Web2.0に関する考察ノート:前編
様々なBlog、メディアがWeb2.0について語り始めている。僕自身、非技術的考察という観点で、いろいろ考えを巡らせてきた。
ここでいったんWeb2.0をどう定義づけるか、という命題について、現時点での僕の回答を出しておきたい。
前編をWeb2.0自体の説明として、
後編を、Web2.0的要素(技術、ビジネスモデル、企業など)
としたい。
■ Web2.0に関する考察ノート:前編
01. Web2.0はWeb上の新しい「環境」である
Webを「気候」に例えてみると分かりやすい。現在地球は温暖化に向かっていると言われている。つまり気候という環境の変化が起きているらしい。そして、その原因を大気中の二酸化炭素が増えているからだという意見が多くみられている。
氷河期にはマンモスが繁栄したが、それが終わると分厚い毛皮を持たない軽量のほ乳類が繁栄した。
Webもまた、ここ数年様々な事象の発生により、その環境変化が起きている。例えば、検索性が上がり、これまでとは比べ物にならないくらい膨大な情報を容易に入手できるようになっているし、Long Tailのような現象が顕現化したおかげでリアルなマーケットにはありえないユーザー行動が見られるようになった。
(従って、そのユーザー行動に即したサービスを提供できる、新しい環境に自分をフィットできる企業が台頭してくることになる)
このような現在見られる傾向と今後数年間にわたって一層進むと思われる環境変化を、総称してWeb2.0と呼んでいる、と考えるべきだと思う。つまり、Web2.0とは、数年前からはっきりと兆候を見せ始めている、新世代のWeb上の環境のことなのである。
02. Web1.0とは何か?
もともと、WebとはURLを埋め込んだHTML文書が、互いにハイパーリンクによってつながれた、データベース的なネットワークのことである。しかしながら、HTMLは人間にとっての読みやすさ、視覚的効果を優先しており、プログラム的には曖昧さを多分に残す。従って、リンク切れやプログラム上の文法間違いなどに対して寛容で、結果としてネットワークとして全てがつながっているわけではない。だから、データベースとしてはやや心もとない。
この状態のWebを、(Web2.0に対する比較用語として)Web1.0と称しているのである。
03. Web 2.0の特長と背景
Web1.0 とは従前のWebの状態、環境を指している。そして、Web2.0とは数年前に兆しを見せ始めた環境変化によってもたらされた新しい環境、のことである。
Webは、HTML文書がURLによるハイパーリンクで結びついた世界であるが、Web2.0はこれまでに比べて(=Web1.0に比べて)、XML含有率(?)が遥かに高いのが特長である。
Blogは(XML準拠である)XHTMLで書かれているし、Feed、タグはXMLそのものであるから、Web上のXML比率がどんどん高まっているのだ。これはWeb上の情報の検索性が高まることを意味するし、サイト同士のデータの相互利用(つまりWebサービス)が容易になるというメリットがある。XMLは、一般ユーザーがこれまでのブラウザ経由で見るには少々都合が悪いが、プログラム同士のコミュニケーションには最適である。
また、ハイパーリンクがより広範囲につながり始めている。正確に言うと、非常に小さなサイト達が密接にリンクし始めており、ネットワーク化している。これまでのようなハイパーリンク切れによる連携の切断が目立たなくなり、接続されたリンク範囲が大きく広がり始めているのである。
これはブロードバンドの一般化に裏付けられたBlogの普及によるところが大きい。BlogにおいてはPermalinkという、記事単位のURIが存在し、データの出所が明確になった。記事単位でハイパーリンクが可能になったのである。その上、一件一件の記事にFeedというメタデータが生成されるため、検索性が向上したし、コメント、トラックバック、タグなどでユーザー同士による付加情報がどんどんWeb上に貯められている。
GoogleやOvertureが、検索エンジンをドル箱にすることに成功したため、検索性能も急激に向上したが、検索される側のWebサイトが自ら検索性が高い構造に体質変更しはじめたことは注目すべきことだ。
ティム・バーナード・リー率いるW3Cは、Webのデータベース化を夢見てセマンティックWebという構想を生んだ。その実現について様々な努力を続けているが、Web2.0は、Webが偶発的にセマンティックWebに近い構造を持ち始めた今の状態、環境を意味すると僕は考える。セマンティックWebは人為的な完全体としてのWeb。Web2.0はある程度自然発生的な完全体に近いWeb。
従って技術的な完全性で言えば
セマンティックWeb ≧ Web2.0 であるが、
Web2.0 は既に生まれでている上、徐々にではあるがセマンティックWeb方向に進化していると言えると思う。
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