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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

「通信中学講座」生命保険編 #001 ~生命保険の構造を知る①~

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我が国の世帯における生命保険の加入率は約90%と言われています。
しかしながら、生命保険の構造をきちんと理解している方は半分にも満たないというのが現状です。

どうしてこんなことになってしまっているのかというと、義務教育、高等教育においてほとんど「保険」について体系立てて教えるということがなく、社会人になって初めて保険の話しを聞く相手が専門家という名の販売員や営業マンだったりするので、販売に不利になりそうなことは明確にしなかったり、端折ったりすることが多く、一般消費者としてきちんと生命保険の構造は理解せぬまま加入してしまっているのです。

それと同時に「リスク」をどう考えるか、どう受け止めて対策を立てるのかなども教わる機会は限定的です。
「リスクマネジメント」などと大げさなものではなく、保険・保障を考える上で必要最低限となる事柄も賢い消費者、生活者としては身につけておかなければならないと考えます。

この「通信中学講座」の生命保険編では、中学生の皆さんが将来社会に出て、保険・保障が必要となったとき、どう考えてどう商品など選べばいいのかという基本的な考え方を身につけることを目的としています。

今回第一回目の講座ですので、生命保険商品の基本の基本となることをお話しします。

生命保険の基本的な商品としての構造は「主契約」と「特約」のパッケージがほとんどを占めます。
最近はパッケージされてないものが多くなってきましたが、まだまだパッケージものが幅をきかせています。

「主契約」とはその名の通りメインとなる部分で、これがないと商品として成り立ちません。
それに「特約」というおまけがついてパッケージとなります。

通常は死亡保障が「主契約」となり、特約として入院、がん、介護など積み上げて一枚の申込書で加入することができ、ひとつにまとまっているので、何かあれば申し込んだ担当者もしくは保険会社に連絡すれば事足りる、という便利さはあります。

この<加入時および問合せの際の利便性>を最優先されるのであれば、パッケージ商品のどれかから選択するというとことはありなのですが、その代償も受け入れなければなりません。

少し考えれば分かることですが、ここでパッケージとなっている死亡、入院、介護で考えてみても、すべて目的や必要となってくる時期がそれぞれ異なっています。

入院したのち介護状態になって死亡する・・・というイメージがあり、実際にそうなることは多いかもしれませんが、必ずしもそうなるとは限りませんし、「備える」ことを考えるとこの3つを同じパッケージにすることによる不具合が生じます。

実際によくあるのが<特約の保障期間は保険料の支払い期間まで>という設定です。
パッケージ商品のメインとなるのは、ほとんどが終身保険(いつなくなっても死亡保険金が出る一生涯の死亡保障)なのですが、その支払期間が60歳とか65歳と設定されています。

メインとなる主契約は<終身保険300万円で支払期間は65歳まで>とシンプルで分かりやすい設定になっていても、特約の入院保険や介護保険が<特約の保障期間は保険料の支払い期間まで>となり、65歳以降は300万円の死亡保障だけになり、入院や介護の保障はなくなってしまい、必要であれば改めて新規で加入しなければなりません。

つまり主契約である死亡保障の都合に、特約である医療・介護保険は無理やり合わせているわけです。
伝統的国内生保のパッケージ商品については、相変わらずこのような構造になっているので、充分な注意が必要です。

それでは、特約でも終身保険と同じように一生涯継続できるものであればいいのかどうか。

一部損保系生保やかんぽ生命などでは、終身保険に終身医療保険(一生涯入院、手術の保障がある)を付加できます。
これなら、申込用紙は1枚だし、何かあった時の連絡先も1か所なので便利だな・・・となりそうです。

このケースでも不都合なことは発生します。
「保険料の負担が厳しくなってきたので、特約の入院保障だけ残して主契約の死亡保障を解約しよう」というは不可能なのです。
※特約である入院保障だけ解約することはできます。

そもそも、死亡の保障、入院の保障、介護の保障と目的が異なるものを同じ箱に詰め込むことに無理があります。

便利さだけに目を奪われて、肝心なときに使えない、制限がかかる、継続できないとなっては本末転倒です。

しかし、これまでの生命保険の主力商品はこのようなかたちになっているものがほとんどで、消費者としてもこのかたちが普通であると思い込んでいる節があります。

そんななか、最近では各商品の単品売り、保険会社もバラバラに選択できるようになってきています。
そしてほとんどの場合、各社バラバラで合理的に商品を選択して組み合わせた合計保険料は、伝統的国内生保のパッケージ商品より安くなります。
(他の商品やサービスであれば、パッケージすることによりバラバラで購入するより割安になるのですが、生命保険についてはこの常識がほとんど通用しません。この「通常の常識では通用しない」ことはこれからも出てきます)

バラバラであれば、将来「お葬式代(死亡保障)だけ残しておこう」「がん保険だけ残してあとは解約」という選択もありです。つまり自分でコントロールできるわけですね。

まとめると、便利で安易なパッケージ商品を選ぶと保険会社の都合が優先されて選択肢が極めて限られるが、多少手間はかかっても各ジャンルごとにバラバラに保険商品を選ぶ組み合わせならば、見直しなど自分がコントロールできる、ということです。

さぁ、皆さんなら「便利で思考停止奨励のパッケージ型」か「少々面倒だけど合理的にコントールできるバラバラ型」かどっちを選びますか。

「汚れてしまった大人」の先入観なしに判断できる皆さんであれば,当然合理的な選択ができるはずです。

 

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