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ソフトウェア製品開発現場の視点

人間系情報システム

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以前 XML コンソーシアム主催の XML Week というイベントの基調講演で、Enterprise 2.0 をテーマに話をした。その中で、これまでのIT のシステムの中で、基幹系、情報系という2つの区分が使われてきたが、それに加えて新しい区分を考えないと現在の急速な変化についていけないのではないかというアイデアを出した。

Knowledgesystem

元来、「情報系」という言葉は、基幹系に比べてもっと自由にコストをかけずに提供できるという位置づけにあったが、メールなどの「情報系」システムが業務の中心として使われるようにり、止まったら業務に支障をきたすレベルの重要度に格上げされてしまったことが、新しい区分が必要だと思った理由である。まだ発展段階にあって試行錯誤を続けている Blog などの Web 2.0 系のソフトウェアであっても、「情報系」と位置づけてしまうと、社内導入のためには、安定稼動が求められるメールなどと同等のプランニングが要求され、莫大なコストと時間がかかってしまうのである。

「人間系」という言葉が、もっとも適している言葉かどうかはわからないが、かつて新しく「情報系」という概念を導入して「基幹系」と区別したように、新しく「人間系」という概念を導入することで、安定性、パフォーマンスなどの諸条件にとらわれずに、試行錯誤で新しいものを導入し、使っていきながらもっとも最適なものを探っていくということができるようになることを期待している。

先日、IBM ビジネスコンサルティングサービス (IBCS) が行った Global CEO Study の結果の説明会が Blogger ミーティングという形で開かれたが、そこで IBCS の金巻氏が説明された中で興味深い内容があった。「新規事業に対しては、すでにある事業とは異なった管理方法が必要」ということであった。新規事業でのイノベーションを期待しているのに、初めからビジネス目標やリスクを考えすぎると、それはイノベーションとは程遠いものになってしまうということである。

これは IT においてもあてはまる考え方である。イノベーティブなソフトウェアを導入して、会社を変革しようとしているときには、そのソフトウェアが本当に会社を変革することに役に立つかどうかをすばやく見極めることこそが重要な要素であって、そのためにはまず導入して使ってみることが、最もスピードが速くコストがかからない方法である。しかし、「情報系」の導入担当者にとっては、ネットワークの安定性に影響するかもしれない、わけのわからないソフトウェアは責任上導入できないため、ちょっと使ってみることさえもできないでいる。もし、「人間系」というもっと「ゆるい」管理体制のソフトウェアの存在が認知されれば、IT 上でのイノベーションを加速させることができるであろう。

Lotus Mashups は、この「人間系」を目指しているソフトウェアである。Lotus Mashup を使えばIT 部門が関知しないアプリケーションをそれを使う部門で驚くほどの低コストで開発することができるようになる。しかし逆に言うと、「人間系」という概念を理解し認知できる企業以外では、Lotus Mashups を有効に利用することはできないであろう。

リアルコムが開発・販売している、KnowledgeMarket は、社内の知識共有を支援するソフトウェアであるが、「情報系」として扱われているため、必要以上にコストがかかっているケースがある。これも、「人間系」という概念の導入で、有効利用される期待が広がる分野である。

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