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ビジネスとテクノロジーの間には深い溝がある?

Oracleが考える本当のクラウドアプリケーションとは?Oracle Cloud World 2015 基調講演より

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2015年4月9日~10日、東京国際フォーラムにてOracle Cloud World 2015が開催されています。この記事は、1日目のOracle Corporation 取締役会経営執行役会長 兼 CTOであるLarry Ellisonの基調講演"The Oracle Cloud Strategy"の内容を受けての感想となります。

彼の講演内容はいつも今後のOracle製品とテクノロジーの展望をわかりやすく解説してくれるものです。今回とても印象的だったのは、Oracle HCM Cloudを例に、「単に古いアプリケーションをデータセンターに移行しても、本当のクラウドアプリケーションにはならない」と繰り返し強調していた点です。Larry Ellison氏は、21世紀のHRシステムに求められる要件を基に、5~10年前に開発された古いアプリケーションの限界を指摘し、モダンなクラウドアプリケーションはどのようなものかを改めて提示しました。

21世紀のHRシステムの機能

世界的に見て、最も重要なアプリケーション分野は人財管理とカスタマーサービスの2つだそうです。この2つが最重要となる理由は、おそらく従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの両方を維持し続けることが企業の競争優位の源泉につながるためでしょう。だからこそ、投資に対するリターンが大きいとみなされているのです。特に、日本では労働者人口の減少が今後大きな問題になっていくことが予想されます。新卒・中途を問わず優秀な人材を採用し、教育し、働きに見合った報酬を提供しなくてはなりません。その一連のマネジメントを円滑に支援するのがモダンなHCMアプリケーションとなります。

アプリケーション:ソーシャル対応

今や企業がSNSを利用して採用活動をすることは当たり前のことになってきています。10年前はFacebook、Twitter、LikedinのようなSNSはありませんでした。古いHCMアプリケーションはソーシャルネットワークに統合されていません。ですから、SNSがない時代に開発された古いアプリケーションをAWSに移行したとしても、クラウド化の効果を十分に得ることができるかは疑問です。21世紀のアプリケーションに求められる要件を満たしているとは言えないでしょう。

また、ユーザーとしてSNSを日常的に利用していると、社員同士のやり取りも変わります。モダンアプリケーションにおいて、ソーシャルネットワークは必須機能となります。社員同士のコミュニケーションの他、グループを作ったり、プロジェクト管理を行ったりする際にもソーシャルネットワークは有効です。さらに、ユーザーインターフェースがFacebookやTwitterに近いと、操作を覚えるためのマニュアルも必要がなくなります。

プラットフォーム:OLTPとOLAPの統合とモバイル対応

アプリケーションを支えるプラットフォームのアーキテクチャーも変化しています。古い時代のデータベースアーキテクチャー設計では、トランザクション処理のためのOLTPとアナリティクスのためのOLAPを別々にすることが定石でした。しかし、モダンなクラウドアプリケーションの場合、この2つは統合されているため、必要な情報を必要なときにアクセスできるのです。例えば、ある優秀な人材に採用通知を出そうとします。モダンなクラウドアプリケーションであれば、予算を超えるような条件を提示していた場合、瞬時に知らせてくれます。

また、モダンなアプリケーションはどのデバイスでも利用できなくてはなりません。すべての機能をタブレットでもスマートフォンでも使えるようにするには、モバイル対応が重要です。しかし、古いアプリケーションのプラットフォームはモバイル対応ではなくなく、その意味でホスティングやハウジングはモダンアプリケーション向けの稼働環境とは言えません。

さらに、もし利用しているクラウドアプリケーションが自社に必要な機能を提供していない場合、企業は機能を追加開発したいと考えます。そのために重要なのがPaaSのサービスであり、データベースや開発環境がクラウドで提供されることが望ましいのです。

Oracle のクラウドビジネス

既にクラウドアプリケーションのメリットとしてよく知られていることですが、コストが大きく下がります。パッケージアプリケーションでは今まで1年 かかっていた導入期間がクラウドでは3ヶ月ぐらいに短縮します。コンピューターを調達する必要もないし、ソフトウェアをインストールする必要もありませ ん。前述した通り、操作が簡単なのでトレーニングコストも少なくなります。バージョンアップやパッチ当ての処理も必要ありません。

SIを雇えないような規模の小さい企業であっても、より早くより低コストにアプリケーションの調達が可能になりました。そのため、かつてはOracleの顧客ではなかった規模の企業にまでクラウドアプリケーションは浸透しています。特に、OracleのHCMビジネスはゼロから1000以上の顧客持つまでに成長しているとのことでした。

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