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顧客サービスとITのおいしい関係を考える

加賀屋の流儀

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石川県能登半島の和倉温泉に加賀屋という旅館があります。和倉温泉までは金沢から特急で1時間、大阪・名古屋から特急で3-4時間かかります。交通便利な場所とは言えません。

加賀屋が凄いところは、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で27年間連続総合1位であることです。過去32回のうちの27年連続1位です。並大抵の努力ではありません。

「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は株式会社旅行新聞新社 主催で、全国の旅行業者を対象とした投票によって選考されます。もてなし、料理、施設、企画の部門別と総合が各100施設選ばれます。

たくさんの旅館・ホテルの中で加賀屋が1位を続けられる理由は何でしょうか。

書籍「加賀屋の流儀」を通してその秘密の一端にふれることができます。加賀屋には比較的高めの料金を高いと思わせないだけの接客サービスがあるようです。そのため、旅行のついでに泊まる旅館ではなく、結婚記念日などの記念に加賀屋に泊まりに行くこと自体が目的になっているのだそうです。詳細は「加賀屋の流儀」をご一読ください。

さて、加賀屋の接客サービスではITはどのような意味を持っているのでしょうか。

接客サービスが優れた旅館というと、隠れ家風の小規模な旅館のイメージがありますが、加賀屋は客室総数246、年間宿泊者数22万人の大旅館です。詳細は公開されていませんが、予約などは当然IT化されていると思われます。
しかし加賀屋の主役はITではなく客室係です。例えば、加賀屋では浴衣を客室にあらかじめ置いていません。客室係が到着した宿泊客を館内を説明しながら客室に案内する間に、宿泊客の身長をそれとなく目測して、5センチ刻みの浴衣の中からピッタリのサイズを選んで部屋へ持って行くのです。
こうした気働きともてなしでサービスが演出されていくのです。CRMシステムに顧客の身長が登録されているのではないということが重要です。

よい顧客サービスはCRMシステムが行うのではなく、人が提供するものです。加賀屋の事例は、優れた接客サービスは一人一人の従業員にかかっていること、会社の全ての部門がサービス優先で動き、接客する人が自分たちのサービスに自信と誇りを持った時にサービスの質が向上すること、を教えてくれます。

先日の能登半島沖地震では、和倉温泉も震度5の揺れがありました。予想もしない地震にあった宿泊客への気配りというのはCRMシステムにはできません。このような非常時にこそ、真の接客サービスが提供されたことと思います。

新聞報道によると、この地震で加賀屋も安全の確認のため3月26日まで休業になったとのことです。加賀屋と和倉温泉の1日も早い営業再開と今シーズンの盛況をお祈りします。

4569654541 加賀屋の流儀 極上のおもてなしとは
細井 勝
PHP研究所 2006-08-26

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