100年に一度から次の100年へ
私は日本でF1ブームになる前の1970年代からF1のファンです。当時は、深夜の番組で数レース分をまとめて放送する程度の人気のなさでした。
セナ&プロスト全盛の頃は、鈴鹿サーキットまで見に行ったことがあります。ヘアピンカーブの立ち上がりで登り坂を駆け上がって行くときのエンジン音は最高でした。
ホンダがF1から撤退するニュースが話題になっています。ホンダがF1から引き上げるのは今回で3回目です。これまでの歴史を知っていれば、それほど大騒ぎすることもないような気がします。ただ、将来4回目の参戦があるかについては、難しいと思っています。
この30年でF1を取り巻く状況は大きく変わりました。80年頃のF1は、最速をめざしてレギュレーションの中であらゆる技術革新と可能性を追求する自動車レースの最高峰だったと思います。それが特定のチームが常勝するようになる度にレギュレーションが変更されて、どんどんつまらなくなって行きました。2010年以降はエンジンが統一されることになりました。ホンダやフェラーリがコスワース製のエンジンを積んだ車で走ることに意味があるでしょうか。
こちらに今回の撤退発表の様子が詳しく掲載されています。この中で、以下の発言が印象的でした。
--先ほどの質問の確認になるのですが、第1期が終わった時には有名な「休止」という文言が使われ、第2期が終わる時も「休止」という文言が使われたと思います。今回は「撤退」となっています。これはホンダのモータースポーツに対する姿勢が変わったと理解してよろしいのでしょうか?
福井社長 ホンダのモータースポーツに対する考え方に大きな変化はないと思います。撤退という言葉をあえて使ったのは、100年間自動車産業が繁栄してきて、それが新しい100年に入ったという認識を我々は持っているんですね。従ってF1に注いできた「情熱」「リソース」「人材」、それを新しい時代に振り向けるべきだというものすごく強い意志がここ(「撤退」という言葉)に入っているとご理解していただければと思います。
--先ほどから「新しい時代に入った」と何度も強調されていますが、もう少し具体的にどういう時代なのか教えてください。
福井社長 私は、私だけではなくてホンダの内部で大体意見は合っていますが、直近の経済危機で、多少原油(価格)が下がったり、原材料(価格)が下がったりという変化はありますが、これは経済が回復すれば当然また(価格が)高い状況に行くわけです。この数年間、BRICs諸国の経済発展が非常に目覚ましく、地球上の資源の需給バランスが大きく変化したとわれわれは認識しています。
従って新しい時代では、原油が高い、原油が使えない、原材料もそれほど豊富に使えない、高い原材料を使わないといけない(という状況を考えなくてはいけない)。これは、従来とは全く違った価値観で車を作る技術が必要なのだと思っています。
100年と言えば1世紀です。1908年に発売されたT型フォードからちょうど1世紀が過ぎました。100年に一度の金融危機に続く今回の自動車の販売不振は、新しい世紀に入る前の世紀末の変化と見ることもできます。
ホンダはこれまでも革新的な企業でした。「従来とは全く違った価値観の技術で作った車」がどのようなものになるか、新世紀のホンダに期待しています。