本当の意味での理解って何?
このブログでも何度か似たような言葉を使った気がしますが、カウンセリング関連の話をするときに、「本当の意味での理解」とか「肚(はら)の底からの理解」などと言う言葉を使います。
これはいったい普通の理解と、どう違うのでしょう?
私たちは通常、何かわからないことがあったら辞書で調べたり、誰かに聞いてみたり、ネットで検索したりします。 そして調べた言葉を頭において、または、その言葉から実物を想像して理解したというのです。
しかし、何か動く機械などのことを調べた時に、実際に動かしてみると事前の想定と違う動きをしたことはありませんか?
つまりこの時点では、正しく理解できていなかったことを意味します。
心理学系の話題はさらに厄介です。
なにせ、心は目に見えません。
機械と違って、事前に理解していた内容と実際の心の動きが違っていたとしても、周りにはさっぱり伝わらないのです。
簡単なREBTの事例をもとに、少し考えてみましょう。
たとえば、「誰も自分に迷惑をかけてはならない」という極端な考え方をする人は少ないでしょう。 特に5段階スケールで2~4を多く選ぶような日本人の場合、そんな極端な考えを持つ人はほとんどいないと言えるかと思います。
たとえば、「仕事上のミスで上司に迷惑をかけた部下が、上司に怒られる」というのは、ごく当たり前のことです。 ミスをした部下が悪いのだから、部下は怒られて当然と言えるでしょう。
これが通常の理解です。
果たしてこれは、事実でしょうか?
実験してみましょう。
(※・・・と書いたときに、この文章を読むだけでは本当の理解に至りませんので、みなさんも文章の通りにやってみてください)
まず、自分の部下(または同僚)がミスを犯して自分に迷惑をかけた場面を思い浮かべてみてください。
そのシーンが鮮明に浮かぶようになったら、次に、
「誰も自分に迷惑をかけてはならない。
もし迷惑をかける人がいたとしたら、それはとんでもないことだ!」
目を閉じて、こう強く考えながら、同じシーンを思い浮かべてみてください。
強いネガティブな感情が湧き上がるのが感じ取れるでしょうか?
もしかするとそれは、普段でも時々感じているような感情かもしれません。
ネガティブな感情が感じ取れたら、今度は、
「迷惑はかけられたくないが、残念ながらそれを全部避けるのは不可能だ。
もし迷惑をかけられたとしたら、それを建設的に解決していこう」
と、強く考えながら、さらに同じシーンを思い浮かべてみてください。
先ほどとは違う、ネガティブではあっても、落ち着いた感情になったと思います。
先に試した強いネガティブな感情を、「ネガティブでエスカレートした感情」と言います。 ネガティブでエスカレートした感情は、その後の行動、思考に影響を及ぼして、自滅的にさせます。
エスカレートした感情と書くと、顔を真っ赤にして頭から湯気を出し、口角から泡を飛ばしながら、異常性を持って怒るような場面を思い浮かべる人が多いと思いますが、普段感じているネガティブな感情の多くはエスカレートした感情なのです。
このことから、「誰も自分に迷惑をかけてはならない」などという極端な考えを持つわけがない、と意識的に思っていたとしても、実際には(若干文章が違っていたとしても)このような極端で現実からかけ離れ、論理的でもなく、自分をみじめにするだけとわかり切っている無駄な絶対的要求を心の奥底に持っており、その不健康な考え方を無意識に支持し、まるでボリュームつまみをひねるようにその不健康な考え方に傾倒していくことで、感情をエスカレートさせるということがわかると思います。
では、本題の「本当の意味での理解」は、これで得られたのでしょうか?
答えは否です。
上記のことを知った後、実際に感情がエスカレートしたとき(怒ったとき、悲しくなったとき、不安になったとき、憂うつになったとき、欲求不満に耐えられないとき)に、「あ、いま不健康な考え方を持って、無駄にストレスをためている」と気づき、なんとかしようと行動を起こすことができた時、はじめて本当の意味で理解できた・・・の、第一歩を踏み出したと言えるのです。
(※ちなみにこれは、前回の記事で書いた「道路に引かれた白線」の話にもかぶるところですね)
一番問題なのは、わかったつもりになることです。
わかったつもりになった時、うがった見方で物事をとらえがちになります。
カウンセリングの場合だと、カウンセリングの内容も効果もわかっているといいながら、何かしら理由をつけてカウンセリングを受けることを避けようとするなどです。
もちろん、すべてにおいて本当の意味での理解をする姿勢が保てるわけではないということも覚えておく必要があるでしょう。
・・・と書きつつも、できればカウンセリングのことを正しく理解してほしいと思います。
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