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「H7N9型」鳥インフルエンザ 10年前のSARSの再来か

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猛威を振るう「H7N9型」鳥インフルエンザの感染者が、4月14日までに中国全土で合計61人となり、うち13人が死亡したことが確認された。

感染が確認された地域は上海市(確認24例、死亡9名)、安徽省(確認2例、死亡1名)、浙江省(確認15例、死亡2名)、江蘇省(確認16例、死亡1名)から北京市(確認2例)、河南省(確認2例)までに広がり、感染地域がさらに内陸の地域に拡散するおそれがある。

今回の「H7N9型」鳥インフルエンザは、中国人にとって、きっと10年前の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を思い出される。2002年11月に中国広東省で発生したSARSは、中国全土で8,098人が感染し、うち774人が死亡した。当時の監督機関が情報隠蔽に走り、世界から批判された末、衛生部部長、北京市市長まで更迭された。

情報公開が不充分の疑い
今回の「H7N9型」のウイルスを感染して、最初の死亡者(上海在住)が出たのは3月4日、病院関係者の1人がその情報を中国版ツイッターのウェイボーに「死亡した患者が新型鳥インフルエンザのウイルスを感染する可能性が大きい」と投稿したが、デマと見られ、すぐウェイボーの運営会社に削除された。

4月1日に、ようやく感染情報を公開され新聞が報道しはじめた。これに対して、ネットユーザーに「なぜ情報をすぐに公開しないか?」と批判され、不信感を表れた。一方、国家運営の中国中央テレビ局(CCTV)がその時点で相変わらず「H7N9型」鳥インフルエンザの報道を黙殺し、情報公開に消極だった。

相次いだ動物死骸の発生
今年に入って、中国国内では変な不祥事が次々と見つかった。
3月上旬から下旬にかけて、上海市黄浦江に相次いで豚の死骸が発見され、合計約1万匹と報道された。
3月19日、四川省眉山市の川に約1000羽のアヒルの死骸が見つかった。
さらに4月初旬、南京市内の住宅地で数十匹のスズメの死骸が次々と落ちてきたと話題になった。

いずれに地元の衛生部門では「環境への影響がない。H7N9型のウイルスが発見されていない」とコメントしたが、市民の間に衛生部門の発表に対する不信感が高まった。

近年、深刻になった中国環境問題が今回の「H7N9型」鳥インフルエンザにつながるのではないかと、中国ネット上には、このような書き込みが殺到してきた。

パニックに陥った中国社会
「H7N9型」のウイルスを確認された後、上海市は家禽の市場を封鎖、南京市は市内に養殖しているニワトリをすべて殺処分を命じた。

同時に、衛生部門が漢方風邪薬「板藍根」(読み方:バンランコン。タイセイやホソバタイセイというアブラナ科の植物の根を乾燥させた生薬だ)の服用を推薦した。そのため、板藍根を買占める市民が各地の薬局に殺到、板藍根の売り切れが相次いだ。

10年前SARSが流行ったときに、衛生部門もSARSの特効薬として同じ「板藍根」を推薦したため、当時も板藍根の買いだめが各地で起こった。10年を経っていても歴史が繰り返された。

中国のウェイボーには、ネットユーザーに皮肉な口調でこのように揶揄された。「時代が進んでも、病名がSARSから鳥インフルエンザに変わっても、唯一に変わらないのは特効薬の板藍根だけだ」

その後、専門家から「板藍根は鳥インフルエンザの特効薬ではなく、ただの風邪薬なのだ。むやみに板藍根を飲めば、かえって危険」と警鐘が鳴らされた。政府の見解を覆すようになってしまった。

10年前のSARS、情報の隠蔽で中国市民が多くの犠牲者が出た。果たして今回の「H7N9型」鳥インフルエンザに、中国政府がどうのように対応するか、うまく乗り切ることができるか、世界から注目されている。


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