続「採用基準について。」
20年近く、そして弊社でも7年くらい勤続しているうちにビジネス環境や人材特性等いろんなものが変遷していき、・・・そろそろだいぶ前に定義した「採用基準の基本形」も改良する時期に来た気がしています。
というわけで、実はもう、今年から基準をバージョンアップしました。企業機密部分は申し訳ありませんがお明かしできません。というわけで、可能な範囲、その考え方をご紹介します。
見直しの起点にしたのは、著書「SEからコンサルタントになる方法」でも触れました、コンサルタントとしての資質要素をそのスペルにちなんで私独自の経験則や理論で整理した、次の評価の視点(10の基本軸)です。
C courteous 礼儀 言動が礼儀正しいこと
O originality 独創力 独自のアイデアを盛り込めること
N neutral 中立性 中立的な意見が言えること
S specialty 専門性 どこかに専門性を持っていること
U usable 実現可能 実現可能な提案ができること
L leadership 統率力 率先して周囲を牽引できること
T technique 技術力 実務面に匠があること
A attractive 魅力 魅力ある人格を備えていること
N notable 著名 何かの分野で有名であること
T timely 適時性 スピーディに成果が出せること
これらをベースに、「基本知識やスキル」と「マネジメント能力」の評価項目を再定義し、10の視点との関連性を紐づけした上でその評価基準を再定義しました。
残念ながらその内訳はさすがに紹介できませんが、視点別にどういうことがポイントかは紹介できますので、下記に記しておきます。参考になる人はご活用ください。
(さすがに応募結果の保証はできませんのであしからず・・・苦笑)
l 応募してくる皆様ほぼすべての方が、聞けば「自分は言動が礼儀正しい」と自信を持っておっしゃいますが、所詮これは他人の評価のみで作られる「印象」です。早い話が面接や応募RESUME、その他で「礼儀正しさ」を証明するということは、イコールいかに「強く印象づける」ことができるかどうかです。平凡では価値がまったくありません。どのくらいその方が礼儀を突きつめて日頃考え、工夫していて、それをどう「さりげなく」アピールしてくるかに、とても興味があります。
l 「独創力」とは理論や経験知等、他者との相対比較もなく独自のアイデアを定義することではありません。それはただの我流といいます。受け入れてはもらえてもリスペクトされるとは限らないし、差別化要因にも大抵はならないでしょう。「ユニーク」とは違うのです。ユニークではなくて差別化要因となっていることを比較論で検証済みであることが説明できなければなりません。あるいは観た瞬間その独創性が相手に悟れるくらい単独で考え抜かれていることが大事です。ここを説得力あるメッセージで説明仕切れるか、に注目して評価をしています。
l 「中立性」は採用評価時には「客観性」に近い基準で診られています。すべての物事に対して中立的な意見が言えることに着目しています。たとえば過去の対クライアント、対プロジェクトでご自身の功績を説明いただくときに、自分をいかに評価者にせずに客観性を持った尺度、基準で、つまり他者を主語にしてそれを評価コメントできるかをみています。これは実際の仕事で自身が主役として観られないときことの方がコンサルタントの場合は多いわけで、そこでの耐性を検証しているとも言えます。自身が主語で多くを語る人だと、チームワーク能力適性に「?」がついてしまうことがあります。
l 新卒でなければいわゆる「経験者採用」では何かしら「専門性」あって当たり前です。最初に専門性をどれだけ丁寧に相手に証明できるか、その説明能力を観ています。ただ本質的に大切なことは、その専門性がどのように相手(例えば当社)に具体的メリットをもたらすことができるのか、その効能や、波及期間(結果を出し始めるまでにかかるリードタイム)を問うているのです。つまりは相手(当社)に対する探求度合、興味、事前分析の度合いを調べているのです。その奥底の評価目的をわからずに自己の専門性を語る人は非常に薄っぺらくてプレゼンがマスターベーション(言葉が汚くてすみません)に終わることが多いです。私は絶対採用しません。
l 専門性にも関連しますが、採用プロセスで既に評価側は貴方の「提案力」を求めています。提案を問うからには「実現可能」であることが重要です。採用担当が必ずしも「提案」を求めないかも知れません。それでも最終評価者は「提案」を求めています。私達はルーティーン・ワーカーを求めてはいません。フロントに限らず、ミドル・バックオフィスの従業員にすらこれを求めたい。企業は「帰属する人間の知恵を結集させて」ビジネスを創り、育てていきます。そこへの参加意思を問うているのです。つまり、「気持ち」や「熱意」が問われているということです。
l 統率力については、正直面接等の採用プロセスでは、全体としての雰囲気やそこで聞いている内容のロジカルな信憑性から、つまりその人を素直な気持ちでうわべから評価することによって、率先して周囲を牽引できる人材かどうかを判断する以外ないのが正直なところです。逆に言えばロジカル・プレゼンテーションの技量は一番ここに問われているとも言えます。経験的にロジカル・シンキングの素養は、せいぜい1つの質疑応答で検証しないと他の評価要素が判定できません。なので、私が評価者ならまさにこの視点について、その素養を強く求めます。
l 技術力も意外と面接等の評価プロセスにおいて検証がしづらい要素です。さすがに生の成果物をみせてもらうのは守秘義務に反しますし、対話だけだと評価に限界もあります。そういう意味では統率力と同様の苦しさはあります。ただ、実務面の技術証明は、プレゼンする側にとってそう難しくはないはずです。自分の匠な部分を制限時間内で、求められている観点にしたがい、徹底的に具体的アピールをしてほしいです。ここのプレゼンの仕方から、私達はその人の潜在的な癖、例えば冗長である、自尊心が高い、打たれ弱い、面倒見が良くない、スピード重視のあまり正確さにかける、等々のプロファイリングをしています。
l 魅力ある人格を備えていることは、プロセス全体から総括して判断をしています。魅力について本人にダイレクトな質問もしづらいですしね(まああえてやるときもありますけど)。こればっかりは我々もいくらか採用のプロだったりもしますので、完璧とまでは言えないけれど、それなりに眼力もあり、だから一番のアドバイスは「自然体」で臨んでもらうことです。下手に飾ったり工夫をするとマイナス評価になります。自分の目が届かないSCENEにおいてどんな人柄を普段演じるタイプなのかを評価したいのです。外見や言葉遣いはもちろん重要ですが、総合的に、すべてのたち振る舞いのいろんなところから漏れだしてくるその人の人間性部分を、極めて冷静に観ているのです。
l 著名と言う観点は、自己アピールは結構なことですが、最終的にはこちらが独自で調査・分析して評価します。自己アピールはそこにいわゆる「ファスト・パス」を提示してくれる点ではありがたいですが、そこで評価は完結しません。端的に言えば、「リファレンス」をとって、何かの分野で有名であることを検証しています。第3者の意見から当人の著名度合について客観評価をしているのです。そういう意味ではリファレンス先を紹介できないのはつらいですね。変な言い方になりますが、そういうビジネス上の友人・知人を必ず採用応募前にしっかり構築・維持しておきましょう。ただ、我々もそれなりに「手練れ」ですから、変に細工(口裏合わせ)はしない方がいいです。よほど入念に準備しておかないと、下手にそれがばれると評価のプラ・マイが反転しますよ。
l 最後に「適時性」についてですが、スピーディに成果が出せるかどうかは、大抵は技術力とあわせて評価しているような気がします。ある程度具体的なやりとりの中でないと検証しづらいので。ただ時々誤解されてしまうのですが、スピーディは「適時性」の1要素と訳すと間違いもないのですが、単に簡潔だったり早口だったり流行の言葉遣いだったりと、短絡的に勘違いされてそこをアピールしようとする人もいますが、正直ちょっと困りものです。「適時性」は「タイムリー」という意味ですから、求めているアウトプットが求めているレベルで求めているタイミングで出せるかという、本質的な業務処理能力を問うているのです。つまりは、具体的な過去の体験談や事例等で証明してもらいたいところなのです。
以上、前回ほどには本基準で採用活動を修練していませんが、またある程度バージョンアップしたらさらに続編を紹介したいと思います。