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【速報】ソーシャルメディア炎上考察 ~ ペプシ Refresh Project のトラブルとその顛末

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ペプシが2010年度のスーパーボールCMをやめ,かわりに年間を通じた大規模なソーシャルメディア・キャンペーンを開始したことは,広告業界に大きなインパクトを与えた。

その経緯と目的,さらにコカコーラとの関係については下記記事をご参照いたたきたい。
ペプシ,スーパーボールCM撤退の背景とソーシャルメディア・キャンペーンの全貌 (1/5)   

2010年1月13日にはじまったこのキャンペーンは,毎月ネット・コンテストで選ばれた32の社会貢献プロジェクトに対して,ペプシが月130万ドルの予算を提供して支援するというもの。支援額は年末までに20億円となり,ペプシが2009年にスーパーボールに投下した15億円を上回る規模となる。

ユーザー投票によって選ばれる32プロジェクトおよび130万ドルの内訳は,個人が主催する10プロジェクトに5千ドル,個人ないし小規模グループが主催する10プロ ジェクトに2.5万ドル,企業ないし組織が主催する10プロジェクトに 5万ドル,組織(NPOのようだ)が主催する2プロジェクトに25万ドルとなっている。また対象となるのはHealth, Arts&Culture, Food&Shelter, The Planet, Neighborhoods, Educationの6分野に限定している。

Pepsi1_2

そして記念すべき第一回目のプロジェクト投稿は,2010年の1月13日12時から開始された。期限は1月31日。729プロジェクトが集まったところで締め切られ,2月1日からユーザーによる投票が開始された。なおこの投票は現在も進行中で,3月1日に選定された32プロジェクトが確定する予定だった。


■ 順風満帆だったPepsi Refresh Projectに難題が発生

ペプシの当初想定を上回る勢いでキャンペーンは進んでいたが,投票も終盤間際の2月25日,やっかいな問題が発生した。この投票プロセスを巡る疑惑記事がニューヨークタイムス誌に掲載されたのだ。(該当記事はこちら

この記事によると,最大規模の$250K(2250万円!)をかけたプロジェクトにおいて不正なプロセスがあるとのこと。具体的には,投票でトップを走るJoyful Heart Foundation(以下,JHFと略)が用意したマテリアル内の動画に,投票後にアップされたはずのPepsi Refresh Projectサイトのイメージが入っているのはおかしいと指摘だ。
Pepsi2_2
(Joyful Heart Foundationページはこちら。現在は動画はカットされている)

話がややこしいのは,このJHFの主催者が,マリスカ・ハージティという女優(彼女は人気シリーズ「性犯罪特捜班」の刑事役として有名で,今回のプロジェクトもセクハラ,家庭内暴力,幼児虐待を根絶することを目的としているものだ)であること。つまりセレブと組んだヤラセ疑惑に発展しかねない危険なスキャンダルだったのだ。

さて,あなたがこのプロジェクトの担当責任者だったらどういう対処をとるだろうか?

 
■ ペプシのとったトラブル対処方法

ペプシのとった対応は実に素早く,賢明なものだった。

1.記事上での謝罪と対策の発表記事はこちら
まずニューヨークタイムズ誌の取材時点で,ペプシ主催者側がルール違反を犯したことを認め,率直に謝罪したのだ。原因はペプシスタッフが投票者の利便性を考え変更したものでJHFが意図したものではないこと,またこの変更は投票に影響しなかったことを明らかにした。さらにこの$250Kプロジェクトで選考されるプロジェクト数を,当初の2案件から3案件に変更した。つまりPepsiは約2250万円の追加コスト負担を直ちに決定したわけだ。これによって,本来読者が感じたであろう疑念や怒りの感情を最小限に抑えることに成功した。

2.続いて速やかに詳細をブログで発表 ブログはこちら
さらにPepsi Refresh Projectブログにて,彼らに過ちがあったこと,それがニューヨークタイムス記事に掲載されたこと(リンクつき),さらに対策として打ち出した選考方法の詳細を説明した。そこでは該当時点でトップだったJHFプロジェクトを無条件で選定し,さらにそれ以外に投票で選ばれた2プロジェクトも対象にするとしたのだ。そして最も印象的なのは,Facebook内にあるPepsi Refresh Projectのノート(ブログに相当する)のリンクとともに,このトピックに関するディスカッションをすすめたことだ。このプロセスにより,ペプシはユーザー間の議論を恐れずにこの問題に真正面から取り組む真摯な態度を表明したのだ。

3.Facebookノートページでのディスッションへの速やかな応答ノートはこちら
適切な対応によりこのページでのディスカッションは最小限に留まっている。現時点で5件,次のように内容だ。

Pepsi3

JHFが受賞できてよかったとする意見が1件,現時点でJHFが3位に落ちたのはペプシが意図的に落としたのか,それともJHFへの投票をストップしたのかという疑問が3件寄せられた。それに対してペプシはこちらでも速やかに対応している。まず投票は継続しているとコメントするとともに,Facebookノートページ,さらにPepsi Prefresh Projectブログページに,それぞれ質問に対する詳細な回答を,過剰なほど丁寧に追記している。

Pepsi4

スキャンダルに発展しかねないトラブルだったが,現時点でユーザーによる炎上現象は起きていない。ペプシのとった迅速で真摯な対応が効果的だったことを示している。

 
■ ソーシャルメディアにおける炎上対策

一般的にソーシャルメディアにおけるコミュニティやブログの炎上は次のような原因で起こる。

  • 反社会的な記事 ~ ルール違反,未成年者の飲酒や喫煙、犯罪行為の擁護・社会的弱者の悪口など
  • 誤った知識の知ったかぶり ~ 法律や科学知識、社会問題等関する誤った知識を根拠にした他者批判など
  • 主義の対立 ~ 感情的な反論、対立論者による指摘、不都合なコメントの削除など
  • 提灯記事 ~ 広告であることを明示せず,金品を受け取り指定商品のブログ記事を書く事など
  • 身分を隠して自組織を擁護 ~ 企業内部の関係者であるにもかかわらず身分を隠して第三者を装うなど
  • 問題対応時の稚拙さ ~ 問題への隠蔽姿勢,謝罪の遅れ,原因や経緯の非公開など

今まで,情報の非対称性(消費者より企業が多くの情報を持っていた前インターネット時代の情報格差)によって守られていた企業サイドが,その習慣のままネットユーザーと接することによって起こるものだ。特に顧客接点の少ない情報システム部門や管理部門,経営層が主導して炎上するケースが多い。日ごろから顧客と接する営業や店舗の方々にとって当たり前の「お客様と誠意を持って接する」という原則を徹底することが大切なのだ。

  1. 会員を招待性、承認制、条件付等にして限定し、匿名不特定多数が発言できないようにする
  2. 広告明示なしにブロガー等に報酬を払って恣意的な記事を書かせない。また判断基準が未熟な子供たちを利用しない
  3. 独自ルールや文化を持っている他社コミュニティを安易に利用しない
  4. 自社コミュニティのルールを明確にし、告知する
  5. 自らの身元を明かし、透明性を保つ
  6. ウソをつかない
  7. コミュニケーションを拒否したり、無視したりしない
  8. 謙虚な姿勢を崩さない
  9. ユーザーをリスペクトし、感謝の気持ちを持つ
  10. 問題が起きた時は放置せず、迅速に対応する

これらの「誠実な対話姿勢」を,ユーザーと接する可能性のあるすべての関係者に教育し徹底することが肝要だ。これらの基準は難しいことではない。ユーザーは企業に対しても一人の人間として誠実な行動を期待している。またこれらの行動姿勢を逸脱した場合に非難されるのは企業だけではない。むしろマナーの悪いユーザーが他のユーザーによって退去させられることの方が多い。

ソーシャルメディアは諸刃の剣だが,すでに企業が避けて通ることはできなくなっている。むしろ適切に活用することにより,炎上を未然に防止するためのコミュニケーション・ツールと考えるべきだ。今回のペプシの事例は,まさにその典型例と言えよう。

そしてもう一つ,ソーシャルメディアを活用しようとしまいと,生活者はその上で活発に情報交換しており,あらゆる企業に炎上の危機はある。新しい時代に対応した企業内文化を醸成することこそ,最も根本的な対応策といえるだろう。


【参考記事】
「ソーシャルメディア 成功の秘訣」 カテゴリー記事集


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