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国会審議中の特定労働者派遣法は要注意!!

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現在SI業界では、大規模なシステム開発は一次請けの大手SIから二重三重に外注に請負わせて開発することが主流となっている。
私も大手金融機関を担当した際は、プロパー(直営社員)一人に対し、外注パートナーさんが5〜6名ぐらいの割合になっていて、優秀なパートナーさんがその案件の成否を握っている、そのパートナーさんは10年近く同じ職場にいる、なんてことはよくありました。

これが法律的には、微妙でなかなかSI業界にとっては悩ましい状況を生んでいます!!

なぜ法律的に悩ましいかというと、
多重派遣は、中間業者による労働搾取につながることや、派遣元・派遣先の企業と労働者に対する責任の所在が不明瞭にもなるため職業安定法第44条、労働基準法第6条(中間搾取の禁止)でも禁止されています。
これを見ると、多重下請け構造全て違法に見えますが、派遣先からさらに別の企業で業務委託の作業をする事自体は違法ではなく、多重派遣は禁止されているが、業務委託であれば問題ないとなっております。


ではどこからが委託でどこからが派遣なのでしょうか。派遣なのか委託なのかの違いは、契約形態ではなく実体としての指揮系統の違いにより区別されます。一番のポイントは請負労働者に対して、発注者が指揮命令を行うと偽装請負となりNGです。

しかし現状を見ていると、外注パートナーの主任責任者は(指揮命令をする人)は、週1回ぐらいしか現場には顔を出さず、プローパーも外注パートナーも、席の島はわかれてはいるものの、一つの常駐フロアに入り乱れて座っているため、実態はついつい契約元の社員がいろいろ依頼してしまい、多重派遣状態になっているところも散見されます。


なぜこのような状況に陥るのでしょうか、それは以下の3点だと思ってます。

①雇用流動性の低さ

原因として一番大きいのは、日本の雇用流動性の低さです。日本は一度正社員として雇い入れるとなかなかクビを切る事が出来ないため、一時的に開発者が多く必要というような場合、外注を使わざるを得ません。外注を雇用の調整弁として使っているのです。

②ユーザー企業のマネジメントのノウハウがない

そもそもこのゼネコンの体質は、実質は一次受けは、マネジメントをしているだけで、実際物を作っている会社は僅かです。つまりユーザー企業でしっかりマネジメントできれば、腕に力のある2次受け、3次受けの会社に直接発注すれば、中間マージンもなく適正な価格で取引可能です。しかし大規模開発の場合は、多数のベンダーにバラバラに発注するとベンダー間の調整などにとても工数やノウハウが必要なので、一次受けベンダーに丸投げしている状況です。

③付加価値の高い価格設定ができていない

現在の見積もりの仕組みだとどんな付加価値の高い仕組みでも、人月単価はほぼ一定となっている。そのため、不稼働が少しでも出ると赤字になる仕組みになっています。もっと付加価値ベースでの見積もり金額であれば、高い利益が確保でき、ある程度の不稼働も許容できるようになり、直正社員で対応できる範囲が広がるはずです。


これらの結果として多重下請けモデルにならざるを得なかったのですが、これが今の国会で話されている、特定労働派遣法改正はどのような影響があるのでしょうか。

現在の派遣法では、事務や営業などに携わる許可制の「一般労働者派遣」と、情報システム開発や通訳、デザインなど、一定のスキルや知識が求められる「専門26業務」の人材派遣をメインとした届出制の「特定労働者派遣」に事業が区別されています。登録型雇用の一般派遣は、同じ現場への派遣期間が最長3年までとなっているが、自社の正社員や契約社員を顧客先へ派遣する特定派遣には、この期間制限がありませんでした。

しかし、改正派遣法では、特定派遣そのものが廃止され、全ての派遣労働者が3年以上同じ職場で働くことができない一般派遣に切り替わることになる。派遣事業全体が国の許可制になることも含めて、これまで特定派遣を行っていた企業には予想以上に大きな影響が出てくることになりそうです。

しかも一次多重派遣が問題であったリーマンショック直後に、委託から派遣契約へ外注パートナーを変更する動きをしていた企業は、今回の影響範囲は大きいと思われます。

もちろん今回もうまく法律を解釈して今まで通り外注パートナーを大量に抱えていくでしょう。しかしこの多重構造禁止のトレンドは、大きなうねりとなり、近い将来はかなり制限されることは明らかです。

今のうちから、ユーザー企業もSIerも大きなビジネスモデル全体の構造変換が迫られているのは確かです。

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Takeaway〜多重構造を変えるには、企業全体の構造変換が必要だ!!
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