10の仕事が8しか完成できない部下をどう救うか
戦略企画の仕事の場合は、企画が完成しなければその企画を実行しなければ済みます。ですから実行を確実にするために、企画は満点を目指すのではなく確実に80点を目指せとよく言われます。
対して、ルーティーン仕事は80点で完了とすることができません。10のルーティーンはすべて満点で期限内に終わらせることが必要です。
少し乱暴なたとえになりますが、飛行機を飛ばすには、パイロットから地上整備士までがきちんと個々のルーティーンを決められた期限の中で完璧に、つまり満点の成果として完了させなければ、旅客は出発地から目的地に無事着くことができません。中途半端に80点なんかを目指されたら、機内食くらいならまだしも、下手をすれば事故が起きることだってありえます。
ですから、ルーティーンはすべて完璧に完了することが求められます。
もし企画段階であれば、企画が完了しなければその飛行機ははじめから飛ばない=航空路線が存在しないということになりますから、乗客は最初から飛行機ではなくて別の交通手段で目的地まで行くに違いありません。
また仮に80点の企画で終わる場合は、実行面では満点の企画に比べていろいろ難儀もあるでしょうが、機内食が多少おいしくないとかフライトスケジュールがいくらか乱れることがあるとか、事故的なリスクだけはきちんとヘッジしつつもサービスの提供はできる可能性は高いでしょう。要は漏れる20%にクリティカルな問題が含まれなければカバ―のしようがなくはないということです。
というわけで、実行段階においてルーティーンがすべて完了できないということははっきりいって思いっきり大問題です。
実は少々実例をぼかして解説していますが、ある部下がどうやっても期限内に10のルーティーンを8つしかこなせないことがわかり、弊組織内でマネジメント会議をしました。
一応は私がトップマネジメントなので、私が判断します。私は1つの結論を出しました。
「10のうち終わらない2つと終わる予定の最後の1つ、合計3つのルーティーンは部下以外のメンバーでバックアップして10すべてのルーティーンを約束通り完了させる」
ルーティーン処理における鉄則は「全てを期限内に約束レベルの品質で終わらせること」です。
ですから、間に合わないとわかった2つは当然バックアップしますが、「10のうち8しか終われない」と相談をうけた時点で、最後の8つ目の完了も実際あやしいかもしれません。なので8つ目の作業もバックアップをします。
これには2つの意味があり、10のルーティーンを全部完了させてクライアントとの約束を果たしたいという思いと、8つ目の作業成果を比較することで部下とその他弊社員の技術力の差をはっきり評価することもでき、前向きなノウハウの交換も可能になります。
というわけで、この計画をたてているところです。
が・・・実はもう1つの悩みがあります。当人の業績評価です。
以前のエントリにも書いたように、実はこの部下は「できません」の相談の際に「どうやったら全部できるか」を積極的に考えようとしませんでした。自分ひとりではどうにもならないときに「どうやったら全部できるか」を考えることはとても大事なことです。
当社としては、そして事業責任者の自分の思いとしては、終わらないことが確定した2つをバックアップすることは企業運営として当然の務めですが、8つ目がどうなるかは正直心配です。
バックアップはするんですが、8つ目まではちゃんと完了させてほしいなあと切望していたりします。
「死んでも約束は守る」なんて根性論ははっきりいって大嫌いです。ですが、建設的に「できないことをどうバックアップするか」を真剣に考えるとき、「8つは終われる」という見積もりをいかに実現するか、無事達成するかが当人の手腕やこれまでの経験値の集大成として期待されるところです。
どんなに精緻に見積もっても、予想外のインシデントによって計画通りにルーティーンが完成できないことは残念ながら起きえます。ですが、管理者としては、それがとにかく起きないことを願うばかりです。
人間付き合いというか、人間商売というか、温情を否定もできませんけど、公平性の観点から業績評価はクールに徹するしかありません。
まさに「祈る」「信じる」という話です。胃が痛い・・・苦笑