オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

非効率を目指そう

»

ブログ、怠けてます。夏休みを取っているわけではなく(今年も夏休みは無さそうです)、夏バテで生産性が落ちているのが主な原因。しかしここは一つ開き直って、「たまには非生産的に過ごすのも必要だ!」と論じてみたいと思います。

「働き者」というイメージのあるアリの中にも、必ず怠ける集団がいるという有名な観察結果があります。有名な話なのでご存知の方も多いと思いますが、こちらのPDFファイルで詳細が解説されています:

日本動物行動学会 Newsletter No.43

22ページから始まっている「お利口ばっかりでも,たわけばっかりでもダメよね!~『集団』行動の最適化~」という記事をご確認下さい。ここに例の「怠けアリ」の話が出てくるのですが、実は注目して欲しいのはこの研究ではありません。その次に「アリをモデルにしたシミュレーション模型」という話が出てくるのですが、こちらの方も「怠けるアリ」に負けず劣らず興味深い内容になっています。

アリは他の個体がつけたフェロモンを道しるべにして、エサ場まで迷わずに行き帰りすることができるのですが、このフェロモンを正確に追跡できる「お利口個体」と、追跡力が弱い「バカ個体」の2種類がどの比率で混ざり合っている集団が「餌持ち帰り効率」を最大化できるか――というのが研究(シミュレーション)の内容。驚いたことに、「バカ個体」が一定割合存在する時の方が採餌効率が良かったのだとか。この結果を受けて、こんな結論が導き出されています:

力学的な解釈としては,「大バカ個体」は新たな餌場の探索者として機能している,あるいは回り道をショートカットする効果などが考えられるが,いずれにせよ,システム稼働時に短絡的に考えたときの最適な行動から見て,非効率的に見える行動が混在する方が全体の効率が上がる場合があることが示された。

これはあくまでもシミュレーション上の話ですが、実際のアリの集団を観察したところ、各個体のフェロモン追従能力にはバラつきがあることが確認されたそうです。

もちろん、アリと人間はまったく異なる生物です。しかし常に効率を優先し、ある時点で「これが最も効率の良い方法である」と信じられたルートを追求していては、結果的に非効率を招いてしまう――というのはどんな集団にも言えることなのではないでしょうか(例えば人類の歴史上でも、全体主義が長期にわたって成功を収めたという例はありません)。時にはいつもと違うルートを試してみたり、非効率に見えることにあえて挑戦してみる。それが結果的に組織の生産性や柔軟性、自己改革力に繋がっていくのではないかと思います。

おっと、ブログを怠けてる言い訳とは微妙に違う話になってしまいました。しかし夏ですし、いつもと違う生活パターンを送ってもいいよね、ということで自分自身を納得させています(自己欺瞞?)。とりあえず皆さんには良い夏休みが訪れて、非効率的・非生産的な毎日が送れるようお祈りしております。

Comment(4)