【雑感】「類似性」と「影響度合い」と「バッシング」について
デザイン、というものには昔から興味がある。描けるわけじゃないけど。
特に企業ロゴやレタリング、エンブレムみたいなものみたいなものが好きだ。思い浮かぶような発想もないけど。
某巨大イベント開催にあたって選定された公式エンブレムがパクリかどうか、ということが先日話題になっていた。一応、今もか。
デザインを担当された佐野某氏という方を自分は不勉強にて名前すら存知上げなかった。それでデザインに興味がある人間と言えるのか、と言われれば誠に申し訳ない、という感じなのだが。
パクリかどうかの検証、過去作品まで「あれはこれに似てる」だ「そもそもこれをパクったのではないか」とされてまとめサイトまで上がっている。
デザインの元ネタ探しに、Pinterest使ってたんじゃないか、とか。慌ててアカウント消したぞ、とか。
ただいくら外野がどうのこうの言ったって、正直、世界中これだけ人が居るのだから、発想の仕方が偶然同じ人が居たって当然だと思うし、何よりご本人は違うと言っているし、そこは誰も真相はわからない。嘘をついている、という証拠でもあれば「良心は痛まないのか?」とか思うけど、そんなものはある訳も無し。
以前から書こう、と思ってたのだが、意外に世の中似ていると自分が思っているものはある。まぁ、書こうと思っていた時にはネタ的に書こう、と思ってたのだけど。
例えば、
と
とか。
文字の赤さ、マークの上に対するスローガンの配置、とか言い出すとパッと見は区別が付かない・・・のは自分だけか。テレビでCM見てて、一瞬どっちのCMなんだと思ったことがあり。
他にも、
なんて、字体の雰囲気もあれば「スタンダード」と「マスタード」の誤認にもつながるかも。
※タカラマスタードの画像は、この方自身も「似てるじゃないか」と書かれてらっしゃる文脈のブログから引用させていただいております。
でも字の色は違うよね?いえいえ、だったらこちらはどうなる。
字の色まで合って来たぞ、と。
2組の企業ロゴの件を取り上げてみたが、少なくともそれぞれ両社が類似性がある、と言って揉めたことは聞いたことが無い。裏では「手打ち」があったのかどうか知らないが。いや、そもそも全く同じ、という訳では無いから揉めるネタにすらならないのかもしれない。それを言い出すと、件のベルギーの劇場のマークとオリンピックのエンブレム(←あ、具体的に書いちゃった)なんて、これらの類似性に比べればかなり遠く自分は感じる。
そもそも、これだけネットでいくらでも情報が手に入れられ、例えば「タカラスタンダード」と「タカラマスタード」については前述の方以外にも「似てないか?」がYahoo!知恵袋にも書かれていたりする中、きっとそれぞれの企業の方はご存知なはず、だと思う。しかし揉めることなくずっとそのロゴを使い続けられるのは、ロゴデザインが企業の象徴であり、ブランドを示すことによって、その会社の製品におけるバックボーンや信頼性を担保する、という観点において、全く取り扱う商品が違うので誤認されるはずが無い、という点にある、と思う。
まさか、とは思うが、池田模範堂がチョコレートを販売したり、タカラマスタードを販売している平群商店がシステムキッチンを売り出したり、逆にタカラスタンダードが練りからしを売り出す可能性は全く無い訳で。
・・・あ、明治は医薬品もやってるので、塗り薬のかゆみ止めとかやり始めたら面倒なことに・・・。
ま、それはさておき。
だから似ている、ということ自身が直接の問題なのでは無いような気がするのだ、オリンピックの件は。もし、このデザインが日本国内で開催されるもの、例えば国体とかインターハイの象徴であれば別にベルギーの劇場のものと似ていた所で示される対象が全く違う訳で。世界各国の方々が集まるオリンピックの象徴とした際に、ベルギーの方がオリンピックに来て「あ、なんか劇場のロゴデザインに似ているね」だったのが後に、ベルギーの方自身も世代が変わって行って「あ、劇場のロゴデザイン、数年前に開催された東京オリンピックのものに似ているね」となってしまうと、IOCに提訴したとのお話のデザイナーさん自身の尊厳を損なうことになるのでは?という点が問題な気が自分はしている。自分は「模倣していません」という件のデザイナーと同様、創作者は自分が「模倣者」である、と言われること程屈辱的なことは無いと思う。なおのことオリジナリティに対しての時間的優位性があればある程。
つまりオリンピックの件においては、そのデザインが示す意味、意義を踏まえた上での審査が必要であった、という点で、応募者よりも審査員の説明責任が求められるのでは無いか、という横尾忠則氏のご意見に自分は全面的に賛成。
五輪のエンブレムの件。もし審査の段階でベルギーの劇場のロゴの存在に気づいていたら、採用作は「似ている」ということで選外になったはずだ。調査の網の目からこぼれたための入賞だと考えると応募者に責任はない。むしろ選んだ審査員側にある。審査員の説明が必要ではないだろうか。
-- 横尾忠則 (@tadanoriyokoo) 2015, 8月 6
落選作にいくらいいのがあっても、何かに似ていれば採用はされない。それだけでなく盗作問題にもならない。採用作に関しての真偽は応募者より、むしろ審査員の問題だ。http://t.co/iWHt6bhLq9
-- 横尾忠則 (@tadanoriyokoo) 2015, 8月 6
この横尾忠則氏の発言についても、相当反論・バッシングはあるみたいだが。ただ、それだけ審査員には真偽を見極める感覚や目が求められるということだろう。
冒頭にも書いたように、佐野某氏についての過去作品においてモチーフが似ているものがたくさんある、とまとめサイト等にも上げられている。自分の感覚からすれば、「確かになぁ」もあれば「それも似てる扱いする?」もあるけど。ただ、デザイナーを目指している人もしくはデザイナーの方からすれば、「こんな類似(場合によっては模倣)がまかり通るなんて」と苦々しく、また憤怒の気持ちになるのは仕方がないのかもしれない。自分達まで模倣者扱いされかねない、地位を落としてくれるな、と。でもまぁ、それだけ某氏の名前が使い勝手の良い、響きとしての「ブランド化」してしまっているところもあるのだと思う。音楽の世界だって、スポーツの世界だって、どんな業界だってそういう存在を作りたがる風潮はあるように思うので。
ただ、トートバッグの件はいただけないな。仮にアートディレクターとしてデザイナーを束ねていたのであれば、アートディレクターが前述で言う審査員の役割をしなくてはいけないだろうし、サントリーに○○デザインと書かせることが、一般消費者に対しての誇大広告につながるだろうし。何より、サントリーは佐野某氏と「デザイナー」としての契約をしてなかったのだろうか、というのは興味深い所。
【追記1】
先日、テレビから流れてきた某アイドルのサビが、某海外の有名グループの一節にそっくり(と感じて)びっくりした。ま、こんなことは昔からある話で(書いても良いと思う一例から、Night Rangerの「Don't tell me you love me.」のイントロとしぶがき隊の「Zokkon命(Love)」とか)。でもこれらの場合、日本の音楽市場規模と世界の音楽市場規模を比べた時に、どちらがパクリ元でパクリ側かが明白であり、かつ両者の商品性を邪魔することが無いから、後は、パクリ側の製作者が「いぇーい、これパクってやれ!」と極めて天真爛漫にパクッたのか、プロデューサーやA&Rに「違うよ、そんなんじゃなくて、例えば、○○の△△みたいに・・・いや、もっと近づけて」などの指示を受けて、尊厳を損なわされながらも嫌々やったのかにもよるよな、と思う。ただこれからはSoundCloudとかで発表してたら日本と世界の逆転はあるのかもしれない。登録日のタイムスタンプでどちらが先かは明確にはなるけど、有名になり度合いは変わるかもしれない。
【追記2】
今週号の「週刊モーニング」の「インベスターZ」にて種子島の鉄砲伝来から既に模倣が始まり、日本の産業は模倣により発展してきた面がある、なんて話が書いてたな。ただそれだけ。これも昨今の「パクリ」の話からネームは起こされたのだろうか、とか思ったり。
==========
【余談】
普段と違って、真面目に考えて書き過ぎて疲れたので小ネタ的に。
大阪に豚まん(※関西以外の地域で言う肉まん)を扱っている会社で、「株式会社蓬莱(俗に551蓬莱)」と「蓬莱本館」という会社が2つあります。
新大阪駅にも、それぞれのお土産品販売コーナーがありますが、その2社は別会社で、当然中身も異なります。
みんなで共同で始めた店がそれぞれ分割独立した、ということで今もある意味(?)仲良く同じ名前を使い続け、同じカテゴリーの商品を売り続けているのは、個人的には微笑ましく思っています。
両社のページには、きちんと違いを説明するページが。
■551蓬莱
http://www.551horai.co.jp/question/yokuaruquestion.html#15
■蓬莱本館
http://www.horaihonkan.co.jp/qanda/index.html
これも個人的にだけど、蓬莱本館さんの「それぞれがそれぞれの「美味しさ」を追求しております。」という文章は好きだなぁ。
味はどちらも美味しいと思います。デザインの話とはだいぶかけ離れましたが。