アニメ作品に見るジェンダー
3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」だそうだ。「女性に感謝を伝えましょ」みたいなことを書いたWebサイトもあって、笑ってしまったが、そういう日ではなく、「女性が権利の獲得に向けたこれまでの歩みを祝うと同時に、女性被害者は、いまだに跡を絶たないことを想起する日」である(国際女性デー - Wikipedia)。
そういうわけで、ジェンダーの話をしていみたい。
1976年に「国連女性の10年」のあと、ようやく雇用機会均等法が1986年4月1日に施行された。その後、何度かの改定があり、社会の意識もかなり変わってきた。諸外国に比べると、まだまだ意識の差は大きいがそれでも確実に変化している。
女性だけがヒーローとして活躍する最初のアニメ作品は、おそらく「美少女戦士セーラームーン」だろう。均等法に遅れること6年、1992年3月にスタートした。
ただし、セーラームーンでは「タキシード仮面」という男性がしばしば登場し、セーラームーンたちを助けていた。もっとも、よく見るとタキシード仮面は格好を付けているだけで、大して役に立っていない。現実を反映しているのかもしれない。
しかし、セーラームーンやその仲間たちからはかなり感謝されていたようである。そのため「結局は男頼りか」という見方をされることもあった。
これが、2004年に始まった「プリキュア」シリーズになると、男性は一切登場しない。「逆に不自然だ」という声もあったようだが、アファーマティブアクションの一種なのだろう。とにかく男性ヒーローは排除された。
その後も、ゲスト的に男性が活躍する場合もあったものの、メインキャラクターは女性だけという時代が続いた。
状況が変わったのは2022年の「デリシャスパーティ♡プリキュア」で、男性がプリキュアと同じ原理で変身し、同じような力を発揮していた。これはもうプリキュアといって良いのではないかと思うが、そうではないらしい。
これは、女性が、男性と同じことをしても特別扱いされる現実を反映したものかもしれない。「女流作家」という言葉はあっても「男流作家」はない(現在はどちらも「作家」である)、「看護婦」という言葉はあっても「看護夫」という言葉は一般的ではない(現在はどちらも「看護師」である)。
余談だが、「デリシャスパーティ♡プリキュア」では最初から最後まで男性か女性か分からない(おそらく女性っぽい男性の)キャラクターが登場したが、登場人物の誰もそのことを指摘せず、ふつうに接していたのも面白かった。
そして、2023年、現在放映中の「ひろがるスカイ!プリキュア」では、ついに男性プリキュアが登場するそうである。男性と女性が混じった状態で、女性が活躍しても違和感がない時代になったということだろう。また、主人公は「ヒロイン」ではなく、現代英語の用法に従って、女性も「ヒーロー」に統一されている。
日本の性別役割分業意識は、諸外国に比べて大変強いようだが、さすがにそろそろ変化してきているようだ。