【OpenSource World】CMSは百花繚乱
OpenSource World 2009のトリは、.orgパビリオンで1時間以上にわたって行われた「CMSパネルディスカッション」でした。
各オープンソースCMSの代表(開発者/ベンダー/ユーザ)が、それぞれのCMSについて熱く語りました。
パネルディスカッションに参加したCMSは、全部で10種類でした。一言ずつ一回りするだけでも時間がかかるので、CMSごとにまとめてお伝えします。展示会場の真ん中で、まわりの音の中でメモを取っていたので、間違いがあるかもしれません。何かありましたら、コメント欄で優しく訂正お願いします。
司会の質問項目は、
- どんなCMSか?
- 他のCMSにない特徴は?
- ここ1年で変わったところは?
- 最後に言いたいこと?
でした。それではTwitter風につぶやいて行きます。
■concrete5(コンクリートファイブ)
- ブロックを積み重ねるようなワープロ的なイメージで画面を作っていく。
- 画面を見ながら、ページの上で編集できる。
- ITが苦手な人でもわかりやすい。
- 2008年6月からオープンソースになって無償になった。
- 本家でフォーラムが動いている。日本では今月中に始まる。
■Drupal(ドルーパル)
- アプリケーションを作るような感じ。
- ロール管理などユーザ管理の機能が強力。
- 魅力的なテーマがまだ少ない。
- バージョン6でテンプレートエンジンが柔軟になった。
- 他のアプリとのAPIがある。
- バージョン7リリースに向けて動いている。
- 新バージョンの重点は、ユーザエクスペリエンスの向上。
- ユーザインタフェースの専門家を雇って、リサーチして改良している。
- 管理画面の98%が日本語化済み。一部に誤訳が出てしまっている。
- 海外では大手ユーザの事例もあるメジャーなCMS。試してください。
■eZ Publish(イージーパブリッシュ)
- エンタープライズ向けに、MS WordファイルをHTMLに変換する機能や、Salesforceとの連携、Indesignとの双方向の出し入れの機能がある。
- ワークフロー、ロール権限などのガバナンスを効かせることができる。
- ベースはeZ component。
- PHPだけでなく、.NetやJavaと連携できる。
- 例えば、MS Officeで保存するとWebページが生成されるようなことができる。
- 管理画面もテンプレートの一種であり、自分たちで管理画面を作れる。
- バージョン4.1が3月に出た。
- カーネルに対してもオーバーライドできるようになって、安全にいろいろできるようになった。
- 日本での事例が増えてきて、日本でのノウハウがたまってきた。
- CMIS(標準規格)準拠でERPなどとの連携を強化。
- ESI(コンテンツの部分キャッシュ)や独自NFSによるクラスタリング対応。
- CMSはまだ普及していない。競合は、”手作り”だと思っている。
■Geeklog(ギークログ)
- PCサイトと携帯サイトを一度に作れる。PC用のURLで携帯にも対応できる。
- SEOに強い。Googleランク4や5のサイトはすぐ作れる。
- 携帯のアクセスをGoogle Aanlyticsでカウントできる機能を付けた。
- 公式サイトのアクセスの9割は携帯から。
- コミュニティーベースの活動が活発。
- 参加して発表すると反応があって楽しい。よりよいものができる。
- コミュニティーが日本で活発。
- パンくずリスト、階層メニュー、コメント承認機能などを、日本発で本家に取り込み。
- テンプレートエンジンの新バージョンでは、表示速度が120%にアップした。
■Joomla(ジュームラ)
- レゴのような部品の組み合わせで画面を作る。
- 必要な機能の90%くらいは標準で用意されている。追加モジュールの必要がない。
- 一般向けのインタフェース。60歳の社長でも使いこなしている。
- 操作性が優れている。
- 日本では、言語・翻訳の問題があって、知名度はこれから。
- Joomla Japanフォーラムに参加者が増えている。
- 5年間使っている。中小企業の社長向きかもしれない。
- 年内にバージョン1.6のベータ版を予定。
- バージョン1.6では、複数のサイトの管理や、部門ごとの管理権限の細分化などの大規模サイト対応の強化。
- CMSアワードでJoomlaは1位から2位になってしまった。Drupalは良きライバルだと思っている。
■Magento(マジェント)
- CMSと言うよりはECプラットフォーム。
- ベースはZendフレームワーク。
- 標準で多店舗の展開ができる。
- Googleとの親和性のよいECサイトを作れる。
- バージョンアップが早い。世界中でプラグインを開発している。
- EC分野では、Zen Cart、EC cube、OS Commerceがある。
- Googleで調べた結果では、ワールドワイドではこの1年でOS Commerceを追い越した。
- テンプレートのカスタマイズを支援する機能がある。
- 他のECパッケージよりデザイナーに優しい。
- 日本語の翻訳に苦労している。
- 他のパッケージと連携できるようになった。
- プラグインが増えて、使い勝手がよくなった。
- 日本のコミュニティーに参加者が増えてきた。
- EC cubeに追いつくように頑張る。
- 特にバージョンアップが激しいため、翻訳を手伝ってくれる方を募集中。
- 本家のWikiの情報も日本語で提供したい。
■MODx(モッドエックス)
- ツリー構造のページ管理。
- Dream Weaverとの親和性が高い。Dream Weaverのデザイナーは1日で覚えられる。
- ドラッグ&ドロップのGUI。Ajaxにも対応。
- デザイン性と操作性を追求。
- 本家が各言語のコミュニティーを重視している。
- デザインに強い、デザイン重視のデザイナー向きCMS。
- プログラムを知らなくてもカスタマイズできる。
- Movable Typeを使っていたデザイン会社が注目している。
- 本家公認の日本のユーザ会を作った。
- 日本語版ディストリビューションを活発化させている。
- Google Projectで公開されている。
- デザイナー、Webマスターに見て欲しい。
■TYPO3(タイポスリー)
- 複数サイト/複数ドメインを管理できる。
- ワークフロー、 バージョン管理の機能がある。例えば、昔のコンテンツにロールバックできる。
- 1997年に開発が始まり、98年にリリースされた。この中で一番古いかもしれない。
- TYPO3のバージョンは、V4.3の次はV5になる。
- デザインとPHPプログラムの連携をTYPOスクリプトで書く。
- スクリプトを知っていれば、デザインとプログラムをつなぐことができる。
- デザインの自由度が高い。
- もうすぐOpenIDに対応する。キャッシュのしくみを強化する。
- デザインを見ながら編集できるフロントエンド編集の機能追加。
- MagentoやSugarCRMと連携できる。
- 全国各地でサポートしてくれる方を募集中。
- 日本語のドキュメントやマニュアルを整備したい。
■WordPress(ワードプレス)
- もともとはブログソフト。
- 最近はCMS的な使われ方になった。
- PHPがわかればカスタマイズしやすい。
- Wordbenchという地域別コミュニティーの活動が盛ん。
- 日本のコミュニティーで携帯対応。
- テーマ数が多く、デザインを選べる。
- CMSとして使える。
- SNSのプラグインがある。
- 管理画面が機能的で使いやすい。
- WordCamp(イベント)を日本で4月に開催した。開発者が来日して盛り上がった。
- ブログ、CMS、SNSと目的とインスピレーション次第で何にでもなる。
- 日本ではまだMovable Typeにかなわないが、日本語の情報が増えてきた。
- Movable Typeとどちらがいいかは、好みの問題。好きな方を使えばよい。
■XOOPS(ズープス)
- 普及は5年くらい前から。
- 社内イントラサイトの構築やカスタマイズが多い。
- 技術者に使いやすい。
- XOOPS Cubeは海外と国内のユーザが一体になって開発している。
- XOOPS Cube Legacy ver2.2を開発中。ユーザプロファイル、ファイルマネージャの拡張。Cubeを試すなら「うさぎにもできるXOOPS入門」をサイトからダウンロードしてインストールしてほしい。
私が聞いていて耳に残ったのは、”本家”という言葉でした。SugarCRMはコマーシャルオープンソースで、米国SugarCRM社が会社として開発しています。本家というより本社です。私が首を突っ込んでいるNetCommonsは、純国産のCMSですから、あえて本家と言うなら国立情報学研究所NetCommonsプロジェクトになります。同じ日本ですから、距離的・言語的な時差はありません。
海外のオープンソースソフトウェアを日本でコミュニティーを作って機能追加して行くモデルでは、海外の開発元である”本家”の動向や意向を気にせざるを得ません。このあたりは、商用ソフトの本社と日本支社の関係とも違うもののようです。CMSでは、特に携帯まわりで日本独自の機能が必須です。本家のソースからフォーク(枝分かれ)することなく、本家の次のバージョンに加えてもらえるような働きかけとコミュニケーションが必要なのでしょう。
海外生まれの商用ソフトでも同じですが、海外発のOSSは画面の日本語化作業が発生します。ソフトウェアの画面だけでなく、マニュアルや技術情報の翻訳も必要です。翻訳に時間がかかる、翻訳する人手がいない、本家よりリリースが遅れるなどの悩みがあります。日本語化は永遠の課題です。
一言でCMSと言っても、それぞれに設計思想が違います。OSSのCMS業界では、商用ソフトのような明確な競合や商売敵の関係は有りません。お互いに情報交換して、いい機能は次のバージョンに取り入れるようなことをしているとのことです。
オープンソースCMSは種類が多く、しかも新しいものが出てきます。いろいろ見て回ると面白いです。