資本主義の原則に則して「処遇改善」をどう実現するのか?
無償化より処遇改善
深刻な保育士不足が続く中、都市部を中心に保育士の退職が相次いでいるそうです。
都内ではほぼ全ての自治体が家賃補助を用意しており、千代田区などは都が基準とする月8万2000円を上回る額を支給しているとのこと。
このように公的機関からの補助金を使うことで実質的な給与金額を高くしていくことは税収が伴う限りは有効な手段と言えるでしょう。
私立の保育園であれば一般的な収益事業となるので、公的支援やスポンサーからの特別な支援がない限り、幾ら待遇を改善することが重要テーマとわかっていても、収入が伴わなければ事業継続は不可能なはず。
そういう意味で、保育士の処遇改善は最重要課題であることには同意しますが、処遇改善につながるシステム(構造)の変革をどのように実現するのかがはこの記事には書かれていません。
他業界の抱える共通課題
日本では、アニメ業界や美容師業界など低賃金で長時間労働が問題となっている業界がいくつかあります。
日本のホワイトカラーの給与設定には生活給という考え方がありますが、前出した業種や、わたしが関わったこともなる音楽業界においても、給与設定はあくまで下請け構造に従った金額設定となるか、当該事業の収益性をベースとして計算されており、労働者の生活ができるかは考慮されていません。
日本の下請け構造は戦時中から続くシステムであり、このシステムの中にいる限り、下層の組織、個人は上から示される予算の中で収益性を確保する必要があります。
中小零細企業であっても、それぞれの創意工夫で低賃金と長時間労働からの脱却の手がかりはあると思います。
ただし、やはり大多数は下請け構造の中に組み込まれ、独自の工夫が困難な場合もあることにも着目する必要はないでしょうか?
どうやったらシステム(構造)を変えられるのか?
今後ブラック企業は人材不足もあり、淘汰されるだろうという主張は一定の妥当性があると思いますが、そもそもその構造を生み出しているのは、下請けをはじめとするシステム(構造)という枠組みそのものの問題であることも忘れてはいけないと思います。
以前にも書きましたが、アニメや音楽の業界であれば、著作権に関連した収益を末端の企業も得られるような構造変化が必要になるのだろうと推測します。
残念ながら保育や美容・理容業界についてはまったくの門外漢のため処遇改善を実現する原資を確保する具体的なアイデアをここに書くことはできません。
事業の収益性を無視して労働者の給与レベルをただ上げろという議論をするつもりは毛頭ありません。
従業員ではなく、業務委託だから法的な問題はクリアしているという考え方もあるかもしれません。
ただこれは変数としての数字をいじっているだけで、システム(構造)不良に対する対処にはなっていないと思います。
そろそろ日本は、業界に憧れて入ってくる人材がいるのを良いことに、低賃金・長時間労働を強いるシステム(構造)からの脱却を具体的に取り組むと共に、資本主義の原則に則して「処遇改善」をどう実現するのかを議論し、行動に移す時期になっていると言えないでしょうか。