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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

第6話:誕生日

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「誕生日、おめでとう」と言うと、「おめでとうなんて言うような歳でもないし、別に嬉しくないよ」などと言う人がいる。素直じゃないなぁ。

めでたいのだ。何歳になっても、また1年生きてきたということはめでたいし、ありがたいことなのだ。若くして亡くなった友もいるから余計にそう思う。



私は2人姉妹で、妹とは誕生日が同じだ。
それを話すと、時々「双子?」と言われることがある。「いいえ、6歳違いです」と答えると、今度は、「ああ、二卵性かぁ」と勘違いされることも。珍しいからか混乱を招くらしい。

私がもうすぐ6歳になるという時、母は出産に備え入院。そのため、父方の祖父母の家に預けられた。妹が誕生する数日前、祖父母宅にいる私にあてて母が送ってくれたはがきが手元にある。ひらがなだらけの文面。

「まいにちげんきにしていますか。まだあかちゃんがうまれそうにないのでこまっています。淳子ちゃんのおたんじょうびにうまれたらいいのにね。あかちゃんはまいにちとってもげんきにおなかでたいそうしていますよ」

予言?通り、私の6歳の誕生日に妹が生まれた。その年の誕生日は祖父母に祝ってもらった。父も病院に駆けつけていたためだ。

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【母が私に病院から送ってくれた葉書。消印は1969年1月16日と読める】


母が赤ん坊を連れて退院した日。病院から父の運転で四人揃って帰宅した。4人家族になっての初ドライブ。母に抱かれた生まれたてのちっちゃな赤ん坊を覗き込み、私はこう尋ねたことをはっきりと覚えている。

「お母さん、この赤ちゃんを私はこれからなんと呼べばいいの?」

お姉ちゃんになった、という自覚がじわじわと湧いてきたのだろう。

…とまあ、妹の誕生については、こんな風に断片的に記憶がある。一方、自分の誕生日については、当然のことながら記憶はない。



若い頃は今の一瞬一瞬が重要で、自分が生まれた頃のことなど関心がなかったが、中年になって自分の誕生について興味が湧いてきた。

そこでこの正月、実家で自分の「赤ちゃんアルバム」を見てみることにした。両親が作ってくれたものだ。最初のページには私の誕生前後がつづられている。

予定日の2日後に母は入院。でも初産のため陣痛が起きず、翌日ようやく陣痛が始まった、などと父が万年筆で丁寧に書いている。

夜が明け「午前1時28分、淳子が生まれた。元気のよい声で泣いていた」という言葉でそのページは終わる。

次のページ。母と新生児の私が並ぶ病室での写真に添えて、「ママは大きな赤ちゃんを産んだのでパパにイバッテいた。」と再び父の字。

このアルバムには、若かりし頃の両親と誕生したばかりの私、今は亡き祖父母たち、多くの親戚やご近所さんたちの笑顔が詰まっている。写真ごとの添え書きを読み進む内に涙で文字がかすんでしまった。


別の情報源。30年ほど前に他界した母方の祖父の日記。処分にあたり、自分の誕生に関するページだけ切り取ってもらってあった。

誕生当日の記述。

「朝十時過ギニ東京ノ田中ヨリ女子生産ノ電報ガ来タノデ早速産院ヘ祝電ヲ打ッタ」

その十日後には「田中家ノ女児淳子ト命名報告来ル」。

明治生まれらしく漢字とカタカナだ。気難しかった祖父が几帳面な文字で、事実だけを淡々と書いているのも面白い。(生産は〝しょうさん〟と読み、出産のことだと今回初めて知った)

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【祖父の日記。1963/2/1に「淳子ト命名」とある】



はがき、アルバム、日記。自分や妹について肉親が残してくれた記録。どれもこれも茶色くなり少々やぶけた紙に書かれた肉筆の文字。私達姉妹はれっきとした中年になったけれども、誕生した時から両親、祖父母その他多くの人に支えられて大人になれたのだなあ、と思う。

手書きの文字、紙の質感はやはりいいものだ。紙を触り、一文字一文字をそっと撫でるだけで、その時々の家族の情景に思いを馳せることができる。



先日仕事で出会った男性は、4歳の双子ちゃんを持つ若きパパでもあった。「息子達の誕生からの写真が溜めっぱなしなんですが、やはり電子データではなくて、手で触ることができるアルバムにしておきたくて」と仰っていた。

聞けば、「ボクのために両親が作ってくれたアルバムがとても嬉しいものだったので、同じことを息子達にしてやりたくて」とのこと。「手で触れられるものを残したい」と考えるのは世代に関係ないのかも知れない。



ところで姉妹で誕生日が一緒だと互いに忘れなくて済むというメリットがある。ここ数年は誕生日になると、メールを送り合うようになった。

これがちょっと面白い。どちらも相手に対して「お誕生日おめでとう」と書くからだ。

さて、今年も1月20日がやってきた。さっそく妹にメールを送ることとしよう。

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★初出:「日経BP携帯朝イチメール」(2010年1月20日配信)の再録です。日付などは掲載当時のままになっています。

・・・ところで・・・。

おととい土曜日に母、甥っ子、妹が我が家に集結し、少し早めの誕生日会を兼ねた会食を。

私がスポンジケーキを焼き、生クリームを塗ったところに、いちご、バナナ、ブルーベリーを甥っ子が飾り付けてくれました。

6歳違いの妹は、なぜか、今年17歳になりました^^;

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Comment(2)

コメント

なおき

淳子さん、そして淳子さんの妹さん、お誕生日おめでとうございます。「お誕生日おめでとう」は言われるのはもちろん、言うほうもなんだか嬉しいものですよね。
ちなみに、我が家の長男も1月20日生まれだったりします。おとーさんとしては生意気な息子にも心を込めて「お誕生日おめでとう」と言ってやらなければいけません。(^_^)

TanakaJunko

なおきさん:お久しぶりです。ありがとうございます。そして、ご子息様も同じとは! 嬉しい。お誕生日おめでとうございまーす、とお伝えくださいませ♪

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