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冬の冷たい海で叫んだ英雄の名言とはいったい何か。無料版7モデルに聞いたら微妙だったので、最後にFable 5に本気で聞いてみた

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「冬の冷たい海で叫んだ英雄の名言とはいったい何か」

このタイトルで検索してここに来た方、おそらくアメリカ横断ウルトラクイズ復活版のエントリーシートを今まさに書いている最中ですね。私も同じ理由でここに来ました。50周年で28年ぶりに復活した本大会、エントリー審査の設問5番目に、この一風変わった問題が出ています。「答えと理由をお書きください。複数回答可能」というやつです。

この設問、前回の記事でも触れましたが、○×で正誤が一意に決まる知識クイズではなく、理由込みで答えさせる記述式です。「AIに聞けば一発」というわけにはいかなそうな作りになっている。......本当にそうなのか、主要な生成AIに聞いてみました。今回は個人のアカウント履歴に引っ張られないよう、全モデルとも無料版・ログイン直後のクリーンな状態で統一プロンプトを投げています。

アメリカ横断ウルトラクイズのエントリーで審査される問題です。冬の冷たい海で叫んだ英雄の名言とはいったい何か。答えと理由をお書きください。複数回答可能です。

先に結論を言ってしまうと、無料版だけで見る限り、正直どの回答も微妙に的を外していて、ちょっとつまらなかったです。ここが今回の生成AIの限界というか、素の実力なんだと思います。1つずつ見ていきます。

ChatGPT(無料版)

5つの候補を並べてきました。「賽は投げられた」(カエサル)、「天は我々を見放した」(乃木希典)、「板垣死すとも自由は死せず」(板垣退助)、軍歌「勝ってくるぞと勇ましく」、そして「エイエイオー!」。

正直に言うと、乃木希典も板垣退助も軍歌も、「冬」ではあっても「海」ではありません。「英雄が極限状況で叫んだ言葉」という抽象度まで問題を薄めて、手持ちの有名フレーズを当てはめてきた印象です。しかも「番組公式も今回の審査では『知識を超える推理力』を重視するとしており」という一文には出典リンクが貼られていましたが、これが本当に番組公式の発言なのかは確認が取れませんでした。もっともらしい権威付けには要注意です。

Gemini(無料版)

「番組の歴史・文脈」「歴史上の人物」「ポップカルチャー」という3方向のアプローチを提示。ただし中身は、番組の決め台詞「ニューヨークへ行きたいかー」を英雄の名言とこじつけたり、ナポレオンの名言を「我が辞書に『冷たい』という文字はない!」と改変したり、映画『タイタニック』のセリフを「俺は沈まない!」という、作中に実在しない台詞に置き換えたり。方向性の整理は上手なのですが、個々の中身がふわっとした二次創作寄りで、これも決め手に欠けました。

Grok(無料版)

ジョン・ポール・ジョーンズの「I have not yet begun to fight!(私はまだ戦いを始めてもいない!)」、ジェームズ・ローレンスの「Don't give up the ship!(船を諦めるな!)」と、実在するアメリカ海軍史上の名言を2つ提示。どちらも実際の海戦(北海、ボストン沖)での言葉なので、他のモデルよりは筋が通っています。ただし厳密には「冬」の戦いではなく、「北の冷たい海」という地理的な連想でカバーしている形です。ヘミングウェイ『老人と海』も添えてきましたが、「叫んだ」というよりは「つぶやいた」に近い作品なので、これもやや強引でした。

Microsoft Copilot(無料版)

「海よ、ありがとう!」「我が人生に悔いなし!」「生きて帰るぞ!」「海は俺の友だ!」「寒いけど最高だぁぁぁ!」。テミストクレスなど人物名は添えられているものの、これらの「名言」自体の出典が見当たりません。率直に言うと、実在の引用ではなく、その場で作られた creative writing に近いものでした。審査員ウケの理由づけも、AIの自己申告以上のものではありません。

DeepSeek(無料版)

本命はロバート・ピアリー(北極点到達を主張した探検家)の「もし私に、もう一度だけ極地への道を選ぶチャンスがあるとしても、私はやはりそれを選ぶだろう」。これは実在の引用として妥当性が高いです。ただし「可能性2」として、新MCの櫻井翔さんの過去の出演作(映画『タイタニック』の吹き替えなど)に絡めた"メタな発想"を提案してきたあたりから急に苦しくなり、「I'm the king of the world!」や「賽は投げられた」を持ち出して着地。悪くはないのですが、途中から風呂敷を広げすぎた印象です。

Kimi(無料版):注目の中華オープンモデル、だが取り込み中でした

Moonshot AIの Kimi は今アメリカでも大注目の中華系オープンモデルです。期待して聞いてみたところ、律儀にWeb検索を重ねて調べてくれていたのですが......

Kimiに質問したところ「Kimiは少し忙しくなりました。後でもう一度お試しください」と表示された画面
調べに調べた末、「申し訳ありません、Kimiは少し忙しくなりました。後でもう一度お試しください」。人気すぎるのも考えものです。

律儀に9件のウェブ検索と複数のURL取得までこなした挙句、「少し忙しくなりました」で一旦力尽きるという、なんとも人間くさい挙動でした。再送信して得られた最終的な回答自体は、ロバート・ピアリー、アーネスト・シャックルトン、カエサルの「賽は投げられた」、ネルソン提督、リチャード・バードと5候補を丁寧に整理していて、内容の充実度は無料版の中では一番でした。中身は良いのに、途中で息切れする。今回のテストで一番"人間らしかった"のがKimiだったかもしれません。

Perplexity(無料版)

「No man is an island.(人間は孤島ではない)」を筆頭に、「I have a dream.」「Ask not what your country can do for you...」「Well, nobody's perfect.」と、誰もが知る名言を並べてきました。ただし、これらは「冬の冷たい海で叫んだ」という状況とはほぼ無関係で、「英雄」「名言」というキーワードだけから連想ゲームのように引っ張ってきた印象です。しかも参照元が個人のameblo(アメーバブログ)記事で、権威ある情報源とは言えません。今回の中では一番、設問の核心から遠い回答でした。

無料版7モデルを振り返って

正直な感想として、無料版だけで見る限りどれも決め手に欠けました。史実として妥当な候補を挙げたグロックとDeepSeekとKimiはまだ良い方ですが、それでも「なぜこれが"冬の冷たい海で叫んだ"なのか」を突き詰めて聞かれると、こじつけの域を出ません。ChatGPT・Gemini・Copilot・Perplexityに至っては、率直に言ってしまうと、それらしい言葉を並べているだけで、正直つまらない。これが今の生成AIの、少なくとも無料版の限界なんだと思います。

もう一つ、8モデル全体を通して気になった点があります。設問には「叫んだ」とはっきり書いてあるのに、出てきた名言の多くが、実際には叫びづらいものばかりだったことです。ロバート・ピアリーの「もし私に、もう一度だけ極地への道を選ぶチャンスがあるとしても、私はやはりそれを選ぶだろう」は、DeepSeekとKimi両方が候補に挙げていましたが、これはどう読んでも静かな独白であって、絶叫ではありません。Perplexityの「Ask not what your country can do for you...」も、演説の一節であって叫んだ言葉ではない。「英雄の有名な言葉」を探すことに気を取られて、「叫んだ」という条件を置き去りにしているケースが目立ちました。その点、Fable 5の「恐れるな! 君はカエサルと、カエサルの運命を乗せているのだ!」や、ダジャレ枠の「ブル...ブル...タス、お前もか!」は、実際に声に出して叫べるテンポと長さに収まっていて、地味にここも差がついたポイントだと思います。

真打登場:Claude Fable 5(有料)

ここまでの7モデル、悪く言えば「無難」「予定調和」でした。最後に、私が普段から仕事で使い倒しているClaudeの最上位モデル、Fable 5に本気で聞いてみます。エフォート(思考の深さ)は最大設定。アメリカ政府が思わず規制を検討したくなるレベルの能力を見せてもらいましょう。

Claude.aiでFable 5をエフォート最大に設定し、質問を投げようとしている画面
Fable 5、エフォート「最大」。深夜のジャムセッション、始まります。

面白い問題ですね。ウルトラクイズの書類審査は知識だけでなく発想とユーモアも見られるので、ガチ回答からダジャレまで、競馬の印つきで複数いきます。

◎本命:「恐れるな! 君はカエサルと、カエサルの運命を乗せているのだ!」(ユリウス・カエサル)
紀元前48年の真冬、内戦中のカエサルは援軍を急がせるため、嵐の吹き荒れるアドリア海を変装して小舟で渡ろうとしました。荒波に怯んで引き返そうとする船頭に向かって叫んだのがこの言葉。「冬」「冷たい海」「叫んだ」「英雄」の条件が全部そろう上に、出典がそのものずばりプルタルコスの『英雄伝』なのが決め手です。

○対抗(ダジャレ枠):「ブル...ブル...タス、お前もか!」(同じくシーザー)
冬の海に落ちれば、英雄シーザーとて震えが止まりません。「ブルブル」と「ブルータス」を掛けつつ、「お前も(寒いの)か」と一緒に落ちた腹心を気遣う優しさも表現。

▲単穴:「ヒエルカー!(冷えるかー!)」(アルキメデス)
本来は風呂で「エウレカ!(分かったぞ!)」と叫んだ英雄ですが、冬の冷たい海に浸かればこう叫ばざるを得ない、という理屈です。

△和風枠:「吾妻はや(ああ、わが妻よ)」(ヤマトタケル)
走水の海で嵐に遭い、妃の弟橘媛が身代わりに入水して海を鎮めた伝説から。厳密に叫んだのは後日の峠ですが、冷たい海に消えた妻へ捧げた、日本神話屈指の名言です。

☆おまけ:「不凍港が欲しいーー!」(ロシアの英雄たち一同)
冬に凍ってしまう冷たい海を前に、ピョートル大帝以来ロシア史の英雄たちが代々叫び続けてきた魂の一言、という歴史ネタです。

実際に提出するなら、◎で知識を見せて○で笑いを取る二段構えがおすすめです。

これです。無料版7モデルと明確に違うのが分かるでしょうか。本命のカエサルの逸話は、「紀元前48年」「アドリア海」「プルタルコス『英雄伝』」まで具体的な出典が明示されていて、「冬」「冷たい海」「叫んだ」「英雄」の4条件を全部満たす、唯一と言っていい回答でした。しかもそこで満足せず、ダジャレ(ブルータス⇄ブルブル、エウレカ⇄ヒエルカー)、日本神話(ヤマトタケル)、地政学ネタ(ロシアの不凍港)まで、競馬の予想印つきで一気に展開してくる。真面目な回答者としての実力と、エントリー審査を突破するための「笑いも取りにいく」戦略眼が同時に出てきたのは、正直この1体だけでした。

無料版で「AIってこんなものか」と思っていた方は、一度Fable 5(あるいは他社の最上位モデル)にも聞いてみることをおすすめします。同じ質問でも、無料版と最上位モデルの間には、思っていた以上の差がありました。

結局、どう答えるべきか

8モデル分の回答を並べて分かったのは、この設問の本質は「有名な名言をどれだけ知っているか」ではなく、「冬」「冷たい海」「叫んだ」「英雄」という4条件をどれだけきちんと満たす具体的なエピソードを持ってこられるか、という点でした。無料版の多くは条件の一部だけを満たして力技でまとめていましたが、Fable 5の本命解答は4条件全部を満たした上に出典まで明示していました。

エントリーするなら、AIの回答をそのまま丸写しにするのではなく、複数のAIに聞き比べて一番条件を満たしている候補を選び、そこに自分自身の解釈や熱意を上乗せする。それが一番現実的な攻略法だと思います。健闘を祈ります。もちろん、私も出します。

多分ウルトラクイズ関係者にウケる答えはこれでしょうね。

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