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ビジネスとテクノロジーの間には深い溝がある?

「攻めのIT経営銘柄ファンド」はできるか?

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日経平均が12日続伸と買い基調にある中、去る5月26日に発表された経済産業省と東京証券取引所の平成26年度版「攻めのIT経営銘柄」について、思うことを書いてみたいと思います。

「攻めのIT経営銘柄」とは

「攻めのIT経営銘柄」とは何かについて、経済産業省は以下のように説明しています。

「攻めのIT経営銘柄」は、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業を紹介するものであり、今後、多くの企業が「攻めのIT経営」の取組を推進するインセンティブとなることを目指します。

今回の発表は企業経営者に向けてIT投資を喚起するのと同時に、投資家に対しての情報提供が目的です。事業革新や収益拡大を目的として、積極的かつ効果的にIT投資を行うと、建物や機械設備への投資の場合と同様に、理論的には株価に反映されるはずです。しかし、多くの日本企業では、IT投資は「業務効率化/コスト削減」を目的とした「守り」の投資が中心であり、「ビジネスモデルの変革」といった競争力強化のための「攻め」の投資に十分な経営資源を配分できていないことが問題視されています。このような環境だからこそ、特定企業が「攻め」のIT投資に成功しているか否かは、投資家にとって有益な投資判断情報になるはずです。

「攻めのIT経営銘柄」の運用パフォーマンス

今回の発表では選ばれたのは次の18社(証券コード順)となりました。

積水ハウス(株)、アサヒグループホールディングス(株)、東レ(株)、(株)エフピコ、(株)ブリヂストン、JFEホールディングス(株)、(株)小松製作所、(株)日立製作所、日産自動車(株)、(株)ニコン、 トッパン・フォームズ(株)、大阪ガス(株)、東日本旅客鉄道(株)、(株)アルファポリス、三井物産(株)、(株)三井住友フィナンシャルグループ、東京海上ホールディングス(株)、東京センチュ リーリース(株)

興味深い点は、18社中14社が日経平均構成銘柄だということです。ということは、運用パフォーマンスが日経平均に近い動きをする可能性が高くなります。実際、発表資料の最後に「攻めのIT経営銘柄」の運用パフォーマンスをインデックス化し、日経平均と比較したグラフでは、「攻めのIT経営銘柄」が日経平均を上回るパフォーマンスを示していることが伺えます。

なお、日経平均構成銘柄225社に含まれない銘柄は、(株)アルファポリ ス、(株)エフピコ、トッパン・フォームズ(株)、東京センチュリーリース(株)の4社です。(このうち、アルファポリスだけがマザーズ上場銘柄で、残りは東証1部上場銘柄となります。)

IT investment index.pngのサムネイル画像

出典:「攻めのIT経営銘柄 詳細資料」、経済産業省

投資家の判断材料としての「攻めのIT投資」

もし、「攻めのIT経営銘柄」のみで構成される投資信託があれば、特定銘柄に大量の資金を投入する機関投資家だけでなく、個人投資家にとっても魅力的な投資パッケージとなりえます。企業が果たすべき社会的責任を基準に銘柄選択を行うSRIファンドのように、IT投資を基準に銘柄選択を行う投資方法があってもいいわけです。その意味で今回残念だったのは、選定調査において対象3,300社中、有効回答を得たのが210社だった点です。私自身も経験がありますが、アンケート調査は原則として協力しないという内規の会社もあるそうで、業種を網羅しての情報収集は難易度が高いのでしょう。財務情報以外の情報提供をどこまで行うかは、投資家の情報ニーズにも大きく依存します。今回の取組みは大変ユニークであり、投資家に対してこれまでとは違った角度から情報を提供するものです。次回はもう少し多くの回答を得られることを期待したいと思います。

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