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見えない化

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最近、と言ってももう数年になりますが、「見える化」というキーワードが様々な分野で唱えられていますよね。潜在的な危険の見える化や、経営指標の見える化など、その効果は実証済みなわけですが、だからと言って何でも「見える」ようにすれば良いという話でもなさそうです。

昨日(8月4日)の読売新聞夕刊を読んでいたら、「よみうり寸評」にこんな話が載っていました:

ひもをほどき、ふたを開ける時の、何とも言えぬ期待感。それを味わいたくて、駅弁を買う人もいるだろう◆

JR東日本の関連会社が販売する駅弁で、一番の人気商品の価格は、1300円。ちょっと高めだが、東京駅だけで1日平均1000個も売れる。季節ごとにメニューを変え、彩りにも工夫を凝らしているからか、女性に大人気だそうだ◆

5年ほど前、この会社は、コンビニ弁当に対抗しようと、中身の見える透明のふたの駅弁を売り出した。価格も安くしたが、売り上げは減った。素材にこだわった高級路線は起死回生の策だった◆

その結果が一番人気の大ヒット、というわけですね。もちろんヒットの要因には様々なものがあるのでしょうが、中身を「見えない化」したというのは面白いポイントだと思います。駅弁ですから、中にどんな具材が入っているのかは何らかの形で分かるようになっているはずです。しかし「実物が見えるか見えないか」という点が重要なのだとすれば、「見えない」という状態には期待やワクワク感といったものを高める効果があるのではないでしょうか。

もちろんうがった見方をすれば、「中身が不味そうだから隠しておく方が売れるのだ」という解釈も可能だと思います。しかしそんなお弁当、つまり中身が見えない時の方が期待が高く、見えたら期待はずれというお弁当ではお客は二度と買わず、売り上げNo.1になるはずもありません。「見えない化」によって高められたワクワク感に応えられる中身となっているからこそ、お客の支持を得ているのでしょう。逆に言えば、中身に自信があるのなら、隠してしまった方が「ありがたみ」が増すと考えられるかもしれません。

いずれにしても、見える化ではなく「見えない化」を追った方が良い場面があるかもしれないということですね。もちろん政治家の裏金やナゾのばんそうこうなどのように、隠せば隠すほどイメージが悪くなるという逆の事例もありますが。そう言えば、アート作品にもこんな「見えない化」を利用したものがある、というご紹介でこのエントリを閉めたいと思います:

地下のデイジー

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