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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

拝啓 東洋経済新報社殿【週刊東洋経済8/24】特集「ネット保険&共済」はどうしっちゃったんですか?

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<シンプルに、より安く。保険選びの決定版【週刊東洋経済8/24】ネット保険&共済「厳選、最安・おトクな保険>だということなので、しっかりとお勉強させていただこうと考え購入させていただきました。

胸躍らせてこの保険特集のページを開くと、様々な問題提起をしたあと、

「それではどんな保険に乗り換えたらいいのか、新たに契約するにはどのほ保険がいいのか、それを無料相談員に求めても、手数料率の厚い、相談員が得をする商品を薦められるのがオチだ。そこで本誌は相談有料の有力FP(ファイナンシャルプランナー)やコンサルタントの5人に、本当に必要は保険を選んでもらった。」

とのことで、お馴染みの5人が紹介されたのち、定期保険、収入保障、医療保険、がん保険、就業不能保険、学資保険、介護保険、終身保険と各ジャンルごとに「保険料最安値」を各年齢ごとまとめた表を中心に5人の専門家と思われる方々と本誌担当者による解説が掲載されています。

死亡や入院、老後に対する保険での備え方については、いろいろな考え方があり、人それぞれですので、今回は突っ込みどころがあるおかしな部分があることはおいて置きまして、明らかに事実と異なっていて、読んだ一般の方が勘違いや間違った認識をしてしまうことについて指摘します。

死亡保障②収入保障(P38~39)
「・・・NKSJひまわり生命の『家族のお守り』のように、保険金を一括で受け取りできるものもある。」

「家族のお守り」が保険金を一括で受け取れるのは事実とは相違ないのですが、この文章を読むと「収入保障」において「家族のお守り」など一部しか保険金を一括で受け取れないようにとれます。
※「収入保障」保険とは、被保険者が亡くなった場合、保険金が給料のように毎月受け取るタイプの死亡保障。

しかし、事実としてはほぼ全社において「収入保障」について、一括で保険金を受け取ることができ、こんなことは生命保険の現場にいる人間とすれば当たり前のお話しであります。

また、この「死亡保障②収入保障」について、非喫煙優良体割引がないケースで保険料が割安となるメットライフアリコがスルーされています。

保険料が割高となってしまう東京海上日動あんしん生命の「家計保障定期保険」は掲載しているのに、とてもおかしな話しです。

メットライフアリコの「収入保障」については、告知枠が広く、他社が健康診断書が必要な保障額でも告知だけで手続きが完了するケースがあり、現場では必須アイテムとなっております。

医療保険(P40~41)
さすがに明らかに劣化しているライフネット生命の「じぶんへの保険」を挙げる自称専門家の方はいないようですが、肝心要の大型新人が無視されています。

8月発売のアフラック「ちゃんと応えるEVER」や、9月発売のオリックス生命「新CURE」は網羅しているのに、7月発売の朝日生命「スマートメディカル」はスルーされています。

この「スマートメディカル」は、保険ショップを中心とする代理店専用の単品の医療保険で、「入院すると一時金15万円+日額5千円+先進医療」などの設計が可能で、保険料はアフラックやオリックス生命と同程度ということで、まともな業界人の中では話題となっている商品です。

また、これに先立ち住友生命と三井生命が共同でつくったメディケア生命保険から、大手国内生保としては画期的であった単品の終身医療保険「メディフィットA」を数年前に発売していますが、これについてもスルーです。

がん保険(P42~43)
ここには致命的な事実誤認があります。

「日本でいちばん売れているがん保険はアフラックの『生きるためのがん保険Days』。他社では保障の対象にならない上皮内新生物(粘膜の上層の内側にできるごく初期状態のがん)でも10万円の一時金が出る・・・」

とありますが、「他社では保障の対象にならない上皮内新生物・・・」とはいつの話しなのでしょうか。

事実としては前々回にこのブログで指摘した通り、アフラック以外でも上皮内新生物(がん)を担保する保険会社は多数あり、というか主力であり、ほとんどの保険会社は10万円ではなく100万円(診断給付金100万円の設定で100%、アフラックなら10%)給付になります。

また、アフラックについては前々回指摘している通り、がん再発時の診断給付金の支給は基本的にはなく(特約付加で5年後の再発について給付される)、ほとんどの主力他社は2年経過後の再発については、入院を条件にして再度支給されるところがほとんどです。

さらに、今回メットライフアリコがこの8月に新しいがん保険を発売し、このページでもさらっと内容について触れておりますが、この新しいがん保険「ガードエックス」の最大の特徴である<がんの治療を開始したら一時金を支払う>条件として<1年以上経過後の再発、または1年以上継続している場合>については全く言及しておりません。

つまり、アフラック以外でがん保険をまともにやっている保険会社は、2年経過後の再発や2年継続して入院しているケースで再度診断給付金を支払うようになっていますが、メットライフアリコの「ガードエックス」ではそのスパンが1年になったということで、ここを消費者の皆さんに伝えなければ意味がありません。

それともうひとつですが、

「その『Days』と保障内容が似通っているいるのに『計算を間違えたのではないか』と疑いたくなるぐらい感動的に保険料が安い』のがAIG富士生命の『がんベストゴールド』」

なぜ「がんベストゴールド」の保険料が"感動的"に安いのか。
それは「診断給付金」のみの契約が可能だからであり、アフラックの「Days」のように入院保障が付加されていないからですね。(「Days」では診断給付金のみの契約はできません)

また「保障内容が似通っている・・」とかお書きになっていらっしゃいますが、

1、上皮内がん100% VS 10%も出してやっている

2、2年経過後再発で再給付 VS 基本なしだけど保険料上乗せしたら5年経過後再発したら再給付してやる

3、がんと診断されたら保険料免除 VS そんのあるわけないだろ

もちろん右がアフラックです。
どこが似通っているのでしょうか?

そして未だにアフラックを「がん保険のスタンダード」とわざわざ吹き出しで言っちゃっているのですから、これはシャレになりません。

他にも細かいところで突っ込みどころ満載なのですが、きりがありませんのこのぐらいにしておきますが、最後に根本的なところを指摘しておきます。

前振りで、始めに引用した「・・・そこで本誌は相談有料の有力FP(ファイナンシャルプランナー)やコンサルタントの5人に、本当に必要は保険を選んでもらった。」のあとに「すると挙がってきた候補は、ネットで契約できる保険ばかりだった。」と書いてしまっています。

これもウソになっちゃいました。
この特集でネットだけで契約できるのはごく一部、というかほとんどありません。

タイトルが「ネット生保&おトクな共済」で企画書が通ってしまったので、引っ込みがつかなくなってしまったかのようです。

要するに「企画倒れ」というやつで、そもそも根本的な設定においてタイトル・前振りとコンテンツの整合性がありません。

それでも内容的には、一般の方でも参考になる部分がないことはありませんが、上記に指摘したような事実誤認が数多く見られます。

こんなのは、まともな業界人であれば「バカじゃねぇの」といつも通り酒の肴になるだけですが、一般の方にとっては、「週刊東洋経済」さんは権威ある雑誌なので信じてしまって実害を蒙る可能性が出てきます。

なんで現場を知らない、商品を知ろうとしない自称専門家に任せて、さらに事実関係を確認しないで、テーマがずれてしまった「企画倒れ」を出版してしまうのでしょうか。

こんな状態だと、保険以外の記事も信用できなくなりそうなんですが、そんなことはないと信じて、今後の貴誌のご発展を祈念させていただきます。
                                                  敬具

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