【F1】ホンダ改めブラウンGPが大勝利
60年目を迎えたF1グランプリの2009年シーズンの第1戦、オーストラリアGPが開催されました。
今シーズンから車両のレギュレーションが、大きく変更されました。昨年まで車体のあちこちから突き出ていた小さな空力パーツがなくなりました。また、フロントウィングの角度を走行中に変えられるようになって、ウイングの幅が大きくなりました。逆にリアウィングの幅は、狭くなりました。F1関係者から「まるでトラクターのようだ」と言われるくらい、頭(前)でっかちな見た目に変わりました。
新レギュレーションのシーズン第1戦となったオーストラリアGPの予選レースは、いろいろ波乱がありました。昨年のチャンピオンのハミルトンは、予定外でギアボックスを交換したことでグリッド降格になりました。トヨタのリアウイングは強度違反とされ、グリッド降格になりました。
結局、決勝レースの最前列は、ブラウンGPチームのバトンとバリチェロの2台になりました。ブラウンGPは、昨年末に撤退したホンダチームを引き継いだ新チームで、オーストラリアGPが初めてです。
レースのスタートでバリチェロが大きく遅れましたが、バトンは1位のまま順調に周回を重ねました。レース終了直前の土壇場で、2位と3位を走っていた車が接触して2台とも棄権になった結果、終わって見れば、ブラウンGPのバトンとバリチェロの1-2フィニッシュとなりました。チームデビュー初戦で最前列スタートから1-2フィニッシュで勝ったのは、60年の歴史で記録的なできごとです。昨シーズンまでのホンダチームの成績を考えると、想像できないくらいの大勝利でした。
この好成績には運だけでなく、技術的な裏付けがあります。旧ホンダチームは2009年を勝負の年と考えて、2008年シーズンを捨てて、早くから2009年のレギュレーションに沿った車体の開発を進めていました。そのため、他のチームと比べて完成度の高い車で第1戦を戦うことができました。
結果だけ見ると、「ホンダがもう1年頑張っていれば」というifも湧いてきますが、これは微妙なようです。ブラウンGPチームは、メルセデスのエンジンを使っています。このエンジンは昨年搭載したホンダのエンジンと比べて、パワーが70馬力以上あるのだそうです。今回の大勝利は、旧ホンダチームの関係者には複雑な心境かもしれません。
今回のレースを見て、「技術開発は目先の結果だけでなく、長期的に考えて続けていかないといけない」と感じました。業績悪化で安易にリストラしたり、目先の人件費削減で派遣社員に頼ったりすることは、企業の長期的な技術開発と継承にプラスにならないことは言うまでもありません。
第2戦以降は他のチームの車の完成度が上がってくるはずです。また、KERS(カーズ)と呼ばれるリアブレーキの運動エネルギー回生システムを使いこなして、パワーアップしてくるチームが出てくるでしょう。ブラウンGPは、今はKERSを使っていません。今後もKERSを使わないのか、使うのであればいつ実戦に投入するのかが、ブラウンGPの運命の分かれ目になるかもしれません。意志決定が裏目に出る可能性もあります。
勝つためには先を見通した地道な積み重ねが必要で、一度勝ったからと言ってこれからも勝てるとは限らない、F1と企業経営の共通点を見ました。