アマゾンのKindleで自己出版するハードルはとても低くなっているのです
火曜の夜にある団体主催のセミナーにて「Kindle本出版について理解しよう」のタイトルで講師をさせていただく機会がありました。それなりの金額の有料セミナーでしたが、会場の定員いっぱいの10名を超える参加をいただきました。途中で熱心な質疑応答があって時間が足りないくらいでした。
日本でアマゾンのKindleがサービスを始めたのは2012年の秋です。日本語のKindleストアの開店と同時に、KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)の仕組みを使って、個人が自分で書いた本をKindle形式の電子書籍にしてKindleストアで販売できるようになりました。
KDPがはじまった直後は、正しいKindle形式のファイルに変換するノウハウが不明だったり、アマゾンのツールの日本語対応が不十分だったりして、なにかとたいへんでした。
初めてKindleで本を出版するときに、大きなハードルが2つあります。
1つは、KDPの契約が米国アマゾン本社が契約相手となるために、米国で発生した著者の印税(KDPではロイヤリティーと呼びます)に対して米国の所得税源泉徴収を免除してもらう手続きが面倒なことです。英語のフォームを提出したり、国際FAXや国際郵便で送る必要があったりと、一般の人には経験のない手間があります。
もう1つは、本の原稿を正しいKindle形式のファイル(.mobiのファイル)に変換する作業が面倒なことです。KDPサービス開始当初は、日本語のWordファイルはアマゾンで「試験的な扱い」になっていて、Wordで作った本を変換して販売するのは不安がありました。より確実に作るために電子書籍の業界標準であるEPUB(イーパブ)形式で作ろうとすると、Sigil(シジル)などのEPUB編集ソフトウェアの使い方を覚える必要がありました。EPUBを使いこなすには、HTMLやCSSのスキルがそれなりに必要になります。
現時点では、書類手続きの事例が蓄積されたことや、一部の手続きが電子化されて国際郵便の必要がなくなったことで、手続きのハードルはかなり低くなっています。また、2013年秋に日本語のWordファイルがKDPで正式にサポートされたことで、Sigilの使い方を覚える必要はなくなりました。この2月にバージョンアップされる「一太郎2014 徹(てつ)」を使えば、一太郎で編集した原稿をKidle形式に変換して画面でプレビューするところまで一連の流れでできるようになっています。
今や電子書籍を自己出版するときのポイントは、Kindle形式のファイルに変換するテクニック(作る)ではなく、読者に読んでもらえる原稿を書くこと(書く)と、出版後にどうやって販促していくか(売る)に移っています。ようやく従来の紙の出版と同じようになってきたと言えるでしょう。
これまでKindle本自己出版のセミナーを何度かやった経験では、セミナーの後に実際に自己出版した人は参加者の10人に1人くらいのように思われます。ブログを誰でも無料で始めることができると言っても、書く人は1割以下で残りの9割は読むだけというのに似ています。Kindle自己出版も本当に書いて出版する人は限られるのではないでしょうか。
人に読んでもらえるネタを持っている人は、これからがチャンスです。Kindle形式のファイルに変換するのが面倒というのであれば、他の人に頼めばいいのです。まず1冊出版するところからやってみてはいかがでしょうか。
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