「マルチアカウント」「マルチプロジェクト」を回すための極意
私が最初のコンサルティングファームをやめることになったのは、「セールスできない」=「ビジネススキルがない」と宣告されたからです。異論もありません。私には当時その力がありませんでした。
「セールス」とは、2つのスキルを指します。
1.既存クライアントから複数のプロジェクトを獲得できるようになること
2.既存クライアントに加えて、新規クライアント(=追加プロジェクト)を獲得できること
当然、書いた順に難しいスキルです。
ファームに勤めるほぼ全ての人は、まず、フルタイムアサイン(1つのプロジェクトに100%従事)することになります。これが完遂できることは大前提です。
その後、少しずつ、そのプロジェクトであるオーナー=クライアントから、別のプロジェクト機会を並行して獲得するプロセスを経験することになります。これは、帰属する既存プロジェクトでの拡販機会を経験してからが一般的なのですが、必要なスキルセットは大きくは違いません。なので、既存プロジェクトでの拡販機会を上手にさばける人ならば、タイミングや運さえ味方してくれれば、既存クライアントから別のプロジェクト機会を並行して獲得する経験を重ねることができます。
ここであなたは、既存クライアントではなく別の新規クライアントから仕事を頂戴する基本スキルを備えたことになります。そしてギアを上げていければ、そのスキルが開花し、新規クライアントを追加できるのです。これを「マルチアカウント」といいます。
複数のクライアント(アカウント)から1つずつプロジェクトを獲得できても「マルチプロジェクト」ですが、「マルチプロジェクト」は「シングルアカウント」でも達成できます。経験的に、「シングルアカウント&シングルプロジェクト」はある意味誰でもできるはずのことですが、「シングルアカウント&マルチプロジェクト」「マルチアカウント&マルチプロジェクト」ができるようになる成長比率は経験的に、30:5:1くらいに厳しいクライテリア(条件)です。それくらい複数のクライアントや多数のプロジェクトを回すことは難しいです。
経営者視点で言わせてもらうと、フロントメンバーが「シングルアカウント」「シングルプロジェクト」だった場合、そのメンバーがBP(協力会社)を抱えて増やしていってくれない限り、売上も利益も増えようがありません。せめて「シングルアカウント」「マルチプロジェクト」、できればその何割かが「マルチアカウント」「マルチプロジェクト」を達成できれば、経営の光がみえてきます。
加えていえば、経営者を目指したい人は、「マルチアカウント」「マルチプロジェクト」ができる人であるべきです。それができない人は「マルチメンバー」を抱えることができないからです。
経営者にとって、「マルチプロジェクト」は当然、「マルチアカウント」は成長への必然なのです。ファームに勤めていたときはまだまだ実感が足りなかったなと思うのですが、起業家精神(Entrepreneurship)ある人はこれが必須なのです。「たくさんの顧客を抱え、個々のニーズを捌いていける」スキルが求められます。どんなにすごい技術スキルやビジネスセンスがあっても、商売であるならば、それを開花させる「マルチ・セールス」のスキルが求められるのです。マルチクライアントは必然、マルチプロジェクトかどうかはわかんないけど、例えば商品やサービスだったら、或るクライアント先に複数部署にそれをセールスができて、且つクライアント先は複数多数でなければならないのです。
たくさんの嫌味とパワハラ・モラハラを言われながらも、かなりの部分正論だよなと思って、耐えて精進してきました。今ならその先輩(あえて上司とは言いません。笑)に勝てるとまでは自信ないけれど、やっと経営者としてちょっとはマシになってきたと思ってます。起業を目指す人たちの参考に少しでもなっていただければ幸いです。