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「インターネットはからっぽの洞窟」ふたたび

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古い本ですが、クリフォード・ストール著「インターネットはからっぽの洞窟」を読み返してみました。

著者のクリフォード・ストールは米国の天文学者で、計算機に侵入してきた国際的スパイを発見して追跡したことで一時話題になりました。その時の話を本にしたのが前著「カッコウはコンピュータに卵を産む」です。「インターネットはからっぽの洞窟」は2冊目の本です。米国で出版されたのが1996年3月、日本語版が1997年1月ですから、10年以上前の話になります。

執筆当時の米国のインターネットは以下のような状況でした。

  • 接続方法は14.4Kのアナログモデムが標準的だった。
  • インターネットプロパイダは時間課金制だった。
  • WWWは普及しつつあった。ブラウザはMosaicやNetScapeだった。
  • 検索ツールはGopherだった。YahooやGoogleはまだなかった。
  • Usenet(電子掲示板のような仕組み)が使われていた。

この時点でストールはすでに15年のネットワーク歴がありました。その経験を元に、あえてインターネットの普及に疑問を投げかけています。ストールが重視しているのは、モニタの向こう側にある仮想の体験ではなく、五感に触れる現実の体験です。このままでは、人と人との交流が薄まり、現実への関心がなくなって、社会の大切な部分が失われてしまうことを心配しています。

この本では、インターネットは本当に画期的なのか、本をデジタル化しても数十年後は読み出す装置がなくなるのではないか、コンピュータで子供の教育ができるというのは幻想ではないか、ネットワーク化が進むと図書館がなくなるのではないか、など、いろいろな視点から問題提起されています。

10年経ってあらためて読んで見ると、通信速度のように技術の進歩で解決したことがある一方で、未だに解決できていないこともあります。世の中はあまり変わっていないなあ、と感じます。そもそも人間は10年くらいでは変われないのかもしれません。

幸運なことに、不幸な予言がはずれたものもあります。ストールは、書籍が電子化されることによって、地域の図書館がなくなってしまうことを心配していました。少なくも日本では今のところ図書館は健在で、地域のコミュニティーセンターとしての役割を果たしています。

私もこの本が紙の書籍だったことで、うれしいことがありました。しおり代わりに挟んであった1997年7月21日の箱崎-成田空港リムジンバスの半券が発見されたのです。出張で米国に行った時に、この本を持って行ったようです。あの頃を思い出すと懐かしいです。もし、これが電子ブックだったら、このようなことはなかったでしょう。

技術的な内容が古くなってもこの本が絶版になっていないのは、変わらない本質について書かれているからでしょう。機会がありましたら、ご一読ください。

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