SIerの3割が5年以内に消滅するのは本当か?
先日発表された調査会社IDCのIDC FutureScapeレポートより、5年後には3割のITベンダーが消滅すると書かれてありました。これは本当でしょうか!?
あながち大きく外れてはいないというのが私の見立てです。なぜそう思うのか見ていきましょう。
IDC FutureScapeレポート 詳しくはこちら→http://www.sbbit.jp/article/cont1/30371
前回「Dell-EMCの買収による競争環境の変化とは?」で競争環境の変化を示唆しました。
経営学でいうところの競争環境が変化すると、業界での成功していた要因であるKeySuccessFactor(KSF)や、それを支える顧客の購買決定要因であるKeyBuyingFactor(KBF)も変化するとされています。 この業界の競争環境が変化することにより、業界の成功要因も変化が起こってきます。それを見てみましょう。
今までのSI事業者の提供するシステム開発の購買決定要因は、システムの品質が高いこと(クオリティー)、競合と比べて費用が安いこと(コスト)、システムを安定的に導入できること(デリバリー)のQCDの3つの要件が主な要因でした。今まではシステムの種類や案件によって多少の違いはありましたが、基本的には、最低限のQCDを担保しつつ、Q>D≧Cのバランスが、購買決定要因の重要度の順番でした。またその購買決定要因を支える、事業者の次の3つの基本要件を満たすことが必要でした。
- 最新テクノロジーのキャッチアップ能力
新たに登場したテクノロジーをキャッチアップし、検証や実証実験をいち早く実施し、顧客ビジネスへのインテグレーションを可能となるように構築・運用方法を用意することができること。
- ビジネス・テクノロジーノウハウ保有の能力
実績を積み、業務ノウハウやテクノロジーのノウハウを保有し、その分野のプロとして、それらノウハウを提供できること
- 長期的サポート体制構築能力
オンプレミスのシステムを導入すると5年から10年ほどの運用が前提となる。その間しっかりサポートできる体制を用意できることや、膨れ上がるシステム開発を一社で請け負える財務体力や人財調達力があること、
これらの基本能力を持ち、QCDのバランスを保ち提供することが顧客の購買決定要因でした。
SI事業者は、コストの圧迫からこの購買決定要因を支えるために、「安定的な受注」と「稼働率」を維持することにより、なんとか利益を創出してきました。安定的な受注を得るために、多くの営業人員を確保し営業力を強化し、稼働率を維持するために、誰がやっても一定の品質が保てるように標準化を行い、案件ごとの利益率管理を厳密に行ってきました。それがSI事業者の成功要因でした。
しかし、競争要因が変化することにより、大きく購買決定要因が変化してきました。
ユーザーの事業環境のスピードの変化や、クラウドの登場により、D>C≧Qという選択基準も求められるようになったのです。圧倒的にデリバリーが優先され、コストとクオリティーはデリバリーの次と考えられるようになりつつあります。これは、情報システム目的が、コストの削減や生産性の向上だけではなく、差別化や競争優位の確立に向けられるようになったからです。
これにより、SI事業者の成功要因は変わってきます。マーケティング能力やイノベーション能力、事業開発能力が必要となっていくでしょう。
成功要因はどのように変化するのかは、未だ不明で試行錯誤しながら見つけていくしかありません。しかしここではっきり言えるのは今までのような、人売りで「稼働率」や「安定受注」をメインとしたビジネスは終焉を迎えるということなのです。
このようなビジネスしかやっていないSIerが潰れていくのであれば、3割減るのもあながち嘘ではないかもしれません。
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Takeaway〜競争環境が変われば、SI事業者の成功要因も変化する!!
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