iPhone 3.0ーモバイルOS市場の勃興
2009年3月17日(米国時間)、iPhoneの次期OS「iPhone 3.0」 の詳細が公開された。
この夏に、ダウンロードが可能になるこのiPhone 3.0のさまざまな特長についてはここでは触れない。
大事なことは、この発表が新しいハードウェアではなく、モバイルOSの発表であるということだ。
OSを入れ替えることによって、去年の夏に発売されたiPhoneが、今年の夏になっても最新のiPhoneに生まれ変わることができる。任意のアプリをインストールすることによって(しかもほぼワンタッチのような手軽さで)自分好みの利用環境を作り上げることができる。PCを超えた手軽さ。いわゆるケータイ、あるいは従前のスマートフォンでさえも、ここまで簡単に常に最新の利用環境をアップデートし続けられる筐体は無かった。
(できるかどうか、ではなく。簡単かどうか、である)
誤謬をおそれずに言うと、ここにきて、本当にiPhoneは携帯電話というものを再定義してしまった。
iPhoneはまさしくパソコンであり、ケータイはワープロだ。
20年前、どのオフィスにも日本語ワープロが浸透し始めていた。それらのワープロの中では簡単な表計算までできるものもあったし、年賀状のデザインなど複雑な書式の作成もできるように進化していった。しかし、結局それは文書作成専用機であり、柔軟なOSと多彩なアプリを搭載できるPCに市場から追い出されてしまった。
同じように、いままでのケータイは電話とメールの専用機のようなもので、もちろんさまざまな機能を載せてはいるが、しょせんはPCとは違う、ワープロのようなものである。
今後、恐らくは5年以内に、ケータイもスマートフォン化していくだろう。どのOSを使うかは別にして、iPhone同様に、OSとアプリの入れ替えでアップデートすることで機能の向上をユーザー自身が行えるようなエコシステムを取り入れるにちがいない。
もちろん、電話という通信手段はライフラインであり、スマートフォン的なツールを使いこなせない人がいた場合、PCを使えない人とは比較できないほどに社会的弱者の立場になる恐れがあるため、専用機としてのケータイは残る。割合的には、20-30%、という感じだろうと想像する。
いずれにしても、モバイルOSもPCのOSと同様に、今後は2つか3つのOSに淘汰されていくだろう。僕が思うに、iPhone OS、Android、Windows Mobileの3つが90%以上のシェアを押える”三国志”的な状態になる。そのとき、日本のケータイメーカーは専用機を作り続けるニッチを選ぶか、どこかの陣営に組したハードウェアメーカーとしての途を選ぶか、撤退するかの、どれかの選択をしなくてはならないだろう。少なくとも独自のモバイルOSを開発するというメーカーはありそうにない。