海外との格差から考える日本のIT業界の問題点!〜ITプロマッチへの道(その2)
ITプロマッチへの道シリーズの2回目です。
今回は、海外との比較から日本のIT業界の問題点を見てみましょう。
こちらも前回紹介した日経コンピューター2014.2.6からの引用となります。
○ 日本の全IT技術者に占めるユーザー企業の技術者の割合は25%(米国72%)
日本の場合にはIT技術者は圧倒的にSierまたはSierからの下請け多重構造におけるソフト会社にいる、ということです。これは日本にいてSIをやっていると極めて普通のように思えます。 ところが米国は、なんとユーザー企業に所属しているIT技術者の方が多い、しかも圧倒的にそちらの方が主流である、ということなんですね。つまり米国でSIをやろうとすると、まずは社内のIT技術者が行い、専門的な部分やマンパワーがそれでも足りない部分(小規模)を外部のIT会社にお願いする、ということかと考えられます。
確かに米国では日本のように大手Sierという会社が少ないですね。IBM,HPが大きいですが、両者ともに機器やパッケージと専門的な領域に特化したサービスを行っていると考えられます。またアクセンチュアのようなコンサルティング企業はコンサルティングから入って、その後BPO(つまり顧客の事業部門の一部になる)になっていくようなビジネスをしています。またそれでも大型の開発プロジェクトで人手が欲しいときは同じ英語圏であるインドのメガIT企業を使うのでしょう。日本のような国内のIT技術者はあまり必要ないようです。結果的に日本のようないきすぎた多重構造はないと考えられます。
○ 日本のプログラマーの平均年間給与は3万9321ドル(米国は8万5894ドル)
これも驚愕するデータですね。米国のIT技術者は平均で日本のなんと2倍以上給与をもらっている!んですね。 この理由を推測すると先ほどのユーザー企業に囲われているIT技術者が72%と多いことが考えられます。日本のような多重下請け構造がないため、その分、直接働きに見合った額がIT技術者に支払わられているのでしょう。 いづれにしても米国のIT技術者は恵まれているようです。
さらにこちらのデータは2009年のデータのようですので、今の為替レートに勝手に変換してみました。
1ドル/94円 : 1ドル/120円 = 3万9321ドル : X
すると日本の現在の為替レート120円での2009年時点のプログラマーの平均年間給与は
3万0801ドルとなり、さらに20%のダウンとなりました。悲しいです。
ちなみにインドのプログラマーの平均年間給与は7512ドルだそうです。ここでインドの生活水準や平均給与を調べてみましょう。プレジデント2007年(少し古いですが)のデータによると次のようです。
日本の平均月収(手取り) 240000円
インドの平均月収(手取り) 25000円
(米国の平均月収(手取り) 280000円)
つまりインド人の方の平均給与は日本人の平均給与の10分の1近くなのです。従って、その分を換算してあげると、
7512ドル * 10 = 7万5120ドル
なんと、インドではIT技術者が、皆がうらやむ高給取りであり、日本のIT技術者の2倍近くもらっているという結果となりました。
日本のIT技術者の方は、日本で仕事をするよりも米国やインドで仕事をしたほうがどうもよさそうです。
○ 日本の主要ITベンダーの営業利益率は6.7% (米国は14%)
米国のITベンダーは日本よりも2倍以上の利益をあげているようです。こちらも日本の場合は多重下請け構造がコストアップとなっていることは明白かと思います。こちらは主要ITベンダーとありますので、もし中小ITベンダーであれば利益率はさらに極めて低いことが予想されます。本当に日本のIT業界は儲からない業界構造になってしまいました。そしてそのしわ寄せが全て日本国内で働くIT技術者にきているのです。先ほどのIT技術者の給与が低いのはIT企業が儲かっていないからなのかもしれません。
ちなみにインドの主要ITベンダーの営業利益率はなんと27%だそうです。先ほどの分析のようにIT技術者のグローバルで比較したコストが低く、また現地のインフラコストなどが安いことが理由と考えられます。
○ 日本の大学の情報系学科卒業生数は1万6338人 (米国6万3310人)
日本国内でも毎年1万人以上が情報系として社会に排出されているで多いかなとも思いましたが、米国はさらにその上を行っていました。ちなみに先ほどのインドはなんと9万8600人の情報系学生が排出されているようです。 国内のIT企業の技術者をみると、必ずしも情報系出身の人でない場合もありますが、それでもIT技術者の育成土壌が小さいというのは質の面で問題かもしれません。
さらに言うと、日本の場合、下請け多重構造による3K職場のイメージが強いため、情報系の学生でさえもITを敬遠するきらいがあります。日本のIT業界がより質の高い人に高給を払い、そして学生からも魅力ある業界に変わって行く事を切に希望しています。
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