ご承知の通り、知財にはいろいろな種類があります。
最も「強い知財」とされているのは、特許権とされていますが、これは排他権として他者を排除する権利を有しているためです。そこまでに強い権利を法的にも認められていながら、担保価値がないとされているのは、不思議なことです。
一方欧米では、知財のような「無体財産権」を担保に資金調達するのはごく一般的になっています。例えば、ロック歌手のデビッド・ボウイは向こう10年間(まだ実現していない利益です!)にリリースするアルバムの収益を担保に多額の資金調達を行って、スタジオを建設しましたし、ある発明を担保にエクイティに結びつけた事例も多々あります。
先般頂いたコメントにある、「特許の危うさ」がこの背景にあるとは思えません。なぜなら、特許の権利無効が認められる確率は、先発明主義を採用している米国の方がはるかに高いからです。
資本主義は、「資本」を元手に事業を企図することを是として発展してきましたし、資本家が最上位に位置づけられる制度といえます。しかし、様々な技術革新の進展の結果、技術資本主義とでも言うべき時代が訪れつつあります。これは、優れた技術革新に対して資金が集中してきた結果でもあります。IT技術の進展はその典型的な象徴でもあり、当然の帰結であります。
優れたアイデアを繰り出す貧乏人の発明家が、資本家にアイデアを売り渡す時代はとうに過ぎました。近年の技術革新は、貧乏人の発明家が一夜にして資本家になるという経済効果を生み出しています。これは従来の資本家にとっては脅威の出来事といえます。そこで資本主義先進国の米国で考えられたのが、ストックオプションだと思います。従来のようにアイデアや発明を「購入」するのではなく、株式を発明家に渡す(しかもコストをかけないストックオプションで)ことで、スムーズな技術資本主義を実現したと考えます。
技術資本主義においては、事業投資に対するリスクと発明や特許に対するリスクは同義と捉えるべきと考えます。事業投資がリスクが小さく、発明や特許のリスクが大きいとしてしまうと、技術資本主義は到来せず、いつまでたっても革新的なアイデアが生まれない風潮になりかねないためです。そのゆがみの結果が、乱立するITベンチャー上場という結果に結びついていると考えてもおかしくはないのではないでしょうか。優れたアイデアを評価せず、かといって事業の発展をさせるための資金が乏しい場合、残る資金調達手段はエクイティ(技術ではなく、企業を評価しての資金調達なので、技術に対する評価はきわめて間接的です)しか残らなくなります。
次節では会計制度と税務について触れたいと思います。
~続く~
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