世界のマーケッターが選ぶ企業ツイッター活用術 ~ 9つの超定番
Twitterの企業活用,特にマーケティング活用は,2010年に入り,いよいよ本格化しはじめた感がある。
昨日のレポート記事でも,フォーチュン100社のうち65%がTwitterアカウントを開始しており,製品や部門が主幹するものも含めると平均4.2個のアカウントが運用されているとのこと。
実験的に多様な活用法が模索されてきたTwitterだが,ここに来てようやく,ある種の成功パターン,効果の高い手法などが確立されてきたように思う。今日のエントリーでは,まずTwitter活用のアンケート調査に基づき,効果的とされる順番に,それらの手法に関連した最新情報を付記し,Twitterの実践的な定番利用法としてまとめておきたい。
まずベースとしたアンケートは,米国Marketing Profs社が2010年1月に発表した有料調査レポート 「The State of Social Media Marketing」($599) に含まれるものだ。
ここには5000人超のマーケッター(B2B/B2Cで分類)への貴重なアンケート調査が満載されている。この中で,Twitterを業務利用したことがあるマーケッターを対象に,実際にどのような手法が効果的だったかがヒアリングされている。
当記事では,ここで集計されている9つの方法を,B2Cで効果的と評価された順にピックアップする。そこに実例やツールなどの最新役立ち情報を筆者の方で添えていきたい。
効果1位) リアルタイムにPRの問題を監視する
Monitor Twitter for PR problems in real-time
B2B – 40.7% / B2C – 46.9%
B2Cマーケッター(以下,マーケッターは省略)の約半数はTwitterでPRの問題を発見するのに使用し,その多くが効果的と回答しているた。B2Cほどではないが,B2Bも同様の活用をしている企業が多い。現時点で最も効果的と指示されている使用方法と言える。
【推奨ツール】
・ TwitterSearch Twitterの標準検索機能。ここで自社ブランドを指定しRSSフィードで通知するのがます基本
・ BackTweets 自社URL(短縮にも対応)を含むツイートがRSSフィードとして通知される
・ Tospy ツイート頻度を基にした検索エンジン。自社に関するホットな話題を検索できる。RSS対応
・ Twib 自社アカウントのツイートに対する反応(RT,Tweets,はてぶ)を一覧でチェックできる。RSS対応
効果2位) ブランドにネガティブなユーザーと接触する
Contacting Twitter users tweeting negatively about the brand
B2B – 36.7% / B2C – 44%
ネガティブユーザーとの接触が2位なのはTwitterの真骨頂といったところだろう。自らトラブルを能動的に検索して対応している例としては,ジェットブルー航空事例やコムキャスト事例が有名だが,日本ではネイバーが著名になりつつある。(関連記事:NAVER関連のコメントにレスしてまわる「金子さん」って? ) 筆者も金子さんご本人に直接お伺いしたことがあるが,「逃げない姿勢」を大切にしているとの言葉が印象的だった。
【推奨ツール】
・ TwitterSearch,BackTweets (いずれも既出) ブランドのネガティブユーザーを発見する
効果3位) 刺激的な文章でクリックを促進する
Provocative text to drive link clicks
B2B – 34.8% / B2C – 40.6%
ツイートを工夫することで注目を集めている企業がある。日本でいうと,古くは朝日新聞のサッカー中継,最近では加ト吉やNHK_PRが有名だ。いずれも従来のお堅い企業イメージから遠い,フレンドリーで人間的なツイートをウリとしており,軟式ツイートと称されはじめている。(関連まとめ:元気がいいTwitterの軟式企業アカウント) またアフラックまねきねこダックのようにキャラクターを前面に出すツイートも注目されている。(関連記事:人気を集めるTwitterでキャラクターがつぶやくプロモーション)
微妙なところも紹介しておこう。最近話題になったヤマダ電機のツイートだ。
このツイートに関しては面白がった人,否定的だった人と評判は均衡していたが,結果としてRT効果を生み,即売に近かったようだ。どのレベルまで許されるかユーザーによって判断されるものだが,誇大広告や偽りがあるツイートは炎上する可能性が高いので注意したい。ちなみにソーシャルメディアではお笑い系コンテンツがキラーになりやすいとのアンケート結果がある。
効果4位) Twitterを通じてリアルイベントへの招待する
Created an in-person event using only Twitter invites
B2B – 37.4% / B2C – 36%
Twitterがオープンでフランクな文化を持つことから,ビジネス上での人脈開拓に利用しているユーザーは多い。それは企業マーケッターにとっても同様のようだ。特定キーワードやリストで検索し,自社ブランドに関係するインフルエンサーを調査・コンタクトし,イベントに招待する。従来ブロガーに対して行なっていたことをTwitterユーザーにも拡張したというわけだ。Twitterの方がイベント内容をリアルタイムにツイートしてもらえるので即時効果が高いという側面もある。
【推奨ツール】
・ TwitterSearch,BackTweets (いずれも既出) ブランドのインフルエンサーを発見する
・ ついったー リスト検索 リスト検索はAPI未整備のためほとんどない。これは自動収集したデータに基づく検索
・ Google 次のようなオプション検索でリストを探すことができる → リスト検索 (ABC部分を適時変更する)
効果5位) リンクを含むツイートでサイトへ誘導する
Driving traffic by linking to Web pages
B2B – 35.7% / B2C – 35.2%
最も一般的な利用方法だ。ただし自社リンクだけのアカウントは嫌われるので注意したい。それを避けるためにはユーザーとの個別コミュニケーションを積極的に図ること,またユーザーに役立つ情報をツイートすることだ。腕に自信があるなら軟式ツイートのような個性的なアピールを検討するのも良いだろう。日本ではフォロワー24万人超と最大級のアカウントYahoo_Shopping を成功例としてお手本にしたい。リーダー長村氏のもと 3名 5名体制(長村氏よりご連絡あり。5名体制になられたとのこと!)で日平均30ツイートを運用している。うち,53%は個別ユーザーとのコミュニケーションに費やし,36%をリンクつきツイート(2009年9月統計)だ。このバランスやのんびりしたつぶやき感は大いに参考になる。
効果6位) ポジティブなユーザーをマーケティングプログラムへ招待する
Invite Twitter users who tweet positively about a brand to do…
B2B – 34% / B2C – 33.9%
これは前述のイベントへの参加とほぼ同様の狙いだろう。Twitterによってポジティブ・インフルエンサーやロイヤルカスタマーの探索とコンタクトが容易になったことはマーケッターにとって大変なプラスであり,積極的に活用していくべき手法だろう。商品開発プロセスへの参画,試食会への参画,アンケートやペルソナ・インタビューなど,様々なマーケティング・プロセスに積極的な参加を促したい。なおペプシ事例では,Twitter上で直接アンケートを行ない成果を挙げている。
【推奨ツール】
・ TwitterSearch,BackTweets (いずれも既出) ブランドのインフルエンサーを発見する
・ ついったー リスト検索,Google (いずれも既出) ブランドに関係するリストを発見する
・ PollDaddy Twitterと連動するアンケートを簡単に作成・修正できる
効果7位) 最適タイミングのツイートでページビュー最大化を図る
Timing Tweets to maximize views
B2B – 26.9% / B2C – 30.5%
他の手段と毛並みが異なるが,ツイートタイミングを意識するマーケッターが多いと受け取りたい。ちなみにHubspot社から発表されたTwitterの曜日別(上図),時間帯別(下図)ツイート数の推移は以下の通りだ。この調査によると曜日では 木曜日>金曜日>火曜日>水曜日,また時間帯では朝10時,夕方16時,夜22時がゴールデンタイムで,逆に通勤時間の朝8時や夜19時は一時的にダウンする傾向が見られる。
・さらに詳しい情報はこちらをどうぞ 2010年1月 最新Twitterユーザー調査
効果8位) マスメディアを利用してフォロワーを増加させる
Increased Twitter followers using traditional media mention
B2B – 30.7% / B2C – 30.4%
ネットのペイドメディアなどを利用してフォロワーを増加させる手法は比較的多くの企業で用いられているが,工夫しないと効率が悪いということだろう。弊社調査では,単純な広告では1フォロワー獲得に1000円程度かかってしまうことが多い。キャンペーン活用により1年間で100万人を獲得したことで有名な米国小売ホールフーズ(関連記事:自然食品の老舗ホール・フーズが極めた地元密着のつぶやき戦略)では,次のような巧みなギフト作戦がとられている。
- 週に一度,お店・時間・秘密の言葉をツイート。先着5名に$25ギフト券
- 毎日,最も面白いホールフーズに関するツイートをした人に,$25ギフト券
- 単語5つで自分の食物に関する哲学をツイート。優秀賞10名に$50ギフト券
- 100万人目のフォロワーに,いっぱいのキノア(穀物)と$50ギフト券
メディアとTwitter,リアル店舗を美しくリレーしている点も注目に値する。
効果9位) 販促ページにリンクし,販売を促進する
Driving sales by linking to promotional Web pages
B2B – 22.4% / B2C – 24.6%
Twitterを利用するマーケティング手法で、最も効果が低かったのは意外にも販売促進だ。成功事例は約3年間で6.5億円のアウトレット商品を売り上げたデル事例,クーポンを活用しピザ売上の69%,新規顧客の85%がTwitter経由というネイキッドピザ事例などが有名だが,効果を発揮している企業は約25%弱となかなかハードルが高いようだ。工夫ポイントとしては,お徳商品,限定商品,クーポン割引,フォロワー割引など,Twitterならではのお得感を演出することだろう。ツイッター割引店を集約して紹介している twi割 (ハッシュタグは #twiwari)なども注目しておきたい。
【推奨ツール】
・ Twt Qpon Twitterアカウントを使ってコードつきクーポンを発行できる無料ツール
【参考記事】
・ 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第一話 Androidタブレットを販売せよ!」 (1/9)
・ その他Twitterカテゴリー記事集
【ソーシャルメディア事例】
・ 海外成功事例に学ぶソーシャルメディア活用最前線 (2/24)
・ ソーシャルメディア炎上考察 ~ ペプシ Refresh Project のトラブルとその顛末 (2/5)
・ Facebook企業活用における貴重な効果測定事例 - ファン醸成が店舗売上に直結した! (2/20)
・ レディ・ガガに学ぶソーシャルメディア活用最前線 (2/5)
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最新の筆者著書です。 『Twitterマーケティング 消費者との絆が深まるつぶやきのルール』