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「楽酷天」は誰に殺された?

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 皆さん、「楽酷天」というサイトはご存知でしょうか?

 それは、楽天が中国で展開したインターネットショッピングモールサイトである。「楽酷天」の中国語の発音(ラ クー ティアン)は楽天の発音に近いため、ネーミングとして採用された。

 そもそもネーミングに「酷」という漢字を使うのは、日本人はきっと違和感を覚えるだろうが、中国語では「酷」の発音が英語の「COOL」と同じなので、「クール」「かっこいい」なイメージで若者の中に流行っていた。
 (しかし、忘れてはいけないのは、「酷」とう文字は中国でも日本でも「冷酷、残酷」という意味を持つ。ネーミングからすでに「楽酷天」の前途多難を暗示されただろう。)

 2010年10月、楽天と中国のインターネット検索最大手、百度(バイドゥ)との合弁企業で「楽酷天」をスタートさせた。当時かなり鳴り物入りで日中両国でも大きな話題になり、日中大物同士の力を合わせて、アリババの「タオバオ」に匹敵できるのではないかと大いに期待された。百度(バイドゥ)側もユーザ共有、リソースやトラフィックなどのサポートを惜しまぬ姿勢だった。

 しかし、ふたを開けてみると「楽酷天」はスタートして以来ずっと低空飛行で業績不振のままだった。とうとう今年4月末にサイトの閉鎖までに追い込まれた。事実上の中国敗退で、日中両国のマスコミはまた大きな騒ぎになった。 

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 「楽酷天」 の撤退について、ある中国ユーザはネット上でこう書き込んだ:
 「今、はじめて「楽酷天」というサイトが知りました。だが、そのサイトはもう無くなるんだ」。

 さて、「楽酷天」は誰に殺されただろう?そろそろ犯人捜しをしてみよう!

 まず一人目の犯人は、「日本式にこだわりすぎる」。
 合弁企業の実権は日本側が握っていたため、CMO(最高マーケティング責任者)を除き、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)、CTO(最高技術責任者)などの管理役職はすべて日本人だった。日本で成功したノウハウと経験をそのまま中国に移植しようとしただろうが、中国現地社会、商習慣などに合わせた柔軟なマネジメント対応ができていなかった。一例として、社内会議では議論をする時にも、中国、英語、日本語の三方通訳が必要なぐらい、日中双方の意志疎通の効率が悪かったそうだ。

 二人目の犯人は、「パートナー会社と信頼関係を築くことができていない」。
 当時、楽天は51%、百度は49%の割合で合弁会社をスタートしたが、百度は資金ではなく、リソースやトラフィック資源だけでの投資ではないかと噂をされた。楽天はそれを否認してきたが、2011年に「楽酷天」サイトをリニューアルされた後、百度のカラーが殆んど消えてしまった。サイトのタイトルも「百度楽天」から「楽酷天商城―日本NO.1の綱購商城」(綱購商城はショッピングモールの意味です)となった。また、「楽酷天」の支払い方法では百度が運営している決済システム「百付宝」が使えなくなってしまい、その代わりに百度のライバルであるアリババが運営している決済システム「支付宝」(アリペイ)を決済方法として採用された。ここまで来たら百度さんの不快感とイライラさも想像つくものだっただろう。

 三人目の犯人は、「中国人ユーザのニーズ、嗜好特性に合わせたサービス提供ができていなかった」。
 中国インターネット通販市場の好調でBtoB、BtoCを専門に運営している会社は雨後の筍のように次々と現れてきた。ユーザにとって、選択できるサイトが多すぎるのでどこで買ってもおかしくない、商品のほか、購買に伴う体験がもっとも重要視されるようになった。「楽酷天」はトップページのデザインが中国人から見ると馴染めないところがあり、イベントの開催頻度も低い、ユーザからの不満がけっこう高まったという。

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 2011年第四半期BtoB市場シェアレポートによると、タオバオが運営している「天猫」が39.9%でトップの座を維持している。京東商城と蘇寧易購は第二位第三位を獲得、「楽酷天」の売上高は市場シェアの1%未満で、ベスト10すら入っていなかった。

 成熟な日本市場に比べると中国市場はまだまだ未熟である。中国に進出する際、日本の会社は現地運営に慎重に進みたい、現地のスタッフに任せきれない気持ちがよく分かる。だが、中国のことを一番知っているのはもちろん現地の中国人スタッフ達である。彼らを積極的に使わないともったいない。彼らをもっと信頼を寄せてあげないと彼らも成長しない。

 「日本式プラス中国流ができたこそはじめて中国人消費者の心をつかまる」。これは「討ち死に」した「楽酷天」から学んだことである。


 

2011年中国BtoCオンライン通販サイトの売上高ランキング(ベスト5)

順位 通販サイト名 2011年売上高               売上増長率 シェア
1 天猫        920億元(約1兆2000億円) 206.7% 55%
2 京東商城    309億元(約3700億円)         202.9% 19%
3 アマゾン中国 60億元(約720億円)         100.0% 4%
4 蘇寧易購     59億元(約710億円)         490.0% 4%
5 qq商城         53億元(約635億円)         165.0% 4%


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