast to ask what was going wrong so that they could fix the problem.

例えばインドの旅行会社 ClearTrip は、彼らのサイトが Safari では動かないというつぶやきがあることに気づき、すぐにスタッフが質問をして問題を解決しようとした。

ちなみにこの事例、元のつぶやきは ClearTrip の Twitter アカウントに対して@付きで行われたものではなく、単に"Cleartrip"という単語が使われていただけとのこと。つまり ClearTrip のスタッフは、直接求められたわけでないにも関わらず、ユーザーの手助けを行ったわけですね(この応対も Twitter 上で、他のユーザーに見える形で行われたようです)。

さらにダメ押し的に、もう1つの事例を:

図書館による、「交流する」ためのTwitterの利用法(米国) (カレントアウェアネス・ポータル)

図書館での Twitter 活用事例として、こんな話が紹介されています:

通常のお知らせや資料案内などでの利用に加えて紹介されているのが、「交流する!(Interact!)」と題された利用方法で、Twitterの検索機能を使って、「library」という言葉が含まれているつぶやきのRSSフィードを取得するように設定し、その人の手助けができそうな場面があればコンタクトする、ということを提案しています。

こちらもユーザーが求めたわけではないのに、いわば「おしかけ」的に援助を行っています。ということでこれら3つの事例、名付ければ「おしかけヘルプデスク」といったところでしょうか。

もちろんユーザーが呼んでいないのにしゃしゃり出てしまうと、逆に嫌がられてしまう可能性も否定はできません。しかし仮にオリジナルの発言をしたユーザーが「いや、結構です」と回答したとしても、同じようなトラブルに見舞われているユーザーが「私の話も聞いて下さい」と会話に参加してくれるかもしれません。たとえ誰も名乗り出ず、その後の会話が続かなかったとしても、企業として問題に対処しようとしたという姿を人々に見せることができるでしょう。総合的に見て、企業の側から積極的に「話しかけてみる」メリットは少なくないのではないでしょうか。

話を『広報会議』に戻して。小林弘人さんは記事の中で、こんなことも仰っています:

そのようなツイッターの使用例は企業側からの発信ばかりではない。ご存じのように Yahoo! や Google (以下、グーグル)といった検索エンジンはサーチボットと呼ばれるプログラムがウェブを徘徊し、取得した情報を検索結果に反映させているが、そのタイムラグにより、「いま起きている出来事」の検索には弱い。そんな「ライブ検索」においても、ツイッターは有効なのだ。つまり、いま多くの人々がつぶやいている言葉をタイムラグなしに拾えてしまうわけだから、これは究極の口コミ検索につながる。

こうして得られた「究極の口コミ」情報に対して、どのようなアプローチを取るのか。もちろん「蓄積して、ゆっくり解析して、半年後のリニューアルモデル開発に役立てる」という道もあると思いますが、それではブログやアンケートを活用する方法とあまり違いはないでしょう。いっそのこと、重要な口コミを見つけたその場で対応を行ってしまうこと。それこそが、Twitter のリアルタイム性を最大限に活かす1つの手段ではないかと思います。

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