SIerのビジネスの勝ちパターンって何ですか?
「SIerのビジネスの勝ちパターンって何ですか?」
こんな問いに対して、ストレートに答えられる人がSI業界の中で何人いるでしょうか。
大学院の課題で、自分の業界のビジネスモデルを分析する授業があり、多くのSIerのマネージャーや経営幹部にヒアリングに行きましたが、ほとんどの人が明確に回答できる人はいませんでした。これは非常に危険なことで、しっかり自社のビジネスの勝ちパターンを認識しつつ、戦略を構築しなければ、競争優位性を築くことはできません。
さてSIerのビジネスの勝ちパターンとはどんなものでしょう。勝ちパターンを知るには、まず現状のビジネスのメカニズムを解き明かさないといけません。そのメカニズムを知るには、コスト構造をしっかり分析する必要があります。
■SIビジネスのコスト構造
SIビジネスは、「アプリケーションを受託開発する事業」、「ネットワークやサーバーなどのハード導入に伴い構築を行うエンジニアリング事業」、そしてそれらの「保守サポート事業」の大きく3つのタイプに分けることができます。
「アプリケーションを受託開発する事業」と「保守サポート事業」は、そのコストのほとんどが、人件費で占められています。しかも、我が国においては、人材の流動性が低いこともあり、その人件費が固定費化されてしまいます。そのため、ユーザー企業や大手SI事業者は、これらの人件費を下請事業者に委託し変動費として、コストの調整弁として使ってきたのです。この階層関係が、どんどんと下層に引き継がれてゆき、下へ行けば行くほど低賃金で働かされることになります。世に言う「多重請負」です。
しかし、人月単価は年々ディスカウントされてきており、非常に薄い利益しか取れていない状況となりつつあります。そのため一つの案件での利益管理を厳密に行う必要が出てきており、各社「赤字案件撲滅プロジェクト」など案件ごとの利益率管理を実施し、必死に案件ごとの利益を確保するように試行錯誤している状況です。
またリーマンショック以降、多重請負が社会問題となっており、徐々に多重請負について自主規制がかかってきています。そうすると調整弁役を担ってきた下請事業者を増やしていくことは難しく、また不景気になったからといって、そう簡単に、下請け業者を切ることができなくなってきました。
そのため、正社員も下請け業者も、予測した稼働人員のギリギリしか確保せず、しかも、少々稼働がオーバーしても、現状の人員で案件を回すことにより、高い稼働率を維持するようになっています。利益率が低いため、不稼働人員が発生すれば、直ちに赤字となるので、エンジニアは常にマシンのように限界まで働いてもらわなければならないのです。
また、安定的な高稼働率を維持するためには、安定的な受注が必要です。安定的な受注がないと稼働率が維持できず、すぐに不稼働が発生し赤字に転落します。中堅以上のSI事業者は、多くの営業人員を抱え、必死に安定的な受注を得るために営業活動に注力しています。
SIビジネスは、「安定的な受注」「人員の高稼働率」をコントロールすることが、勝ちパターンの一つと言えます。
このようなコスト構造は、一社でどうこうできるレベルではありません。この構造を前提の元に、自社のビジネスの勝ちパターンを定めていく必要がありますし、成長戦略をどうしていくかを考えてゆく必要があります。
今後、オリンピック景気による案件増加や、人口減少することにより、ますます人手不足に拍車がかかり、稼働率を維持するのは難しくなってくるでしょう。またオリンピックが終わった後に不景気が訪れた際の不稼働人員をどうすればいいでしょうか。
SIビジネスは、景気が一定である時は、非常に安定的なビジネスですが、世の中がドラスティックに変化する際には、非常に舵取りの難しい事業となるのです。以前から言われてましたが、そろそろSIerはビジネスモデルを考え直さないと手遅れになるのではないでしょうか。
「SIビジネスの再生のシナリオをどう描けば良いのか」
これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。
「システムインテグレーション再生の戦略」
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
- 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
- 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。
また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。
こんな方に読んでいただきたい内容です。
SIビジネスに関わる方々で、
- 経営者や管理者、事業責任者
- 新規事業開発の責任者や担当者
- お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
- 人材育成の責任者や担当者
- 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
- プロジェクトのリーダーやマネージャー
- 経営戦略や事業戦略を学んでいる方