IT視点から見た石田衣良のお薦め小説
今日は金曜日ですね。週末に気楽によめる小説のご紹介です。
石田衣良はヒット作を量産する小説家です。『池袋ウエストゲートパーク』シリーズが有名ですが、他にもおもしろい小説があります。ITが重要な役割を持って登場する作品をいくつかご紹介します。
アキハバラ@DEEP(2004年11月 文藝春秋 / 2011年7月 徳間文庫)
秋葉原でホームページ制作会社を始めた4人の少年たちが、超ハードワークをこなして独自の検索エンジンを開発し、ネット界隈で話題になります。ある日4人の会社をIT業界で急成長している会社の社長が訪ねてきます。そこから検索エンジンをめぐって大騒動になります。
ダースベイダーのような悪役のIT会社社長は、誰がモデルになっているかを考えながら読むと楽しめます。
明日のマーチ(2011年6月 新潮社 / 2013年1月 新潮文庫)
この作品はリーマンショック後の派遣切りが話題になった時期を背景にしています。
山形県にある派遣先のカメラ工場で派遣切りにあった4人の若者は、ちょっとした気まぐれから東京まで歩いて戻る旅を始めます。はじめは誰も知らない4人だけの旅でしたが、メンバーの1人が旅の様子をテーマにしたブログを始めたことがきっかけでメディアに取り上げられるようになります。目立つ存在になったことが予想もしない事態を引き起こし、一時は再起不能かと思われますが、それを乗り越えてさらに歩き続ける4人が社会現象になっていくストーリーです。
私はロードムービーやロードノベルと言われる旅モノの話が好きです。この作品は山形県から新潟県を経て長野県に至るまで道中の海、山、空の描写がすばらしいです。日本の地方の夏はまさにこんな感じです。地図を見ながら読むと、自分も旅をしているような気持ちになれます。
カンタ(2011年9月 文藝春秋 / 2014年5月 文藝春秋)
文庫で出版されている中では一番新しい作品です。
2組の母子家庭で子供の頃から兄弟同然にいっしょに育った2人の男の子が主人公です。イケメンで優等生の耀司と発達障害を持つカンタです。大学生になった2人が渋谷の交差点で信号待ちをしているときに、大きな利益を生むひらめきが降りてます。携帯ゲーム会社を興した2人は短期間に大金持ちになります。話題のIT企業になった2人の会社に近寄ってくる闇の影…
ネタバレすると、本作はライブドア事件が背景になっています。そういえば、あの事件のときは関係者が沖縄で不審な自殺をしていました。さて、小説の結末は…
文庫本のあとがきを、ホリエモンこと堀江貴文氏が書いているのが、おもしろいです。
40―翼ふたたび(2006年2月 講談社 / 2009年2月 講談社文庫)
そのホリエモンが塀の中で偶然読んだ作品が『40―翼ふたたび』です。本作はオムニバス形式になっていて、その1つはホリエモンをモデルにしたと言われています。
他の3作の主人公が若者であるのに対して、本作の主人公は40過ぎの中年男です。転職に失敗して半分やけになって立ち上げたWebサイトがきっかけで、次々とやってくる妙な依頼に応えていくうちに、一つの方向性が見えてきます。最後はちょっと感動するハッピーエンドです。
石田衣良の小説は、読み出すと最後まで止められないおもしろさがあると思います。休日の気軽なお楽しみにいかがでしょうか。