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ビジネスとテクノロジーの間には深い溝がある?

SAP HANA Voraの日本提供開始

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最近、オープンソーステクノロジーに縁があります。SAP HANA VoraはApache Spark上で稼働するインメモリークエリーエンジンです。ビッグデータの分散処理基盤として真っ先に思い浮かぶのはApache Hadoopですが、SparkはHadoopが苦手としている領域を補完する新しいタイプの分散処理基盤としての役割が期待されています。HANA Voraはこの9月にドイツですでに発表されていますが、国内でも11/5から提供開始になるということで発表会に行ってきました。正式な発表内容はこちら

HANA Voraとは何か?

HANA VoraはSparkとHadoopをベースにしている製品です。また、HANA Voraは単独でも利用できますが、ビッグデータをビジネスの文脈で捉えることができるよう、既存製品のSAP HANAと組合せて利用することもできます。HANA Voraは金融サービス業のリスクマネジメント、通信業の帯域幅の最適化、センサーデータを活用するハイテク製造業での利用を想定しています。SAPでは、HANA Voraをエンタープライズデータとビッグデータの橋渡しを行う製品と位置付けており、センサーデータに代表されるIoT分野で生成される大量データとビジネスデータと組合せた分析ができるようにするものです。

なぜHANA Voraを提供するか?

デジタル経済では膨大なデータを活用し、意思決定に役立てることが求められます。しかし、これまでのデータ処理基盤は必ずしも効率よくインサイトを得ることができるようにはなっていませんでした。Hadoopは、分散処理のためのプログラミングモデルのMapReduceと、分散処理データストレージのHDFSで構成されています。対して、SparkはMapReduceが苦手とするバッチ処理やインタラクションが頻繁に発生するリアルタイム処理に対応するために開発されました。HANA Voraはリアルタイム処理をより効率よく行うことのできる分散処理基盤を提供するべく、2つのフレームワークをベースに開発されました。

HANA Voraの戦略的位置づけ

SAPはインメモリーテクノロジーをベースとするHANAで企業のアナリティクス環境を変革してきました。また、国内では大手企業を中心に多数のビジネスアプリケーションを利用する顧客を抱えています。HANA Voraは、ビジネスデータを迅速かつ高速に処理する分散処理基盤を提供するというSAPのプラットフォーム戦略を強化するものです。発表では、HANAと合わせて利用することで、より効果を発揮できる点が強調されていました。また、ビジネスの文脈を強調していることでもわかるように、HANA VoraはIoT向けに特化したものではありません。"Run Simple"の共通テーマの下、SAPにはHANA Voraで企業のアナリティクス環境をよりシンプルにしていくことが期待されています。

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