クラウドを使えば安くなるのか? ~チョコ溶かして、型に入れて、冷やして終わりです(失敗)~
クラウドコンピューティングも珍しいものではなくなり、一時的な利用ではクラウドの方が多いかもしれない。たとえばキャンペーン専用サイトなんかはクラウドに最適である。
クラウドを使う理由はいくつかある。代表的なものを上げてみよう。
- 初期コストが安い…初期費用は基本的にゼロ、使った分だけ払う
- 運用コストが安い…ハードウェア保守は完全になくなり、基本的な運用もクラウドに一任
- 柔軟性が高い…サーバーの追加や削除、メモリやCPUの強化が簡単
- セキュリティが高い…データセンターの物理セキュリティが強固
もっとも、インターネット接続が前提になるため、外部からの侵入によるセキュリティリスクは増加する(もちろん十分な対策は可能である)。また、低性能なサーバーではクラウドの方が高価なことも多い。安いレンタルサーバーだと月額1,000円から2,000円程度で利用できるが、クラウド上の仮想マシンを単純な契約で使うと1万円を超えることが多い。
クラウドのサーバー価格
実際にMicrosoft Azureの料金計算ツールでサーバー利用料を試算してみた。シングルコアCPU、3.5GBメモリ、50GBディスクの小型サーバーである。ネットワークやストレージ、そのオプションは一切考慮していない。
▲Windows Serverの場合: 約11,080円/月
▲RedHat Enterprise Linuxの場合: 約11,839円/月
面白いのは、WindowsよりRedHat Enterprise Linux(RHEL)の方がわずかに高いことである。IBMが提供するクラウドサービスSoftLayerでも、以下の通りOSの価格はWindows Server 2012 StandardよりもRHELの方が高い(Datacenterと比べるとRHELの方が安い)。
- Ubuntu(Linux)…$0
- Windows Server 2012 Standard…$17
- Windows Server 2012 Datacenter…$125
- RedHat Enterprise…$45
Linuxはディストリビューションごとに管理手法に若干の差があり、サポートレベルも違う。目的に合ったLinuxを選択して欲しい。
クラウドの価格メリット
このようにサーバー単体の価格では安いとは言えないが、それでもクラウドには価格メリットがある。それは、必要な時にサーバーを増やし、不要になったらすぐに減らせるところである。
たとえば、料理レシピの集積サイト「クックパッド」は、深夜から早朝までと、昼間から夕方ではアクセス量がかなり違う。そこで、時間ごとにサーバー台数を調整することでサーバー1台あたりの負荷を平準化し、サーバー利用料を最適化している。
クックパッドは季節変動も大きいらしい。Amazon Web Servicesの事例紹介「AWS 導入事例: クックパッド株式会社」によると、アクセスのピークはバレンタインデー直前だそうだ。しかし、バレンタインデーに合わせてサーバーを増強すると、今頃は多くのサーバーが遊んでしまうことになる。クラウドサービスを利用し「必要な時に、必要なサーバーを調達し、使った分だけ払う」ことでサーバー利用料の最適化を図っている。
それにしても、ピークがバレンタインデーというのはちょっと意外だった。年末のおせち料理の方がよっぽど需要がありそうだが、おせち料理を作る層は普段からクックパッドにアクセスしているのかもしれない。
その点「手作りチョコ」の主な担い手である若年層は、普段それほど料理をしないが(たぶん)、Web利用には慣れている。検索するうちにクックパッドにたどり着くのだろうか。
この話を聞いて「『手作り』と言っても、チョコ溶かして型に入れて冷やして終わりじゃないか」、と指摘したら「そんなもんじゃない」と激しく叱られた。溶かした状態の適切な温度管理や、気泡ができないように型に流し込むのは案外難しいらしい。最新のレシピを手に入れて、もうできた気になっていたら大間違いというわけだ。
こんな歌もあった。
▲まなみのりさ「13日のパティシエ」
さて、みなさまのバレンタインデーはいかがだったでしょう。