なぜSIerは新たなビジネスモデルに適用できないか!?
前回の「クラウドがSIベンダーにもたらす脅威とは!!」では稼働率ビジネスから規模の効くビジネスへの転換を提言した。なぜこの変化にSIerはついていけていないのであろうか。
これまでのSIerの成功要因は、請負う案件の安定的な受注と徹底したリソース管理であった。
SIerのビジネスは、人(エンジニア)=コストなので、徹底的に稼働率を維持すれば、利益を上げることができた。システムの需要は一定でなく、不安定な需要なので、正社員で雇用するとなかなかリストラできない雇用環境から、外注をリソースの調整弁として使って徹底的に不稼働を出さないように管理してきた。
また安定的な受注がないと用意するリソースの調整が難しいので、営業を配置し安定的な受注を目指してきた。
そして、どの大手SIerも営業機能とエンジニア機能がメインな組織構造として出来上がった。
そしてこのモデルが20年以上ほとんどビジネスモデルが変わることなく安定的に成長してきたのである。
しかしこの成功体験が、変革の足かせになっている!!
この成功体験で出世した、現在のSIerの役職者は、頭で理解しても日々の部下への指示や意思決定で昔と同じやり方を使ってしまっている。
これを変えるには大きな組織能力の変革が必要となる。では組織能力をどのようなモデルに変えればいいのであろうか。
SIerモデルでの組織能力は、以下のような特徴がある
- 受け身=要件があって初めて仕事ができる
- 効率性重視=なにかアイデアを出すのではなく、徹底した効率化を重視する
- ローリススクローリターン主義=リスクが高いのは悪で高いリターンがあったとしてもローリスクを重視
クラウドとなると先に大きな投資をして、クラウド環境を先に作り拡販するビジネスモデルでは、まったく違う組織能力が必要となる。
新たなクラウド型のビジネスモデルで必要な組織能力は、以下のような能力が必要である
- 先を読み能力→時代の先を読み、顧客に新たな世界を提案できる能力や先を読むために、戦略やマーケティングという能力が必要
- アイデア重視=売れるサービスを出すため、効率ではなくアイデアを素早く数多くだし、数多くのサービスを素早く立ち上げる
- リスクとリターンを正しく読む=高リスクなサービスには、高いリターンがある可能性があるので、しっかりとリスクとリターンを読み、高リスクでも勝負をかけることが必要な場合も出てくる
- 投資力=規模の経済が効くためある程度大規模に投資できる財力が必要なのと、投資した物件の内部収益率をコントロールし、PLではなくBSを管理する能力が必要になる
このようにクラウドに取り組むということは組織能力を変える必要があり、組織能力を変えるには、成功体験が強くある企業にとっては早くて10年近くかかる。
クラウドファーストな世界はあと5年〜10年で到達するであろう。今まさに社内で組織能力を変えるためのチャレンジをしていないSIerは10年後に残っている確率は非常に低いのではないだろうか。
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Takeaway〜組織能力を変化させるには、 成功体験を捨てよ!!
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