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ビジネスとテクノロジーの間には深い溝がある?

Heroku Enterpriseの機能強化ポイントは何か?

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株式会社セールスフォース・ドットコムは1月27日、Heroku Enterpriseの新機能の提供を開始しました。今回は、新機能と今後の製品戦略についてのプレスセミナーの内容をレポートします。

App CloudにおけるHeroku Enterpriseの位置付け

Heroku Enterpriseは、同社の主力製品であるSales Cloudのようにクラウド型のアプリケーションではなく、クラウドで開発プラットフォームを提供するPaaS (Platform as a Service) に分類されます。

株式会社セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏によると、同製品はプラットフォーム製品ブランドであるApp Cloudの傘下に位置付けられるとのこと。App Cloudは、『"つながる"アプリをすばやく開発』というコンセプトの下、様々なアプリケーションを信頼性の高い環境で開発・実行できるような製品を提供してきました。元々、Herokuは2010年に買収された製品であり、以来同社はForce.comと共にツートップ体制で開発者向けプラットフォームを提供してきた経緯があります。

2種類の開発者向けプラットフォームの相違については「Heroku Enterpriseがプログラマーの生産性を最大化するための開発者向け製品であるのに対し、Force.comはプログラマーの手を借りずに業務アプリケーションを開発したいと考えるビジネスユーザー向け製品である」「大まかに言って、Heroku Enterpriseがコンシューマーをターゲットとするアプリケーションやサービスの開発に従事するプログラマーに好まれるのに対し、Force.comは大企業のビジネスユーザーが利用するアプリケーション開発で利用される傾向がある」と御代氏は説明しました。

Heroku Enterpriseを拡張する新機能

続いて、Heroku Enterpriseのソリューションアーキテクトを務める相澤歩氏より、新しく提供を開始した機能についての説明がありました。今回リリースされた機能は以下の3点となります。

  • Heroku Private Spaces
  • マルチリージョン対応
  • シングルサインオン

Herokuは、アプリ実行環境のDyno、データベース、アドオン、Salesforceアプリケーションとの接続用コネクターのHeroku Connectの4つで構成されています。この4つの構成要素からなる環境を、顧客ごとにネットワーク別に論理的に分離したのがHeroku Privates Spacesです。顧客から見れば、自社専用の環境が利用できるようになることから、安心・安全な環境でのデータ管理とアプリケーション運用が可能となるわけです。

また、これまでは米国東海岸か欧州のインスタンスのどちらかしか利用できなかったのですが、東京を始めとする8ヶ所を利用できるようになります。海外データセンターを利用することに特有のデータレイテンシーの問題が、アプリケーションの性能要求を満たさないとみなされてきましたが、マルチリージョン対応はこの解決につながります。とりわけ国内企業は日本にアプリケーション環境を配備したいという要望が大きいという事情があります。この点について、「世界のどこにいても高い可用性のサービスを利用できるようになる」と相澤氏は解決を示唆する説明をしました。

さらに、SalesforceなどからHerokuダッシュボードへのシングルサインオンが実現することにより、開発プロセスや運用プロセスの効率化も期待できます。

Heroku Enterprise新機能の魅力

最後に、ゲストスピーカーとして登場した個人向け資産管理サービスMoneytreeを提供するマネーツリー株式会社の共同設立者兼CTOのRoss Sharrot氏が登壇しました。Sharrot氏は、「Herokuが提供する環境と同じものを時間をかけて作るのは現実的ではなかった。弊社はお客様にとって大切なお金に関するデータを扱う。金融サービス業界では世界的にデータ管理要件が非常に厳しい。さらに高いセキュリティレベルを担保できることから、Heroku Private Spacesにはとても期待している。また、事業の成長と共にお客様の数も増える。Herokuが提供する拡張性もとても重要。マルチリージョン対応はエンドユーザーの使いやすさを改善することになるだろう」と述べ、Heroku Enterpriseが新しく提供する機能が今のアプリケーション開発要件と密接に関連していることを裏付けました。

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