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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

試験問題の作り方(その2)

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前々回、「試験問題の作り方」では、試験問題の選択肢について書いた。今回は、その続きである。

●1つの選択肢に複数の項目は良くない

研修終了後に行われる試験問題でもっとも重要なことは、学習目標を達成したかどうかを正しく識別できることである。良い問題は、知識項目と正確に対応する。正答を見れば何を理解したかが分かり、誤答を見れば何を理解していないかが変わる。

例を挙げてみよう。

問A 宮崎奈穂子について正しく説明したものを、選択肢の中から選びなさい。

  1. 1万人のサポーター(ファンクラブ会員)を集め、武道館単独コンサートを成功させた
  2. 主に関西で路上ライブを中心に活動するシンガーソングライターである
  3. 次回ライブは、2014年6月14日(土)に恵比寿リキッドルームで開催される
  4. 自分が作詞作曲した曲をアイドルグループに提供しているが、自分で歌うことはない

いずれも1つの選択肢に複数の項目が含まれているため、誤答を選んだ場合、何を間違えたのかを判定できない。

1.は、「1万人」が誤り(正しくは「1万5,000人」)だが、「武道館単独コンサート」は正しい。
2.は、「主に関西で」が誤りだが、関西に全く行かないわけではない。また「シンガーソングライター」は正しい。
3.は、日付、場所、ともに正しい。
4.は、「自分で歌うことはない」が誤り(自分でもセルフカバーとして歌う)だが、「トーキョーチアチアパーティ」というアイドルグループに楽曲の提供をしている。さらに次の企画もあるようだ。

つまり、問Aでは、どの誤答にも複数の項目が含まれており、誤答した場合は何が理解できていなかったのかを判定できない。

●1つの選択肢に1つの項目にしよう

一方、以下の問題はどうだろう。

問B 宮崎奈穂子が歌を披露する場所のうち、1年間で最も回数が多いところを選択肢の中から選びなさい。

  1. 企業イベント
  2. 地域イベント
  3. ライブハウス
  4. 路上

正解は4で、ほぼ毎週何日かは歌っている。企業イベントや地域イベント、ライブハウスで歌うこともあるが、路上ライブの回数に比べれば圧倒的に少ない。

多くの人は、1つの選択肢に複数の項目を入れてしまいがちだ。これは以下の理由によるものと思われる。

  • 限られた問題数で多くのことを聞きたい
  • 誤答の選択肢が思いつかない

1つの選択肢に1つの項目の原則に従うと、四者択一の場合は3つの誤答が必要になる。しかし、1つの選択肢に2つの項目を含めると、2つの正答と2つの誤答で済む。正答は教科から引き写せばいいので、考えるのも簡単だ。

●選択肢の作りやすさに負けないように

どれくらい簡単か、例を挙げてみよう。

問C 宮崎奈穂子が日常的に使っている機材のうち、正しい組み合わせを選択肢の中から選びなさい。

  1. ヤマハのキーボードとクレイトのアンプ
  2. ヤマハのキーボードとローランドのアンプ
  3. ローランドのキーボードとクレイトのアンプ
  4. ローランドのキーボードとローランドのアンプ

キーボードとアンプのメーカーを変えるだけで4つの選択肢が出来た(ちなみ正解は1)。いかに簡単かが分かるだろう。

正解の選択肢を考えるのは簡単だが、誤答を考えるのは難しい。そのため、つい「誤っているものを選べ」という問題を作ってしまう。しかし「人間は自ら選択したものを強く覚える」という原則があるため、誤りを選択させるのは望ましくない。また、選択ミスを生じやすいという問題もある。原則として正解を選ばせたいものである。

●次回予告

「試験問題の作り方」というタイトルなのに、今回も選択肢の作り方に留まってしまった。次回こそ「試験問題の作り方」について書いてみたい。

ちなみに、試験問題の話を書いているのは、最近、試験問題をたくさん作ったからで、その成果が以下のリンクである。
最短期間でマイクロソフト認定技術者資格を狙う方はぜひ検討して欲しい。

集合研修 コース検索一覧(検索キーワード:速習MCSA MCP)

●今週のおまけ写真(選択肢の検証)

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▲ある日の宮崎奈穂子さん

アンプとキーボード
▲キーボードとアンプのメーカーが分かる

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