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ICT業界動向やICT関連政策を基に「未来はこんな感じ?」を自分なりの目線で「主張(Assioma)」します。

日本経済の不都合な真実

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私も含めて日本に対するイメージはどういうイメージを持たれているでしょうか?
私の日本に対するイメージはこういうイメージを持っていました。

 1) 経済大国日本は世界に対して大きな影響力を持っている
 2) 日本人は貯蓄好きで、国全体で1400兆円の個人金融貯蓄がある
 3) 高度な技術と、高品質で日本製品は一つのブランドであり、世界中で人気がある

しかし、経済産業省から先日発表された、日本の産業を巡る現状と課題を見ると、今まで日本という国を何も知らなかったという事実に気づきました。50ページにもわたる資料ですが、その一枚一枚がとても重要な事が記載されていますので、是非一読される事をお勧めします。

今回はこの、「日本の産業を巡る現状と課題」の内容を基に、日本経済の不都合な真実を紹介してみたいと思います。

■日本経済の不都合な真実 ① 経済大国日本は世界に対して大きな影響力を持っているの嘘
のっけから、「日本経済の行き詰まり」という題目で始まるこの資料。本題に入ったP5でいきなり衝撃的な事実をつきつけられる。2008年の時点で日本の一人当たりのGDP世界ランキングは現在23位。
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こちらの三菱総合研究所の2009年の最新データでは国際競争力は17位と若干上昇はしているものの、香港、シンガポールが上位に位置づけている事が分かる。ITCの世界でもアジア拠点として香港、シンガポールにDCや支社を設立する傾向が目立つ。こういったランキングが影響を与えているのでは無いだろか。

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P33の資料からも、外国企業から見て日本は既に魅力的に写っていない事がうかがえる。
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もう、日本は外国から見て魅力的でもなんでもなく、過去からの資産を食いつぶしているだけの「アジアの中の1国」でしかないのだ。

■日本経済の不都合な真実 ② 日本人は貯蓄好きで、国全体で1400兆円の個人金融貯蓄があるの嘘
P7の資料から、日本人の「貯蓄率」は「浪費好き」な米国より下回っているとある。
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貯蓄率が下がっている原因として、上がらない賃金である事がはっきりわかるのがP8の資料。好景気になっても賃金は上昇せず、不景気になれば賃金下落率が加速する、まさに「デフレ不況」を印象づけるグラフとなっている。
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P30の資料から、G5中で雇用者報酬が最低であり、近年下降速度が加速している事がうかがえる。
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これらの資料からわかる事は、日本人はもう貯蓄したくても貯蓄をする余力が無いという事だ。

日本人の個人金融資産が1400兆円と記した、日本銀行のこちらのページは2003年作成のものであり、その当時の分析結果では「日本人は貯蓄好き、米国人は消費好き」とあるが、今となってはその認識は逆転してしまっているという事だろう。いや、正確に言うと「日本人は貯蓄出来ない、米国人は貯蓄好き」というのが正しいのだろう。

■日本経済の不都合な真実 ③ 高度な技術と、高品質で日本製品は一つのブランドであり、世界中で人気があるの嘘
P26によると、日本の製品は既に海外で競争力を失っている事がわかる。それも特定の製品というわけではなく、多数の分野において。
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上図には無いが、ガラパゴス化と言われる携帯電話機のシェアも悲惨なものなので紹介しておこう。元記事に興味がある方はこちらを参照して欲しい。

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半導体等精密機器の分野では日本は強いと思っていた方も多いはずだ。何故このような状況になってしまったんだろう?といのうは各分野毎に理由はあると思うが、DRAM分野における興味深い考察が書かれた記事を一つ紹介しておこう。

優秀な技術者が「無能化」していく悲劇

 ここで私は悟った。「何ということだ、DRAMの工程フローは、数学的帰納法で作られているのだ。また、DRAMの工程フロー全体を誰も理解していない。そして、微細化の進展、新構造や新材料の採用により、工程が増えることはあっても、決して減ることがない!」

現在の日本製品の競争力を低下させている要因の一つにコスト高が挙げられるが、この記事にあるようにコスト高の原因の一つに「考える力を持たなくなったエンジニア」の存在があるのでは無いだろうか。

「低価格品に押されて、日本の高機能、高性能な商品が高価になれないから勝てない」と思っている方々には、こちらの薄型テレビシェアの記事を紹介しておこう。
 日本のメーカは、販売単価、販売数共にサムスン電子、LG電子に負けている。
 昨年の世界の薄型TV出荷37%増 ソニー、シェア3位に後退
 
日本の製品は単価の高い市場においても、安売り市場においても、既に競争力を失っている。

■国外へ脱出する日本人
このような状況を知ってか、知らずか分かりませんが、既に日本で働くという事に見切りをつけで、国外で働くという選択肢を持つ人達が増えているようだ。こちらの記事によると、2007年10月~2008年9月までの1年間で日本人の国外流出数は10万人を超えたとある。
若者の「海外流出」が止まらない!冷え込む雇用がもたらす日本の衰退

これが今回の日本経済の不都合な真実の最後、「新卒採用されなかったら、社会から脱落するの嘘」ではないかと、私は考える。

こちらの記事によると、2010年度中に正社員(新卒・中途を含む)の採用を予定しない企業は5050社と、全体の47.5%にのぼったとある。

しかし、日本での就職活動が失敗に終わり、逆に早い段階でシンガポールや香港で働き口を見つける。そう判断した人達の方が、十年後、二十年後には「あの時、日本の企業に不採用になって良かった」と思う時が来るのかもしれない。

■何故、日本経済の不都合な真実は報道されなかったのか?
今回紹介した、「日本の産業を巡る現状と課題」の個々の資料は、過去にも別の形で登場している物もある。しかし、このようなセンセーショナルな形で登場したのは初めてだと、私は記憶している。

 何故、今まで報道されなかったのか?
  自民党政権の支持率を低下させる可能性のある現状を発表するわけにはいかなかったのでは無いか。

 何故、今回発表されたのか?
  自民党政権により如何に日本経済が衰退し、これを変えて行くには民主党しか無いという世間へのメッセージでは無いか。

上記二つは全くの私の私見であり、根拠は「勘」でしかありませんが、長期政権として君臨していた自民党にとって、今までの自分達の政策の失敗を認め、貰える見込みのない年金、返す当てのない借金に対する国民の視線が尚更厳しくなるような資料をわざわざ作成して国民に公開するメリットは何も無かったのも事実だろう。

民主党にとっては、自民党の政権が如何に日本を衰退させたかをアピールする事で、自民党に対する期待を失墜させ、自分達の政権基板をより固めていきたいと思っていても不思議ではない。

私の推測が正しいかどうかは問題ではありません。民主党には今のこの日本の現状を変化させ、より豊かな未来を築いてくれる政権であって欲しいと願うばかりだ。そして、自民党、民主党で足の引っ張り合い、スキャンダル争いをするのではなく、お互いに協力し、日本経済を一刻も早く復活させて欲しいと、一国民として思う。

■ジャーナリズムとは何か?
如何がでしたでしょうか?もし、今回の記事の内容について「全て知っていたよ」という方は経済通な方だと思います。大半の方々は私と同じように衝撃をうけたのでは無いでしょうか?

一国の首相の漢字の読み違いが多かったという事を知っている国民はたくさんいるのに、なぜ、私達は日本の状況がこのような状況になっていると知らなかったのでしょうか?Twitter特集でTwitterの使い方を詳細に説明する経済誌を読んでいても、このような事実を知る事が出来ないのは何故でしょうか?

報道するという事は、一体何を報道するんでしょうか?
しかし、私はマスコミ批判をしたいわけではありません。

本当に知らなければいけない情報に触れることが出来ず、振り返ってみればどうでも良い情報ばかり溢れている今の状況は、情報を取得する私達自身にも問題はあるのでしょう。マスコミの方々は「世の中の役に立つ情報」を発表する事が商売ではなく、「売れる記事を書く事が商売」なのですから、私達自身が「面白そうな記事、話題の記事」に飛びつくだけでなく、「くだらない記事にお金は払わない」という、賢い消費者になる事が、良質な記事や情報を生む最大の要因であるという事を理解しなくてはならないのではないかと思います。




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