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スパコンと新東京タワーは目的が重要

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事業仕分けの対象になっている国産次世代スーパーコンピューター(スパコン)開発プロジェクトに、関心が集まっています。複数のオルタナブロガーが、スパコン関連のエントリを書いています。(エントリ数が多いため、個別にリンクするのは止めました。こちらからまとめてどうぞ)

私はスパコンの分野は全くの素人です。以下は一人の納税者の視点で書いています。

私のスパコンのイメージは、いまだにクレイリサーチ社のまま止まっています。円柱状の筐体の周りを、まるでベンチのような低いドーナツ型の箱が取り巻いています。あのドーナツの中は何かが入っているのでしょうか。上に座ったりしては、いけないのでしょうね。

いろいろな記事を読んでわかったことは:

  • スパコンはベクタ型とスカラー型がある。
  • ベクタ型は同時並列に複数のデータを処理することができるパラレルタイプ。
  • スカラー型は一度に一つづつやるシリアルタイプ。
  • スカラー型は市販のGPUやPlayStationを大規模に使って作ることができる。
  • スカラー型の方が開発費が安いが、スカラー型ではできない種類の計算がある。
  • NECはこれまでベクタ型を、富士通はスカラー型を開発していた。
  • スパコンプロジェクトは、NECのベクタ型と富士数のスカラ型をいいところ取りしたハイブリット構成を目指していた。
  • NECは事業仕分け以前にすでにプロジェクトを離脱している。(以前は日立も参加していたがすでに離脱)
  • 現在の世界のスパコンは、スカラー型が主流。
  • NECは今後は独自にスパコンを開発する方向。インテルとの共同開発でスカラー型もやるらしい。

事業仕分けによるスパコン開発の事実上の凍結に対して、それぞれの立場から賛成や反対の声が上がっています。

私は科学技術振興に予算を使うべきと考える立場です。「世界最速のスーパーコンピューター」と言われればワクワクします。ただし、国産スパコンプロジェクトに対しては、疑問に思っています。

そもそも何を目的としてスパコンを開発するのでしょうか。その結果から得られる有形および無形のメリットは、費用を上回るものでしょうか。

ハイブリット構成で世界最速を目指して技術力を高めることは、プロジェクトのスタート時点では意味があったかもしれません。しかし各社が離脱してスカラ型の富士通だけになった時点で、プロジェクトそのものを見直すべきだったのではないでしょうか。

私はスパコンで世界一になることに、あまり意味はないと考えます。世界一は常に後から追い越されるものです。スパコンで何を計算するか、それによって何が得られるかが重要です。

都内に建設中の新東京タワー「東京スカイツリー」は、中国で建設されているタワーより低くなりそうなことがわかって、急遽アンテナ部分を延長することにして、634メートルに変更されました。とりあえず完成時点では世界一になれそうですが、より高いタワーができるのは時間の問題でしょう。いつまでも世界一でいられません。

東京スカイツリーは、首都圏の地上デジタル放送の電波塔という主目的があります。世界一であるかどうかは、副次的な目的です。世界一でなくなっても、全然困りません。

スパコンプロジェクトの目的が、先端技術開発なのか、研究の道具なのか、不明確に思われます。「両方だ」と言う声が上がりそうですが、主たる目的は一つにしないと、結局どっちつかずになってしまうでしょう。

私は「スパコンは使ってナンボ」だと考えます。独自開発で世界一である必要はないです。道具ですから、海外から買ってもかまわないと思っています。

企業のシステム構築においても、似たような状況になることがあります。

ERPでシステムを構築している間に自社や周りの環境が変わってしまい、「本当にこのまま進めてよいのか」と疑問を持ちながら、誰も止めることができなくて、構築を続けている会社があります。システム構築の本来の目的は、コスト削減や、今までできなかったことを実現する、等であるはずですが、こうなるとシステム構築そのものが目的になっていると言えます。

八ッ場ダムの例を挙げるまでもなく、一度始めてしまったことを途中で止めることはなかなかできません。迷いが出た時は、そもそもの目的は何だったのか、を改めて考えてみるべきではないでしょうか。

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