オルタナティブ・ブログ > てくてくテクネコ >

顧客サービスとITのおいしい関係を考える

スタバではグランデを買わない

»

「スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学」という本が売れています。

この本はスターバックスの達人になるための本ではありません。いろいろな身近な事例を元に、値段の意味を「取引コスト」という見方から分析してみるという本です。

その中の一つの例として、サイズ(容量)が2倍になる毎に価格差が100円であるコーヒーがあったとして、客はどれを買うのが得かという話があります。

この本の答えは、「コーヒーを1杯売るのにかかる取引コストはサイズの大小にかかわらずほぼ一定で、店としては大きいサイズほど利益率・利益額が高い。客にとっても、サイズが倍になっても値段は倍にならないから、大きいサイズの方がお得。」ということになっています。

原価計算の言い方では、「サイズの大小にかかわらず人件費などの固定費はほぼ一定、豆やミルクなどの変動費は固定費に比べて小さい。店としては、大きいサイズほど利益率・利益額が高い。客にとっても、大きいサイズの方が単価が安くなるためお得。」ということになります。

それでは、客の立場から見て、この回答は常に正しいでしょうか。

持ち帰ってオフィスや家でゆっくり飲むというのであれば、単価が安いというのはうれしいことかもしれません。

でも、コーヒー好きだけど一度にたくさんは飲めないという人にとっては、お得とは言えないかもしれません。飲みきれずに冷めてしまったコーヒーはおいしくないです。

私がコーヒーショップに行くのは、アポイントの間が空いてしまって移動中に時間が余った時か、お客様との緊張したミーティングが終わって一息入れたい時です。

つまり、私にとってはコーヒーを飲むことは副次的目的で、暖かい店内でゆっくり過ごしたいというのが主目的です。
実際のところ、割安だからと言ってコーヒーをたくさん飲んで、ミーティング中にトイレに行きたくなるようでは困るのです。

店内で座っていられる時間は、買ったコーヒーのサイズに比例しません。ということは、価格が最も安いコーヒーが私にとっては一番お得という答えになります。「スタバではショートを買え!」です。

顧客が求めるものが、コーヒーという「モノ」なのか、リラックスする時間という「顧客体験」なのかで、お得な買い方も変わります。

あなたの会社(お店)が顧客に提供している価値は何でしょうか。

Comment(2)