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「日本の産業を巡る現状と課題」を読みました

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日本経済の不都合な真実、で紹介されていた資料を読みました。 (ひょっとすると私の勤務する会社でこれら資料のまとめに関わった人がいるかもしれませんが、私個人はまったく関与しておらずあくまで位置社会人として個人的に抱いた感想です)

『日本経済の不都合な真実:ASSIOMA:ITmedia オルタナティブ・ブログ』 http://blogs.itmedia.co.jp/assioma/2010/03/post-8ca5.html

紹介されていた資料は↓のPDFです。

日本の産業を巡る現状と課題
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf

資料の最初の記載を見ると、ここに記載した事柄について、経済産業省の産業構造審議会に新たに産業競争力部会を設置して検討していきましょう、とされています。産業構造審議会と産業競争力部会というのを見てみましょう。

○産業構造審議会(2001年1月6日設置)
http://www.meti.go.jp/report/committee/data/g_commi01.html

所掌事務

  1. 産業構造の改善に関する重要事項その他の民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展に関する重要事項を調査審議すること。
  2. 割賦販売、ローン提携販売、割賦購入あっせん及び前払式特定取引に関する重要事項を調査審議すること。
  3. 商品市場における取引に関する重要事項を調査審議すること。
  4. 消費生活製品の安全性並びに訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引及び特定継続的役務提供に関する重要事項を調査審議すること。
  5. 工場立地法、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律、伝統的工芸品産業の振興に関する法律、航空機工業振興法、自転車競技法及び小型自動車競走法の規定によりその権限に属せられた事項を処理すること。

部会一覧

産業競争力部会 地域経済産業分科会 貿易経済協力分科会 産業技術分科会 航空機宇宙産業分科会 車両競技分科会 繊維産業分科会 伝統的工芸品産業分科会情報経済分科会 商品取引所分科会 割賦販売分科会 基本政策部会 新成長政策部会 知的財産政策部会 産業金融部会 通商政策部会 環境部会 化学・バイオ部会 サービス政策部会 流通部会 消費経済部会

○産業競争力部会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/24.html

概要
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004660/index.html

経済産業省は、平成21年12月に提示された、成長戦略基本方針を踏まえ、日本産業の今後の在り方を示す「産業構造ビジョン(仮称)」を策定するために、産業構造審議会に新たに産業競争力部会を設置いたしました。「今日の日本の産業の行き詰まりや深刻さ」を踏まえ、今後、「日本は、何で稼ぎ、雇用していくのか」、ということについて議論します。

とのことです。この第1回(2010年2月25日)の資料に日本の産業を巡る現状と課題が登場し、課題が洗い出され現在も取りまとめが続いています。

この概要によれば、「産業競争力部会」のアウトプットは「産業構造ビジョン」策定のようです。

インプットはどこから来たのでしょうか。産業競争力部会の概要の赤字部分を見てみますと、平成21年12月の「成長戦略基本方針」を踏まえ設置したとあります。経済産業省の注目情報一覧が時系列な発信情報のまとめページになっていますので探してみると……経済産業省と首相官邸の両方のサイトにありました。

『「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」について(2009年12月30日)』
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/index.html

『「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」 -首相官邸ホームページ-』 http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/

平成21年12月30日、「新成長戦略(基本方針)」を閣議決定致しました。当省で行ってきた「成長戦略検討会議」での議論を土台に、政府全体の方針を策定致しました。今後「基本方針」に沿って、平成22年初めから「肉付け」の作業を行い、平成22年6月初めを目途に「成長戦略実行計画」(工程表)を含めた「成長戦略」のとりまとめを行う予定です。

とありました。「成長戦略検討会議」は国家戦略室の開催と位置づけられるようです。

成長戦略策定会議の開催について
http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/actions/200912/__icsFiles/afieldfile/2009/12/28/1215seichousenryaku.pdf

  1. 政府一体となって成長戦略を策定するため、成長戦略策定会議(以下「会議」という。)を開催する。
  2. 会議の構成員は、次のとおりとする。ただし、議長は、必要があると認めるときは、関係者に出席を求めることができる。
    議長 内閣総理大臣
    議長代行 副総理
    副議長 内閣官房長官、経済産業大臣
    議員 他のすべての国務大臣
  3. 会議の事務局は、内閣総理大臣補佐官(国家戦略担当)が総括し、議長が指名する内閣府大臣政務官及び経済産業大臣政務官がそれを補佐する。
  4. 会議の庶務は、内閣府の助け及び経済産業省の協力を得て、内閣官房において処理する。
  5. その他、会議の運営に関する事項その他必要な事項は、議長が定める。

鳩山総理が自ら議長をする会議のようです。

『成長戦略策定会議』
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokkasenryaku/kaigi/seicho.html

成長戦略策定会議は、平成21年12月15日の閣議決定により設置され、鳩山総理を議長とし、菅議長代行、平野・仙谷・直嶋副議長の下、国家戦略室を中心に、成長戦略の策定のとりまとめをすすめています。同年12月30日には、「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」を発表しました。引き続き、基本方針をもとに、政策を確実に実行させるための工程表を作成し、全体像を完成していく予定です。

この「成長戦略検討会議」の結果、固まったのが下の基本方針のようです。

○新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/pdf/091230_1.pdf

内容を見ると『6つの戦略分野の基本方針と目標とする成果』というのが目立ちます。

  1. グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
  2. ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
  3. アジア経済戦略
  4. 観光立国・地域活性化戦略
  5. 科学・技術立国戦略
  6. 雇用・人材戦略

この新成長戦略の基本方針の発表時の鳩山総理の発言があります。

『新成長戦略基本方針発表に係る鳩山総理大臣発言』 http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200912/30seichosenryaku.html

私はこの部分に注目しました。

小泉内閣が中心になって、市場原理主義がもてはやされました。そのことも、ある意味での効率化というものが一部では達成されたと思いますが、日本全体の活力というものには必ずしもつながっていかなかった。

その理由は何か。結果として、結論として私たちが考えておりますのは、やはり経済のために人間が動かされていたんじゃないか。経済のための人間だったんじゃないか。その発想は逆だろう。これからは人間のための経済でなければいけないんじゃないかと。

別の言葉で言えば、供給サイドに偏っていた今までの発想を改めて、需要というものをしっかりと創出をしていく、国民の皆様方が、何が求められているのか、それをしっかりと実感をしていきながら、それにあわせた国づくりというものをつくり上げて行く。政府はその後押しをうまく行うものでなければならない、その発想に至ったわけでございます。

ある意味での友愛精神に基づいた人間のための経済というものが、この国の新たな成長をしっかりとつくり上げて行くことができる、そのように私どもは考えるに至ったわけであります。

私はこの発言を非常に深く受け止めました。確かに効率化された部分はありますが、それで日本全体が活力を取り戻したわけではありません。発言では供給と需要と言っていますが、これは企業と個人と言ってもいいかと思います。長引く不景気の中、企業を元気にすれば社員も元気になるという論理で様々な施策が行われました。

しかし企業を通じて社員を支援せずとも、社員(個人)が何を必要としているかに耳を傾けてそれを支援していけばいいではないか、そのように言っているように思います。そしてその後に「ある意味での友愛精神に基づいた人間のための経済」という言葉が続きます。これはすなわち、完全な市場経済をある程度あきらめて再分配や計画的な供給を行っていこうという表明ではないかと思います。つまり今こそ社会主義インターナショナルのVICE-PRESIDENTSを務めるMizuho Fukushima氏のもと、労働者は団結して……というのは冗談として、生産人口と非生産人口のバランス感や、市場競争に任せておけないような問題について、日本国内に目を向けながら成長していこうというのはとても大切なことであると思います。

その一方で、『日本の産業を巡る現状と課題』を読んでみるとどうでしょうか。GDPの世界ランキング、賃金の伸び悩み、海外へのシフトなど外国と比較をしながら「とにかく成長」という印象を受けます。もちろん国際競争力を失って円が劇的に価値を失うようなことがあれば、医薬品や石油などが入手できなくなって国民全体の生活水準が下がるかもしれません。しかし将来的に成長を維持できないような国もまた、通貨や国債の価値を維持できず困窮していくと思われます。私個人の意見としては、GDPランキングやプレゼンスなど二の次三の次でよく、

「国民の皆様方が、何が求められているのか、それをしっかりと実感をしていきながら、それにあわせた国づくりというものをつくり上げて行く。」

さえ果たされれば満足です。たとえ世の中の支持率が20%を切ったとか言われようと、政策がブレようと、公約が無視されようと、私はこの一言に基づいて鳩山総理を支持しています。(ここがブレ始めたらわかりませんが)

資料ではタイトルのとおり「日本の産業を巡る課題」がいくつも論じられていますが、産業からの目線であるように感じます。それは国民が何を求めているかについて、生産者も政府も国会も、そして消費者自身さえもよくわかっていないからなのではないでしょうか。誰も国民目線になれない、そのことこそが日本の産業を巡る課題なのではないか、そのように思いました。

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