Twitter がSOSを拾う日
今朝の朝日新聞を読んでいて知ったのですが、三鷹市が児童虐待対策として「こどもSOSカード」というものを作り、市内小中学校の全児童・生徒に配布したそうです(住民ながらまったくの初耳でした)。三鷹市の公式発表はこちら:
■ 「三鷹市子ども虐待防止対応マニュアル」を作成 (三鷹市)
また、困ったときの相談先となる支援センターの電話番号を記した「こどもSOSカード」(20,000枚)を作成し、市内の小・中学校に通う児童・生徒に配付します。
なるほど、カードであれば手元に携帯できて、いざという時に電話して貰える確率が高まりますよね。発表があったのは4月27日。朝日新聞の記事では、その後の反応などがフォローされています:
SOSカードは2万枚を作成し、今月1日以降、市内の全小中学校で配布した。
カードには「ともだちのこと おうちのこと 自分のこと 困ったことはなんでもそうだんしてね ひみつは絶対まもります」とあり、電話番号が示してある。
(中略)
センターによると、これまで寄せられた電話は、親への隠し事、親子、友人関係の悩み、いじめなどの相談がほとんど。子どもが学校名を明かした場合は、学校にも連絡し、情報を共有したという。
実際に、これまで計18件の相談があったとのこと。今月始まったばかりでこの件数ですから、現時点では具体的な成果を上げていると評価して良いのではないでしょうか。まぁ、件数が多いのは残念な事態ではあるのですが……。
虐待やいじめなどといった問題は、身近にいる人々でもなかなかその存在を認識することができません。被害を受けている子ども自らが声を上げてくれることが最も良い発見ルートですが、いくら大人に相談しろと言われても「どこに訴えれば良いか分からない」という場合も多々あるでしょう。窓口を置くだけでなく、さらにその存在を子供たちにカードという形で伝えているという点で、三鷹市の対応は評価できると思います。
さらに対応を期待したいのは、電話だけでなくメールやネットを通じた窓口を開設することです。各種調査で、若者は電話で話すよりもメールやウェブベースのコミュニケーションの方が行いやすいと感じている、という結果がでています。また企業のマーケティングにおいては「(モノやサービスを)売り込みたい相手が集まっているところにこちらから出かけていく」というのは鉄則であり、自治体の場合でも、若者がよく利用しているコミュニケーションツールを積極的に活用する必要があるのではないでしょうか。例えばSOSカードに電話番号だけでなく、メールアドレスを記載しておくだけでも違いはあると思います。
それで思い出すのが、Twitter に関する以下の2つの記事:
■ The Global Sympathetic Audience (New York Times)
■ Demi Moore responds to Twitter suicide threat (CNN)
New York Times の記事は2007年11月、ですから今から1年半近く前の話ですが、当時から Twitter が(普通では言えないような)悩みを発散する場所になっていて、それを「聞いた」人々が手を差し伸べてくれるという事例を紹介したもの。CNN のニュースは有名なのでご存知の方も多いと思いますが、女優のデミ・ムーアが自身のサイトに書き込まれた「これから自殺する」というコメントに Twitter 上で反応し、それが元でコメント主が保護されたというもの。特殊な例ではありますが、Twitter を始めとするウェブサービスがいかに身近なものになっていて、それだけに人々を救う力となり得るかを示しているのではないでしょうか。
まぁ実際のところ、Twitter のユーザー年齢層は高いようなので、Twitter 上に「よろず相談窓口」を設置したからといって小中学生が利用する可能性は低いのですが……しかし中学生ぐらいになれば、よく利用するケータイウェブサイトがあるはず。例えばDeNAと協力してモバゲー上に相談窓口を設けるとか、「何でも相談できるお兄さん・お姉さん」的なアカウントを設置して友達登録してもらうとか、様々な対応ができると思います。
ちなみにSOSカードに記されている、三鷹市子ども家庭支援センターの電話番号は以下の通りです(日曜・祝日は休みとのこと):
三鷹市子ども家庭支援センター TEL. 0422-40-5925
【関連?】
ネット上に相談窓口を設けるという発想が「守り」ならば、以下の話はその反対側にある「攻性」の発想として参考になるかもしれません:
■ 人気アイドル、Twitterでネットいじめを非難 (ITmedia News)
ネットで行われていることに対しては、こちらもネットで対応していく。そんな発想でアイデアを実施していっても良いのではないでしょうか。
【○年前の今日の記事】
■ ゴールデンタイムに政治番組を (2008年5月21日)
■ 論より証拠 (2007年5月21日)
■ 環境を守るデザイン (2006年5月21日)